101 すれ違い
「うそ・・・・・・?!」
午後5時15分。もうすぐ東京駅に着くというところで、ユーキの乗っていた山手線は、突然急停止した。気を抜いていた乗客たちは進行方向へと前のめりに崩れ、車内は一時、叫び声が充満した。
――なに?!
シュウゥゥゥという煙音が外から聞こえる。何が起こったのかを把握できない状態で、誰もが皆、騒然としていた。
少し間が空いて、この電車がどうやら人身事故を起こしたようだというアナウンスが流れた。確認作業を行っていて、しばらく電車は停止する、と。
ユーキが初めて叫ぶようにして言ったのは、このときだ。腕時計を見ると、出発まであと40分弱。電車から降りて朱葵の姿を見つけるのがすぐとは限らない。電車も、いつになったら動くのか分からない。
こんなのってない、と、ユーキは扉にもたれ掛かった。はっと思い立って携帯電話を取り出し、朱葵に電話を掛ける。車内電話は禁止だが、周囲もそんなことを言っている場合ではないようで、車内は一斉に電波が走った。
トゥルルルル トゥルルルル トゥルルルル・・・・・・
朱葵は出ない。
いくら鳴らしても、朱葵は出なかった。
* * *
東京駅に向かっているとき、朱葵は、ある店の前で車を停めた。
「ちょっと待ってて」
そう言って東堂の制止も聞かずに、朱葵は車を飛び出していった。駐車禁止なので東堂は自分も出て行くわけには行かず、その場で朱葵を待つしかなかった。
「ごめん、お待たせ」
と、朱葵が帰ってきたのは、それから数十分後。ひとつ、小さな袋を持って、帰ってきた。
東京駅に着いたのが、午後5時30分。
ユーキが電話を鳴らし続けたとき、朱葵は携帯を車に置いて、店へと走っていた。東堂は電話の対応に追われていて、朱葵の携帯がブンブンと震えているのに、気づかなかった。
「朱葵。もう行かないと間に合わない」
改札前での東堂と朱葵のやり取りは、そろそろ終わりにしなければならなくなった。あと5分。ここからギリギリ出発に間に合う時間なのだ。
朱葵はじっと構内を見つめていたが、やがてクルリと向き返し、「行こうか」と、切符を通した。
「ホームどっちだっけ」
「待って!!」
――え?!
名前を呼ばれたわけではないのに、朱葵は思わず振り返る。
――だって、この声は・・・・・・。
改札を挟んで向こうに、探し続けたユーキの姿を見た。




