150 先行き不安
前回に続き、だいぶ短めです。それによって完結も少し伸びるかもしれません。
車で行くことにしたのは、電車よりも都合が良いと思ったからだった。終電も始発も気にしなくていい。その選択は、どこかできっと役に立つだろう。
と、思っていたのに。
「交通事故?!」
夜中、ふと思い立って、午前3時に車を走らせた。だけど高速に入って1時間が過ぎ、トラックの横転事故に遭遇してしまった。一斉に通行止めになり、目的地まであと少しというところで、車はまったく動かなくなったのだ。
「まじかよ。もうすぐなのに」
ナビに映る時計は、もう午前4時半を差している。それでも一向に、動く気配は感じられない。
「間に合わないかなぁ、夜明け」
朱葵はハンドルを握ったまま、そこに頭を伏して、がっくりと肩を落とす。
せっかくだからユーキと見たあの夜明けの瞬間を見ておこうと思ったのに、それができなかった。夏も近いこの時期は、夜が明けるのも早いだろう。
先行きを不安に感じながら、朱葵は、そこでじっと待つしかなかった。
そして夜が、光に消されていく。
同じ頃、ユーキがそこに立っていたことを、知らずに。
* * *
昼になって、ようやく朱葵は目的地に着いた。あの海を通り過ぎ、海沿いの国道をしばらく走ったところにある、小さな町。樹のメモには、そこの住所が記されていた。
「ユーキさん、ここにいるの?」
“ここ”は、今までのユーキとはかけ離れたところ。華やかなネオンの光も、賑やかな声も街並みもない。ユーキがここにいるのを、朱葵は、想像ができない。
でも、探すしかない。ユーキに会うために、手掛かりはここしかないのだから。
朱葵は、さらに車を進めていった。
「だいたいの見当はついてる」と樹の言ったところ。
この小さな町の、海と山に囲まれた、丘の上の病院に。