109 告白
書いておきたい部分が長いので、本日は2回更新です。
午前0時前に続きます。お楽しみに。
「つまり、そちらのタレントさんが朱葵と、スキャンダルになりたかったと、」
「そういうことになりますね」
東堂と紅林は、東堂の部屋で話し合っていた。初めはラウンジに向かったが、どうにもスタッフの目がこちらに集中しているような気がして、場所を変えたのだ。
「ユリが青山くんのファンだというのは前から知っていましたが、まさかここまでするとは、思っていませんでした。本当に、ご迷惑をおかけして」
と、紅林は向かい合った椅子から立ち上がり、頭を下げた。
「いえ、済んでしまったことはもう。本人も特に気にしていないようですから。ただ、あれをどうにかしないといけませんね」
と言って東堂も立ち上がり、軽く握った拳の裏を、窓にコツン、と、当てた。
「否定するか、放っておくか・・・・・・」
紅林は呟き、東堂がそれに頷いた。
「映画のプロモーションのためにでっち上げたと思わせるべきか、プロデューサーも交えて話し合ったほうがいいですね」
東堂と紅林の話し合いはスムーズに進み、2人は部屋を出た。
窓の外、ずっと下のほうの玄関には、まだ6時だというのに、報道陣がごった返していた。
* * *
「はぁ〜。やっぱり来てる」
朱葵はカーテンを手繰り、窓の外を覗いた。さっき東堂も言っていた通り、報道陣が20人ほど、詰め掛けている様子が見えた。
テレビをつけると、そこでも自分の話題が取り上げられていて、それは決して喜ばしいものではなかった。今までなら、たまたま付けたテレビが、自分のドラマ出演や人気ランキングなどで注目されているものを見ると、すごく嬉しかった。だけど今は、苛立ちだけが心の中に靄を作る。黒っぽくて汚い色をした気持ちが、溢れてくる。
ユリへの苛立ちではなくて、報道への苛立ちでもない。もちろん、撮影が中止になったことでもない。
すべては自分に――。
自分の、何に対してなのかは分からない。だけど、自分に、苛立ちを募らせていた。
すると、部屋のチャイムが鳴った。
朱葵は、もちろん東堂だと思った。だけど、そこにいたのは、ユリだった。
「真咲さん」
「・・・・・・今、ちょっといいですか?」
ユリはいつもより控えめに声を漏らして、だけどいつものように化粧も露出もバッチリな格好で、訪ねた。
朱葵は人がいないのを確認すると、ユリを部屋に入れる。
「何か用?」
あの写真はユリが提供した、というのは分かっているから、朱葵は、きつい口調で言った。優しくしたら、また、いつものユリに戻ってしまうかもしれない。
「あの、ごめんなさい。勝手にあんなことして、朱葵さんを困らせてしまって。あたし、浮かれてたんです。朱葵さんの傍にいられて」
「いいよ、もう。あとはマネージャーに任せておけば、これ以上大事にはならないだろうし」
ユリも反省している。朱葵は、安堵の溜め息を小さく吐いた。
「でもあたし、朱葵さんのことが好きなんです。だから朱葵さんの気持ちが動いてくれたらって、思って・・・・・・」
ユリはそう言うと、気を抜いていた朱葵の胸元に抱きついて、
「朱葵さん、あたしと付き合ってください」
と、言った。