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65 チョコ選び

バレンタインも終わり、「たと愛」ではバレンタイン祭りの始まりです!!(笑)


「ユーキさん、これなんかどうですか?」

「う〜ん、そうね・・・・・・」

 午後3時。ユーキは店のキャバ嬢たちと、銀座のデパートに来ていた。バレンタインまで1週間を切り、当日来てくれたお客に渡すためのチョコを用意しておかなければならないのだった。

 では、なぜこんなにユーキは慎重になっているのか、というと。

 甘いものが好きなお客、苦手なお客。固体はダメだけどケーキなどに練り込んであるのなら大丈夫なお客。・・・・・・と、様々なタイプに応じて用意しなければならないからだ。

 もちろんどのお客がどのタイプに属しているかは、これまでの接客で完璧にリサーチ済み。

 さらに、その中でも特に贔屓にして来てくれているお客。気前のいいお客。大勢を連れて来てくれるお客。・・・・・・など、特別なお客のためのチョコも用意する。

 ただし、どのお客にも同じ値段のものを。これがユーキの中での決まりだった。

「フルムーン」では、チョコはそれぞれが用意する。店からそのための必要経費が渡され、足りない分は自分のポケットマネーから。

 ユーキの場合、店から支給されるお金よりも、自分で払うほうが多い。ユーキいわく、「お客様への感謝の気持ちを伝えられるのはバレンタインだけ」だからだそうだ。

「じゃあこれにしようかな。すいません、これを・・・・・・え〜っと、50個」

 ユーキが選んだチョコは10種類、100個以上。6桁を超える金額になった。

「これでバレンタインの準備はオッケーですね」

 宅急便の伝票を書きながら、キャバ嬢は言った。

 さすがに持ちきれないすべてのチョコは、当日「フルムーン」へ届けられるのだ。



「じゃあ後で、お店でね」 

 デパート前でキャバ嬢たちと別れたユーキは、ふぅと、一息ついた。

「さて・・・・・・と」

 ユーキはくるりと引き返し、デパートの中へ戻った。

 地下のバレンタインコーナーは、さっきも来ていたところだ。まだ1週間前だからか、人はそう多くない。有名店が挙って飾る自信作を、ユーキは端から見て回った。

「ハート型なんてあげられないわよ・・・・・・」

 ぶつぶつと呟きながら、ショーケースを次々に覘いていく。お酒の入ったチョコに、フルーツを使ったトリュフ。甘さ控えめの生チョコ。ハート型のケーキ。どれもおいしそうに見えるが、どれがいいのか、分からない。

 ユーキは、そういえば朱葵がどのタイプに属しているかを知らないことに気づく。

「そもそも、チョコレート食べれるかしら」

 甘いものが嫌いなのかもしれない。そんな可能性もある。朱葵ならユーキのあげたものは何だって喜んでくれそうだが、せっかくなのだから、気を使わせるようなことはしたくない。

 すると、後ろから声が飛んできた。

「朱葵さん、甘いものは苦手だけど、クッキーなら食べれるみたいですよ」

「え?」

 ユーキは声に驚いて振り向くと、そこには、さっき別れたはずの有紗が立っていた。

「有紗ちゃん」

「雑誌に載ってました。バレンタインについて聞かれてて、そう答えてましたよ」

 有紗はにっこりと笑いながら、ユーキに近づいた。

「ハート型、いいんじゃないですか? でもケーキより、あっちにクッキーの有名なお店がありましたよ」

 そう言って、有紗はユーキの背中を押す。

「有紗ちゃん、どうしたの」

「ユーキさんが入っていくの、見えたから。もしかして朱葵さんにあげるチョコを買うのかなって思って。当たりですか?」

 ユーキは照れたように笑って、「まぁね」と、返した。

「昨日、ユーキさんと朱葵さんがいなくなったあと、樹さんから聞きました。恋人じゃないってこと。あたし、いろいろ勘違いしてて、ごめんなさい」

 クッキーの有名なお店の前で、2人はショーケースを眺めている。

「あたしも本当のこと言ってなかったし、それはもういいわよ。樹、何て言ってた?」

「恋人じゃないけど大事な存在だって。樹さんは他に愛してる人がいるって言ってました」

 ユーキはくすっと微笑む。

「そっか、そうなんだ」

 結局ユーキと樹の本当の関係は知らないまま、有紗はそれをユーキに聞かなかった。樹だって話そうとしなかったことを、ユーキが話すはずがないと、分かっていたのだ。

「ユーキさんにとって樹さんって、どんな存在なんですか?」

 ユーキは溜め息を吐き出して、少し考えるような仕草をする。

「もちろん、大事よ。一番あたしを分かってる。お互いにそうなのかもしれない。でも、恋とは違うの。お互い別の人に出会ってしまったから。今は、あたしの恋愛カウンセラー」

 最後はふふっと笑いながら、言った。

「でも、ユーキさんが朱葵さんと出会ったのって、最近ですよね。それまで樹さんのこと、好きにならなかったんですか?」

 あんな完璧な男がそばにいたら、すぐに恋してしまう。実際、会ったことだって少ない有紗が、恋に落ちてしまったように。

「あたしはそうだけど、そのとき樹にはもう好きな人がいたの。あたしと出会う、ずっと前から」

 ユーキはそう言うと、昔を思い出すように、懐かしそうな目をした。

「樹のこと、一瞬くらいは好きになったかもしれない。でも、あたしはその人に敵わないって分かってたから、恋にはならなかった。樹が純粋にその人を追い続けるのを、あたしは目の前で見てたから」

「・・・・・・樹さんが追い続けてるんですか?」

 

 ――あの、樹さんが?


 どんな女でも自分のものにできそうな樹が、自分から堪らなく欲しがる女の人がいることに、有紗は驚く。

「昔も今も、樹の片想いよ。・・・・・・と、これは樹に内緒ね。有紗ちゃんに話したのは、こないだのお詫びってことで」

 そして、ユーキはしばらくショーケースを眺めたあと、やっぱり振り返ると、どこかに向けて、指を差した。

「よし、あれに決めた!!」

「えぇ?! ユーキさん、本気ですか?!」



 ユーキの選んだものとは、一体・・・・・・




なんでラストは謎掛けなんでしょう(汗)

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