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guu

掲載日:2026/02/07


【固定】

始めまして、三軒長屋サンゲンナガヤ 与太郎ヨタロウです。

ゆっくりと物語の中の世界を、楽しんで頂けると幸いです。


 『唐揚げ』

そいつはどうしようもなく、人を惹きつける響き。

名前を聞いただけでもよだれが出る。

それなのに、今日の昼。会社の同僚が、俺の隣のデスクで、むしゃぶりつくように食べていやがった。

こちとら、忙しさにかまけてコンビニの簡素なサンドイッチだってのに……あれはもはやハラスメントに等しい。

横から漏れる匂いだけで、想像が止まらない。

衣の中で大人しく体操座りしていた鶏の旨味が、ひとたび噛んだ瞬間、弾けるように溢れ出す。

固い衣、柔い衣……どちらかを選べと言われたら困る。

レモン、マヨネーズ、葱ダレ、塩コショウ、辣油……皆、可愛い。

こんな時は——


 三岳みたけ 和幸かずゆき

いろいろあって、周りからは《ダイ》と呼ばれている。

なんてことはない。俺は身体がデカく、おまけに声もデカい。

だから、《ダイ》。

会社の仲間たちからは「全部がうるさい」と言われる。

大学時代からのサークル仲間も言っている。

そんな事は知っているさ。

ほら、今もまさに、唐揚げのことを考えただけで、腹の虫が鳴りやがる。

guu……と。


 行きつけの店がある。

そうは言っても、週に一度くらい。

浅草から隅田川を越えて、スカイツリーじゃない方……人気ひとけの無い路地裏。

決して繁華街ではなく、歓楽街からも外れている。

おおよそ賃貸ではない個人商店がポツポツとあるくらいで、〝昔ながら〟という言葉が存在しなければ成り立たない街並み。

寂れた外装に似つかわしくないゲバゲバしい看板が目印だ。


 『嫌々』

これで、「ヤンヤン」と読む。

いや、読ませる。

普通の神経なら、自分の一世一代の城に、こんな名前を付けるはずがない。

最初は俺もそう思ったよ。

「〝いやいや〟入れ」ってか……と。

でも、『嫌々』って、『蝶々』みたいじゃないか?

それに、「ヤンヤン」って語感も可愛くないか?

