104 いつかの夢
体調不良により、少し短めになってしまいました。
明日は通常通りに描きます。
すみませんでした。
「おはよう。ユーキさん」
撮影初日の朝、朱葵はユーキに電話を掛けた。
「おはよう。早いのね」
電話の向こうで、ユーキはくすくすと笑っている。朱葵の第一声は寝起きの様子が窺えるほど、擦れた声になっていたのだ。
「京都1日目はどうだった?」
と、ユーキが尋ねる。
「午後に少しだけ外を歩いたんだ。街並みがすごく綺麗だよ」
「へぇ。いいわね、行ってみたい」
「京都に来たことは?」
「中学の修学旅行は京都だったわ」
だけどそれ以来一度も、と、ユーキは残念そうに言った。
今だったら、ちょうど桜が見事に咲き誇っているのだろうか。ユーキは、京都の街に朱葵の姿を思い浮かべる。そして、その隣に、自分をそっと並べてみる。
――笑っている。
決して公にはできない関係。実際に京都の街を歩くなら、2人は距離をとって歩くか、ばれないように周囲に気を使いながら歩くしかないのに。
ユーキの頭の中で、2人は手を繋いで、寄り添って、笑い合っている。
同じ道を。同じ速度で。
「ユーキさん、どうかした?」
「あ、ううん。ちょっと、想像してたの」
「想像? 何の?」
「朱葵くんと、京都の街を歩く姿を」
すると朱葵は急に黙り込んで、ユーキが声を掛けようとした瞬間、言った。
「ユーキさん、京都に来てよ。2人で、京都の街を歩こう」
「え?」
ユーキは驚く。まさに今自分は、そう思っていた。現実にできないことが、もし、できたら……。それはどんなに幸せなことだろう、と。
「俺がユーキさんに京都を案内するよ。撮影の合間にいっぱい街を回って、あの夜明けくらい綺麗な景色を見つけておくから」
ユーキは、また、想像してみる。
「楽しそう」
「うん。楽しいよ、絶対」
そんな風に交わしたいつかの夢と、傍に感じられる幸せ。
そんな“今”が、これからも続いていくのだと、思っていた。




