4.話の歌〈2〉
ここではない遠くの話
そこには一本の道
長い長い一本道
わかれ道も
十字路も
村も
町も
関所も
なにもない一本の道
通る人が見当たらないのに
草に埋もれることのない
不思議な不思議な一本道
広く見渡せば
地平線まで続く道
いつから一本の道なのか
どこまで一本の道なのか
行けども行けどもわからない
そんな道の話
一人で行けば寂しくて
みんなで行けどもわびしくて
他の人に会うことがないから
動物も虫もいないから
風景がまったく変わらないから
行けば行くほど寂しくて
行けば行くほど悲しくて
行けば行くほど帰りたくなる
どんなに先を知りたくても
誰も彼も途中で帰る
ただただまっすぐに歩くだけの道だから
わかれ道を選択する楽しみも
十字路を曲がる冒険も
村をくつろぐひとときも
町を味わう安心も
関所を越える緊張も
なに一つとしてないから
寂しさに耐えられなくて帰ってくる
悲しさに耐えられなくて帰ってくる
恐ろしさに耐えられなくて帰ってくる
みんな帰ってくる
孤独になって帰ってくる
強くなって帰ってくる
自分と向き合って帰ってくる
そんな一本の道
みんな挑戦して挫折する道
「どこか自分に似ている」と
歩いた者は口をそろえる
「目的があって歩いたわけじゃないから
行くことだけで他はいらなかった
だからどこか綺麗で美しかった
でもそれは何もないという
つまらなさばかりで
進んでいくうちに
つらくなって
どうしても
進めなくなった
そして戻ることにした
戻るうちに気付いたんだ
自分はこの道に似ていると
自分にも何もないままなのだと
つまらないと思うのはそのせいだと
何かを作らなければつまらないままなのだ」
なにもない一本道
綺麗に広がるだけの道
終わりの見えない平坦な一本道
そんな道が ここではない
遠くの場所にあるという
これはその道の話
いいかい
行こうとしてはいけないよ
ここからではあまりに遠くて
たどりつくのも大変で
戻ってくるしかなくなるから
『一本道』誕生年182年ごろの作 “珠玉”ツェリアーディ・アウィン作
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