40 真夜中の3人
朱葵とユーキと、気になる3人目は・・・・・・
「雪かぁ」
2人は空を見上げて、同時に呟いた。
その直後、朱葵はあまりの寒さに着ていたダウンのフードを被り、ユーキは両腕で肩を抱き、俯いた。
フードのファーによって左右の視界を奪われた朱葵と、胸までおりた長い髪で左右の視界を奪われたユーキに、お互いを見つけることなどできなくて。
朱葵はユーキに会いに、まっすぐに大通りを見つめて歩いた。
ユーキは朱葵が来るのを、凍りついた体を抱えて、じっと待った。
そして、すれ違い、離れていく。
「ちょっと、あんた!!」
後ろから聞こえたその声に驚いて振り向くと、さっき自動ドアの前で挨拶を交わした警備員が、叫んでいた。
朱葵は思わず立ち止まると、警備員が近づいてきた。
――え、俺?!
なぜ警備員が自分に向かってくるのか、朱葵は分からなかった。
すると。
警備員は、朱葵に向かってきた・・・・・・と思いきや、急に朱葵の視界から消えていった。
「え?!」
「おい、あんた!!」
今度は右側からまた警備員の声がして、そっちを向くと、噴水の前に誰かがいて、警備員がその人に声をかけていた。視界から消えたと思ったのは、まっすぐ自分に向かってきていた警備員が、急に曲がったからだった。
――なんだ、俺じゃなかったのか。
やれやれ、と思って朱葵が帰ろうとしたとき、警備員が言った。
「ほらあんた!! 大丈夫か?! 出てきたよ、彼」
その言葉に、朱葵は耳を疑った。深夜のテレビ局前、そこには、自分と警備員、そして警備員の背に隠れている誰かしか、いなかったのだ。
「え? 俺?」
朱葵はゆっくりと噴水に近づいていく。まだ警備員の後ろにいる人の姿は見えない。
「体ガチガチじゃないか。ほら、動けるかい?」
「あの、大丈夫ですか?」
朱葵が2人に声をかけると、警備員が振り向き、もうひとりも朱葵を見上げた。
「え?!」
朱葵は驚いた。
ようやく見えたのは、今日、勝負に出ようと決めてから、何度も心の中で愛しく想っていた、ユーキだったのだ。
警備員でした・・・・・・笑