……そんな感じで、今やこの店は俺のお気に入りのひとつだ。


 古めかしい古民家の一軒家。

最近流行りのリノベーションやカフェとは違う、正真正銘、由緒正しき古民家。

その証拠に、ほら、入り口の引き戸が開きづらい。

「あ、どうも〜 いらっしゃいませえ〜」

店に入った俺を、フロアレディが出迎える。

勿論、お世辞だ。

それでも、この人はいつ見ても良い。

世界の中心になど立つ気はこれっぽっちもないって覚悟が伺える。

今年三十一歳になる俺より、ひと回り上のお姉さん。

重々分かっているとは思うが、一応人差し指をピンと伸ばして、独り客であることを伝える。

「一名様でぇ〜す カウンター行きまぁ〜す」

何もこの店でそんなに声を張らずとも……。


店の中はこじんまりとしていて、カウンターが六席に、小上がりの座敷テーブルが二つ。

石油ストーブの上で、やかんが湯気を出している。

その様はまさに『昭和の加湿器』。

視覚からして温かい。

カウンターの斜め上にはテレビが置かれ、今は、ご当地密着バラエティー番組が流されている。

天吊り? 壁掛け? 違う。

食器棚の上に、ドンと腰を据えている。

広めの奥座敷もあるが、繁忙期以外に使われているのは滅多に見ない。

ここの店主なら、断っているまでもあり得る。


 「どうもっす」

カウンターの奥の店主に挨拶する。

店主は控えめに、スッと頭を下げる。

俺が初めてこの店に来たのは五年ほど前——

その頃はまだ、この寡黙な男は助手であった。

当時小さな花板を仕切っていたのは、ひどく腰の曲がったご老体。

しかし、今カウンターの中に立つ青年と比べれば、何倍も威勢が良かった。

生まれも育ちも花のお江戸。

ちゃきちゃきの、べぇ~らんめぇ。

毎朝自転車で築地に通い、豊洲の悪口で腹を満たす。

その息子が、現店主。

あの人間のどこをどう切ったら、この男が出来上がるのか想像がつかない。


 「今日の唐揚げは……」

この店のメニューは日替わりだが、必ずと言っていいほど、唐揚げは名を連ねた。

俺は、和紙に手書きで書かれたお品書きから、『本日の揚げもの』を探す。

今日は……竜田揚げか。

厳密に言えば唐揚げではないが、俺のあだ名は《ダイ》だ。その辺も〝大まか〟で良いさ。

「竜田揚げ……あとなま下さい」

俺がお姉さんに告げる。

「竜田揚げいち~ 生ビール注ぎまぁ~す」

お姉さんの声に、店主はまた、スッと頭を下げる。

わざわざ声を張らずとも伝わるだろうに。この店の店員はあなたたち二人しかいないんだから。

でも、この昭和と平成が混ざって、令和に迷い込んだような()()()()さが、最新と効率を求め続けられる俺たちサラリーマンの心を、癒してくれるんだ。


 テレビを見ながら注文を待つ。

普段は決して見ないであろうバラエティー番組も、この空間の中だと不思議と馴染む。

「お待たせしましたぁ~」

お姉さんは、我が子を運ぶように、慎重に、ビールを持ってくる。

トンッと、目の前に置かれる。

丁寧にジョッキが拭かれるのを、大人しく見守る。

この拭き上げなくして、生ビールは完成しない。

そして今……まさに出来上がった。

目盛りいっぱいに注がれた黄金色の麦畑。

俺は思わず、下品に唇を舐める。

乾燥したままでは、唇の皮が持っていかれてしまいそうなほどにキンキンだから。

緊張感を持って、一口目を口に流す。


柔らかい泡と尖った泡の二層構造が、俺の口内で〝やんちゃ〟する。

一息に呑み込むと、どこにいるのかが手に取るように分かる。

喉から、心臓あたりを通り過ぎ、今、胃の中に納まった。

自然と長い息が溢れ出る……。


「お通しでぇ~」

可愛らしい小皿に、綺麗に三種類並べられた『おこうこ』。

これだけは元大将の時代から変わらない。

女将さんが漬けた香の物。人参、きゅうり……今日はカブかな。

世代を超えて受け継がれる、小さな小さなおふくろの味。


 カチャン。

客席のカウンターより、一段高い内側の台の上に、土色の器が置かれる。

匂いで分かる。俺が注文した『竜田揚げ』だ。

しかし、肝心のお姉さんは今、店の奥で他の客の生ビールを注いでいる。丁寧に、丁寧に。

じらされる……限界を超えた胃袋が悲鳴を上げるのを必死に堪える。人前で鳴かすわけにはいかない。

口内に涎が溢れる。いつもより濃い唾が喉を通る。

堪らず、ビールを先走る。冷たい液体が、俺のたぎりを鎮めてくれる。


ふと横目に、ジョッキを拭き上げるお姉さんが映る。

その時は、確実に、迫っている。

駆けているようで駆けてはいない……そんな動作でお姉さんがこちらへと向かってくる。

俺は、一生懸命に、何食わぬ顔を演じる。


 「お~待たせしましたぁ~」

独特な謝意と共に、台の上から『竜田揚げ』が降りてくる。

備前の刺々しい土皿に、シンプルに五個。綺麗に白く纏った衣が、赤黒い背景に良く映える。

俺は知っている。

この店主が食べ方を指定するときには、小皿やなんかで薬味が来る。

この男は、寡黙さの中に〝主役と薬味を一緒に盛らない〟という、鋭利な思想を隠し持っているからだ。

そして今回は……何もない。

そのままかぶりつけってことか。


 俺はいま一度しっかりと、『竜田揚げ』と向き合う。

綺麗に塗された片栗粉に、店主のむらなく真摯な仕事への姿勢が覗える。

少し間を置いたにも関わらず、まだ小さくパチパチと奏でている気がする。

