あらすじ6
■「新たな出発」 第88話〜第92話
午前4時。2人は海に向かい、夜明けの瞬間を待っていた。
じっと朝を待ち、綺麗な空を見て、ユーキは新しい出発を爽やかな気持ちで迎える。
そして東堂から預かった映画の台本を渡し、東堂に言われた条件を朱葵にも話す。
「東京で、朱葵くんを待ってる」
ユーキの目を見て、朱葵は自分も覚悟を決めなければいけないのだと悟ったのだった。
車は順調に進み、早くも朱葵のマンション前に着いてしまう。
まだ別れたくないと言う朱葵。
「あたしは朱葵くんの傍にいるから。朱葵くんが迎えに来てくれるのを、あたしは、“ここ”で待ってる」
ユーキの言葉に、朱葵は自分なしではユーキは動けないのだと感じ、笑顔を取り戻す。
3月下旬の忙しい最中、東堂がお客として「フルムーン」にやって来る。
「正直、驚きました。好きな相手と別れるのは辛いものだと思っていましたから」
東堂は余裕で別れを告げたユーキに、疑問を投げかけた。
「朱葵くんと、約束したんです。あたしは“ここ”で待ってるって。朱葵くんは必ず来るって言ってくれました。それならあたしは、その言葉を信じて待つしかないじゃないですか」
東堂は、ユーキに朱葵が東京を出発する日時を伝える。それは、ユーキと朱葵の想いの強さを知った東堂からの、不器用な許しだった。
■「不安」 第93話〜第95話
ユーキと東堂の前に、樹が現れる。
東堂は、2人のあまりに親密な空気に、思わず恋人ではないかと錯覚してしまうほどだった。
そして、朱葵ならこの2人の「愛」を超えられるんだろうかと、心の中で朱葵に問う。
まもなくそこにはユーキに会いに来た心が現れる。
樹が帰ったあと、心は「今のがユーキの恋人だ」と言う。
心もいる前で否定できなかったユーキ。東堂はユーキに不信感を募らせる。
「僕には、あなたのことがよく分かりません」
その言葉は、ユーキの心に鋭く突き刺さった。
明け方、朱葵の携帯の留守番電話には、ユーキから「見送りに行けない」と、残されていた。
朱葵はすぐユーキに電話をするが、いくら掛けてもユーキは電話に出ない。
ユーキは、携帯をソファに置き忘れたまま、樹のマンションに来ていた。
落ち込むユーキを、そっと優しく慰める樹。
「あたし、樹を好きになっていれば楽だったのに、どうしてそれができなかったんだろう」
ユーキは思わず、そう口にしてしまうのだった。
■「ユーキと樹」 第96話〜第97話
(過去の回想。プロローグの続き)
家を飛び出し、東京の街にやって来た光姫は、デパートで服や化粧品などを買い揃え、新宿歌舞伎町へと向かう。
「トワイライト」の前で立ち止まり、光姫は店の中へと入っていく。
「ナンバーワンの人に会いたいんだけど」
そう言ってやって来たのが、樹だった。
樹は光姫を見た瞬間、「結姫」という名を口にする。光姫のその姿は、キャバクラ嬢をしていた光姫の姉・結姫にそっくりだったのだ。
「あんたはお姉ちゃんを殺したんだ」
光姫の鋭い視線は樹へと注がれる。樹は光姫の言っていることを理解すると、
「結姫を殺したのは、俺の前にナンバーワンだった稜だ」
そう言って、稜はどこかへ逃げてしまったのだと告げる。
「あんたはお姉ちゃんの何なの?」
「結姫は、俺が愛した女性だった」
そして樹は、光姫にキャバクラで働くことを提案する。
樹は光姫に「ユーキ」と名付け、「フルムーン」を紹介する。
「俺が、お前をちゃんと見ててやるから。だから、頑張れよ。ユーキ」
そうしてユーキは生まれたのだった。