117 稜の居場所
あとがきには【この先の「たと愛」】を書きました。
伏線張りつつ予告しています。多少のネタバレはありますが、ここから物語がどう進んでいくのかをまとめておきたかったので、載せました。
ユーキが明かした、稜の噂。
それは「フルムーン」の、入店1週間のキャバ嬢が、口にしたひとことだった。
その日は金曜日で、いつものように樹がユーキに会いに来たときだった。
仕事終わりの控え室。その子は、ユーキにこう言ったのだ。
「樹さんって、さすが歌舞伎町ナンバーワンの余裕がありますよね。今の稜なんて、もう終わってますもん。落ちるところまで落ちちゃった、って感じ」
キャハハ、と嘲笑うような声を上げて笑う彼女の横で、ユーキは、耳を疑った。
「りょう」なんて、この世界にはゴロゴロいる。そのせいで、間違った情報を掴まされたことだってあった。
だけど彼女が言ったのは、確かに、「トワイライト」の稜だった。
「その子、稜と繋がりがあるみたいだったから、近いうちに居場所が突き止められるかもしれないって思ったわ。やっとお姉ちゃんの心を殺したあいつに復讐できる。次会うときは『すべてが終わったのよ』ってお姉ちゃんに言ってやるんだって、決めたの。何もできずに3か月も過ぎてしまったけれど、そう言えるまでは、会いに行けない。約束したもの、お姉ちゃんに」
樹はタバコを咥えたまま、ジッポを地に落としていた。いつ落としたのか、ユーキも樹も、気づかなかった。
「それで、稜の居場所は分かったのか」
ユーキは曖昧に笑みを浮かべると、樹の口元で冷たくなっていたタバコを取り上げ、樹がジッポを拾い上げた左手を、強引に自分のほうへ寄せた。
「1度きりのつもりだったんだけど」
そう言って、樹の手の中に収まっているジッポをカシャン、と開け、タバコに火をつけた。
1度目は「フルムーン」で働き始めたころ、樹が吸っていたのを、興味本位で。
2度目のタバコもやはり前と同じ。苦しくて、喉が焼けそうになる。だけどそれを、ユーキは肺まで押し込んで、ふぅっと吐き出した。
「あたしね、お店を辞めようと思ってるの」
「え?」
「あたしがここにいる理由は、もう、なくなったから」
ユーキが「フルムーン」で働いていた理由――。それは、稜を探し出すためだ。
そして、ユーキが店を辞める理由。それは、稜を探す必要が、なくなったから――。
ユーキの言葉が示していたことは、樹にも、伝わっていた。
「稜のことも含めて、ユーキ、これからどうするつもりだ」
「それなんだけど。樹にお願いがあるの。樹に頼るのも、これで最後」
とユーキは言って、もう一度、タバコの煙を吸い込んだ。
「ダメ。やっぱり苦いわ」
そのうちタバコは灰になって、ユーキの指の先から、ぽろぽろと零れ落ちていった。
【この先の「たと愛」】
とりあえず過去を振り返るのはもう終わりです。
「実は結姫は生きていた」という隠していた幕もあがりました。
謎はすべて解けた(笑)
これから2人には「別れ」が待っています。
ユーキは稜にも会いに行きます。稜はいったいどこにいるのか、ユーキはどう復讐するのか、など、まだまだ書かなければいけないことがいっぱいありますね・・・
ユーキが樹にした「最後のお願い」は、読者の皆様の期待を裏切るようなものになるかもしれません。
確実にラストに向かって物語は進んでいます。
今後とも、「たと愛」をよろしくお願いします!!
・・・と、警備員も言ってます!!(「40 真夜中の3人」参照)