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3.話の歌〈1〉

そこはいつも雨が降っていました

その周りが旱魃かんばつで干上がっても

その周りが水を求め戦場になっても

そこはいつも雨が降っていました


雨の中心には塔がありました

大きな樹と同じくらいの高さでした

誰も住んでいないようでした

誰にも使われていないようでした

それでも雨の中心には塔がありました


塔の周りに町ができました

雨の恩恵を受けて

水が涸れることのない町でした

人がたくさんやってきました


ある時 ある若者が塔へ入っていきました

塔の中がどうなっているのか

誰一人として知らなかったからです

だから若者が探検に入っていきました


町の人々は若者が塔に入っていったことを

みんな みんな 知っていました

塔の中がどうなっているのか

みんな みんな 知りたかったからです


若者が探検に入って一カ月が経ちました

若者が持っていった食料はとうにつきているでしょう

二三日にさんにち分しか持っていってないのですから

町の人々は若者が死んでしまったのだと思いました


若者が探検に入って四年が経ちました

若者のことを町の人々は忘れていました

若者は元気よく帰ってきて言いました

「あの塔はすばらしい」と


町の人々は若者が元気に帰ってきたことに驚きました

若者に塔の中がどうなっているのかの話をせがみました

しかし若者は自分が四年も塔の中にいたことを知って

驚いたまま塔の中の話を誰にもしませんでした


そのうち町の人々は若者に腹を立てて

「あの塔がすばらしいとはどういうことなのか言わなければ

 お前を絞首台こうしゅだい送りにしてやる」と脅しました

若者は怯えて「楽園があったんだ」といいました


人々は自分も行ってみたいと思うようになりました

しかし不思議なことに誰も塔に近づけないのです

若者はだんだん衰え死んでしまいました

そして塔が倒れました


塔が倒れると雨もやんでしまいました

倒れた塔からは水がどんどんあふれました

どんどんあふれて止まる様子がありません

町の人々は慌てて逃げていきました


雨の中心にあった塔が雨を降らしていたのだと

人々は理解しました

でもその水はどこから来ていたのでしょう

まだ水はあふれて町がほとんど水の底に沈みました


まだまだ塔から水はでているのでしょう

川が池になり沼ができ湖になってしまっても

湖の端からはまた川ができて

流れができるほどに水があったのです


人々は怖くなりました

どうしてこれほど多くの水があったのだろうと

雨だけで済んでいたことが不気味になりました

今があるのは若者の探検を止めなかったことへの

災いだというのでしょうか


人々は出来上がった湖から

次々と離れていきました

できるだけ遠くへと離れていきました

忘れてしまいたくて離れていきました


雨を降らせていた塔は倒れ

多くの水があふれて湖になりました

そしてその湖は今もどこから水がきているのか

わからないまま なみなみと涸れることなくあります


そしてその湖は今も不思議な出来事をおこしています

雨が降ると湖全体から誰かが唄うような声が聞こえます

晴れて沈んだ町が見えるほど水が澄みきっていると

なぜか湖の一部にだけ雨が降るのです


この湖の名前ですか?

それはLake Rainとか

Lake Towerとかいいますが

雨の塔といえばわかるでしょう

                    『雨の塔についての伝承』創作時期不明 作者不明


読んでいただきありがとうございます。

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