21 2人の関係
今年もよろしくお願いします!
すぐに朱葵の出番になって、ユーキと愛は端のほうに座って見ていた。
「あれっ? 六本木の・・・・・・確か、ユーキさん」
と言って声をかけてきたのは、あのとき一緒に「フルムーン」に来ていた心だった。
「心さん。こんにちは」
一度見た客を忘れないユーキは、心に笑顔で挨拶する。
「どうしてここに? プロデューサーなら、今日は休みだよ」
「いいえ、朱葵さんが撮影を見に来ないかって誘ってくれて」
ユーキはあえて「朱葵くん」と呼ぶのを避けた。親しい関係なのかと疑われるのが嫌だったのだ。
「朱葵が?」
心は意外そうに言う。
「へぇ、あいつやっぱりユーキさんに興味あったんだ」
「え?」
「こないだキャバクラに行ったとき、帰りに言ってたんだよ。『ユーキさんって、すごいね』って。その言葉の意味を、あいつは教えてくれなかったんだけどさ」
心はそう言って
「ところで、そのこはユーキさんの子供?」
と、続けた。
「ううん。親戚の子よ」
ユーキがそう言うと、心は愛に笑顔を向けたあと、撮影に戻っていった。
「あのおにいちゃんもかっこいいけど、みきちゃんにはやっぱりおにいちゃんが合ってるね」
「そうね・・・・・・」
このとき、愛の声は、ユーキに届いていなかった。
* * *
「ユーキさん、愛ちゃん。お待たせしました!! おなかすいてるでしょ。ご飯食べに行こう? 局内の食堂で悪いんだけど」
朱葵が2人の前に駆け寄ってきて、ユーキははっとなった。
「あ、そうね」
「アイお腹すいたよ〜」
時刻はすでに午後2時を回っていた。
「でも、関係者じゃないのに食堂なんて、行っていいの?」
「大丈夫だよ。それに、ユーキさんはちゃんとした関係者だし」
「それは・・・・・・」
「うん?」
「・・・・・・ううん。なんでもない」
そして3人は食堂へと向かった。
――でも、関係者じゃないのに食堂なんて、行っていいの?
――大丈夫だよ。それに、ユーキさんはちゃんとした関係者だし。
――それは・・・・・・“朱葵くんの関係者”ってこと?
ユーキは、そう聞こうとしていた。
でも、聞けなかった。
そのあとの朱葵の答えを、分かっていたから。
――それは、朱葵くんの関係者ってこと?
――そうだよ。
そしてさらにそのあとに続く、自分の言葉を、分かっていたから。
――私と朱葵くんって、どういう関係?
けれどそのあとの朱葵の答えだけは、どうしても分からなかったから。
そしてそのあとの朱葵の答えを聞くのが、どうしようもなく、怖かったから。
ユーキは、聞くことができなかった。
食堂の奥の席に座ると、お腹がすいていたという愛は目の前のオムライスに夢中になり、朱葵はこのあとの撮影の台本に目を通していた。
ユーキはコーヒーだけを頼んで、湯気に隠れた朱葵の顔を、じっと見ていた。
いや、本当はこのとき、湯気に隠したかったのは、自分の顔だったのかもしれない。
じっと見つめていたのを、朱葵に気づかれてしまわないように。