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106 密着取材

 それから1週間後、朱葵の密着取材が始まったのは、午前の分を撮り終えて昼休憩に入っているときだった。

「今まで明かされなかった素顔の青山くんの姿を撮りたいんで、カメラが回っていることはできるだけ意識しないで、普段通りにしてもらえれば。他の共演者の方や青山くんにもインタビューさせてもらいます」

「はい。よろしくお願いします」

 実際のところ、撮影中はまったく気にならなかった。演技に集中していたし、カメラは何台も回っていたから。だけど撮影の空き時間や撮影終わり、カメラは真横にきて朱葵を写した。それが何ともやりにくかったが、夕食が終える頃にはカメラの存在も気にならなくなっていた。

 

 ――芸能人、だからかな。


 きっと、自分はこの世界にもう慣れてしまった。そんな自分を誇りに思うし、そんな自分のままでいたいと思う。これから先も、この世界で。

 だけど、そんな想いとはまた別に、ユーキのためなら何だってできる自分もいる。

 もし――。

 もし、ユーキのために仕事を辞めなければいけない選択を迫らせたとき、自分は、どちらを選ぶだろうか。

 一番大切なものは、ユーキ。それはもうずっと前から、分かっていた。演じることよりも、ユーキへの愛のほうが強いのだと。

 だけどこのとき、朱葵は、なんとなく感じていた。

 

 この映画で、役者としての新たな成長ができそうだという期待。



 そして。



 映画を撮り終わったとき、自分の中の優先順位が再び変わっているかもしれない、という、予感。



 *  *  *



 次の日はインタビューを撮り終えたあと、朱葵が街に出るオフショットを撮影する予定だった。

 午後2時。次の撮影は夜中からなので、朱葵は、清水寺へと続く登り道を歩こうと思っていた。京都へ来てから、オフはできるだけ街に出るようにしているのだ。

「これから時間が空くので、観光に行きたいと思います」

 朱葵はカメラの存在にもすっかり慣れていた。

 いつもと違うサングラスをかけて、朱葵はホテルを出る。

 そのときだった。

「あっ朱葵さん!!」

 朱葵はピクッと肩を上げ、反応する。分かっていながら、ゆっくり振り向くと、やっぱり、そこにいたのはユリだった。

「あれっ」

 カメラマンは不思議そうに声を上げる。

 ユリはカメラが回っているのに気づいているのだろうか。こっちに向かって走ってくる。

「はあっ。朱葵さん、どこ行くんですか? ユリも撮影終わったんです。一緒に行きたいな〜」

「いや、でも…」

 朱葵が困った表情を明らかに見せているのにも、ユリは気づかない。

 すると、カメラマンがユリに言った。

「2人は初共演だけど、仲がいいんですか?」

 朱葵が否定しようとする前に、ユリは答えた。

「えっ、そう見えますか? やだ〜どうしよう。ユリはただ朱葵さんのファンなんですよ〜」

 もはや朱葵は何も言えなくなり、結局ユリも一緒に行くことになってしまった。

 


 そしてその様子が、朱葵とユリの熱愛発覚へと発展して、大きく取り上げられるのだった。

 もちろん、全国放送で。




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