7 樹VS朱葵
今日ある読者の方からメッセージをいただきました!
改めて、読んでくださっている方々がいる幸せを感じました。
この場をかりて、お礼を言いたいと思います。ありがとうございました!!
そして読んでくださっている皆様へ。
まだまだ長く続きますが、ぜひこれからも読んでいただければ嬉しいです。
今後の作品に活かすために、評価、感想もよろしくお願いします。
2人は、ひときわ華やかにネオンを着飾った「トワイライト」に入っていった。
「いらっしゃいませ〜、っと、ユーキさん」
テンションの高いホストたちが、揃ってユーキを出迎える。
「ユーキさん、ご指名は樹さんで?!」
「うん。よろしく」
席に案内されると、朱葵が小さく言った。
「ユーキさんて、樹さんって人の常連?」
ユーキは店に来ることはあまりないのだが、ホストたちは「樹の女」を知っている。だからもちろんユーキが店に来たときは樹を指名するのだと、分かっているのだ。
ユーキはそれを説明するのを面倒に思って、曖昧に返す。
「まぁ、そんなとこ」
樹は今日も忙しいらしい。が、ユーキが来たと聞くと、すぐに2人の席へとやって来てくれた。
「よお、ユーキ」
「樹。ごめんね、忙しいとこ」
樹はユーキの隣にドカッと腰を下ろすなり、タバコに火をつける。
「それで? 俺に何をしてほしいって?」
「あ、そう。えっと、彼が朱葵くん」
ユーキは横にいた朱葵を見て、樹のほうを向いた。
――コイツがユーキを見抜いた“彼”ね・・・・・・
樹はそう思いながら、一瞬のうちに朱葵をじっと見る。
「よろしく。樹だ」
「ホストの仕事ぶりを見せてあげてほしいの。あたしは、ホストの仕事は分からないから」
「ふ〜ん。ドラマだっけ?」
「これが1話分の台本なんですけど」
そう言って、朱葵は樹に台本を手渡す。樹はそれを、パラパラっとめくった。
「撮影はいつから?」
「来週からです」
「あと5日か。そんな短い間でホストを知ろうなんて、馬鹿にするにも程があるな」
樹は、台本を朱葵に、バサッと投げつける。
「ちょっと、樹!!」
「分かってます。でも俺は、少しだけでも夜の世界を知りたいなんて、中途半端に思ってるわけじゃない。この5日間で、必ずホストの世界を掴んでみせる」
朱葵は台本をぎゅっと握り締めた。
――コイツ・・・・・・。
すると樹は何か思いついた様子で、含み笑いをすると、もう一度、朱葵を見た。ユーキは、朱葵の真剣な顔に、ただ目を奪われている。
「おい、朱葵って言ったか」
「はい」
「本気でやる気なんだろうな」
「もちろんです」
樹は朱葵の、その目つきを見て、にやっと、笑った。
「分かった、俺の仕事を見せてやる。そのかわり、俺もおまえの仕事ぶりを見させてもらう」
樹はそう言って、朱葵の腕を引いた。
「ついてこいよ」
樹がどこかへ歩き出すと、朱葵は黙って樹のあとに続いた。
「ちょっと樹、どこに行くの?」
席に残されたユーキが樹に向かって言う。
「ユーキはそこで待ってろ」
振り返ってそう言うと、樹と朱葵は、ユーキを置いてフロアからいなくなった。