表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/172

132 別れは短く

考えてみたら、もうすぐ完結なんですね。あと10話もあれば、考えていたものすべてが書き切れるんじゃないかと思います。


「それ、どういうこと?」

「分からない?」

「分かるよ。でも・・・・・・」

 ユーキの突然の別れに、朱葵は、対応できなかった。ユーキの言っている言葉の意味は分かる。だけど、なぜユーキがそれを言っているのかが、分からない。

「何で急にそんなこと言うの?」

 と、朱葵は言った。

 ユーキは再びベッドに腰を下ろすと、ふぅっと、溜め息を吐く。

「急なことじゃない。あたしはもう前から、そう考えてた」

「何で?」

 ユーキは駄々をこねる小さな子供を見るように、呆れた顔をして、もうひとつ、息を吐いた。

「ねえ、本当に分からない? あたしが何でこんなことを言っているか、朱葵くんは、本当に何も分かってないの?」

 駄目だ、と思っていても、言葉が勝手に飛び出してしまう。だって朱葵は、何も分かっていない。離れていた間のユーキの不安を、分かろうともしてくれない。

「え・・・・・・」

 朱葵は、思わず考え込む。自分は何をしてしまったのか、記憶を手繰り寄せ、ひとつひとつ、解いていく。

「あ・・・・・・!!もしかして、真咲さんとのスキャンダルのこと?」

 朱葵は、あるひとつの出来事に当たった。

 それしかない、とさえ、思い込んでいる。

「そうね。そんなこともあった」

「も?」

 まだあるのか、とでも言いたいような、妙に気の抜けた返事をする朱葵に、ユーキは諦めを感じた。これ以上話していても、朱葵はユーキの胸の苦しさを分かってはくれないし、どんな想いを抱えていて、また、この決断をするのがどんな辛いことなのか、きっと、理解できないだろう。

 そう。別れに、時間は費やすべきではない。まだ、心のシーソーが傾いているうちに、話を終わらせるべきだ。

 別れは短く、だけど、言うべきことは、言わなければならない。


 それが、どれだけ残酷なものであったとしても。

 

 ユーキは、感情的になりかけた気持ちを制すと、言った。

「ううん・・・・・・。もういいの」

「よくないよ。ねぇユーキさん、言ってくれなきゃ、分からない」

「そうね。でも、言わない」

「何で?」

 だって、朱葵の幸せのために別れる、なんて、きっと朱葵は、許してくれない。

「・・・・・・朱葵くんは、あたしのこと、好き?」

 と、ユーキは尋ねる。

「好きだよ。ユーキさんが、好きだ」


 ――じゃあ、あたしと仕事、どっちが大切?


 という言葉は心の中で問いて、自分で答えを出した。


 ――朱葵くんは、仕事を大切にするべき。


「朱葵くんがそうでも、あたしは違う。あたしは、気持ちが変わってしまったの。離れてる間、あたしは、他の人の支えで生きてきた。朱葵くんじゃない、他の人の傍で」

 

 ずっと、言おうと決めていた。

 だけどそれを言ったら、すべてが終わってしまう。

 だから、なかなか言葉にできなかったのだけど。


「朱葵くん。あたし、樹と結婚することにしたの」

 と、ユーキは、言った。





展開は思いもよらぬ方向へ・・・・・・?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