()()()()()()は、自然と出るもんだ……俺は手を合わせる。

もう十二分に、じらされた。これ以上は、拷問に値する。

歴戦の経験則など顧みず、俺は箸で一つを摘まみ上げると、一気に頬張る。

熱い……! 新鮮な油が口の中で跳ねる。

甘く見てもらっては困ると、ひと思いに噛みしめる。

閉じ込められていた肉汁が、表層の油とマリアージュする。


〝ジュワ〟

これ以外に表現のしようがない。

熱さが馴染むと共に、今度は店主のこだわりが溢れ出す。

醤油の香り、みりんの甘味、ほんの細やかなニンニクの刺激。

何よりも、最後にしっかりと()()を飾る、鶏肉本来の旨味。

飲み込んでも消えない、ビールでも流し込めない濃密な味わい。

相変わらず大人しい顔して、とんでもないものを作ってくれやがる。


ここへ、だ。

この『おこうこ』。

白には白、今回はカブと行こう。

パリッとした触感の残る程よい頃合い。

クセのある香りと優しい酸味が、暴力的な鶏の旨味を包んでいく。

母親だけが、息子の内に秘められた怪物の鎮め方を知っているかの如く、あっさりと拭い去る。

歴史だ……今、俺の口の中を、歴史が通ったのだ。

この狭い古民家に詰め込まれたものが、一口サイズに凝縮されているのだ。

「完敗だよ」

自分のあだ名も忘れて小さく溢した俺の言葉に、店主はスッと、頭を下げた。


 もう一つ……唐揚げを頬張りながら、改めてお品書きに目を通す。

鮮魚、小鉢、焼きもの、煮もの、揚げもの、〆。

いつ来ても簡潔に整理整頓されている。

肉肉しい口内の状況から考えるに、次は野菜が欲しいところ。

とは言え、俺はサラダで酒が呑めるほど大人ではないからして、焼きもののメニューを順に見ていく。

炭焼きトマト、肉ピーマン、ナス味噌……着飾らない店主のスタイルが、そのまま反映された品々。

〇〇産やら、あざといことは一切書かれていない。

いいんだよ、俺はあんたを信頼している。


 ここで出逢ってしまう——

『ニンニクの芽炒め』

二杯目のビールを頼もうとしている男に対して、どストレート、ド真ん中への剛速球。

正式に野菜なのかどうかはさておき、この球を振らずして何を待つというのか。

油を纏った緑の円柱が脳裏に浮かび、ちょうど打ちごろな場所に飛んで来たのだ。

無論、お品書きに写真は載っていない。

シンプルにニンニクの芽だけが炒められて出てくるのか、それとも何か脇役が入るのか。


良く見るスタイルはやはり中華。

蒜苗炒肉スアンミャオチャオロー』や『蒜苗肉絲スアンミャオロースー』といったものに代表される日本的に言うところの『肉炒め』。

しかし、この男の感性から推測するに、それはない。

そもそもに、その場合はメニュー名に『肉』と明記するはずだ。

俺は知っている。この寡黙な料理人は主役が濁ることを嫌う性分。

『ニンニクの芽炒め』と表記している以上、主役はニンニクの芽であり、その座を明け渡すことを決して許さない。

そうであれば、いったい……。


 「すみません」

「はぁ〜い」

目の前に店主はいるが、俺はぼんやりとテレビを眺めていたお姉さんを呼ぶ。

料理をしている者に声を掛けるような野暮はしない。俺なりの流儀だ。

「もう一杯生ビールと、ニンニクの芽炒めを」

「ニンニクの芽いち〜 生ビール注ぎまぁ〜す」

居酒屋なんかでは悩むのもツマミ。たとえ予想外の商品が現れても、それもスパイスさ。

小気味よいやり取りを合図に、俺の計画は遂行に移される。


 『嫌々』は、ずっと家族経営——

初めは元大将と女将さん。

そして、フロアを仕切る長女のお姉さんと、現店主である末っ子長男。

店主は俺の二個上だが、敬語を崩さぬ律儀な男だ。

以前の威勢漲る『嫌々』も好きだったが、今の哀愁漂う『嫌々』も愛している。

固い衣と、柔い衣……それくらいに選べない。

それに、哀愁ってのはただ、店主の性格から染み出しているだけだ。

その証拠に、ほら……店の隅にあるえげつない勾配の階段の板が軋む。

元大将はご存命だ。ご存命過ぎるくらいに。


「風呂浴びてくらぁ~」

階段を下りるや否や、元大将の威勢が飛ぶ。

現店主がどんなにこの古民家を自分色に染め上げても、毎回この時間だけは昔の『嫌々』に戻される。

そしてそれを、目の前の男は優しい微笑みで許す。

俺なんかが割って入ることの出来ない二人の中の歴史があるからこそ、成り立つ関係性なのであろう。


「いつもすみませんねぇ」

腰の曲がった元大将とは違い、ピンと腰の伸びた女将さんが続く。

それでも、せめて旦那を小さく見せないようにと、肩だけを前に折りたたんでいる。

俺は専門じゃないが、昔の歌にあった『関白宣言』を思い出す。そんな関係性。

()()()ってもんがいろいろ言われる時代だが、俺はこの夫婦が、時代の型にはめられたようには見えない。

ごく当たり前に、ごく自然体に……お互いへの敬意の結果、必然的にそうなった〝在り方〟。

店を子供たちに任せて、悠々自適な老後生活。夫婦揃っての銭湯通い。

……いいじゃない。


ひとっ風呂に出かけた大将の頃は、まさに江戸前大衆割烹だった。

その日築地に上がった魚料理が中心で、マグロの赤身が名物なつうの店。

それが、今の店主に代替わりしてからは、創作割烹と洒落こんだ。

常連の何人かは異論を唱えたが、すべて元大将の威勢に吹き飛ばされた。

「てめぇら、オレの息子にケチつけようってのか?」ってな具合だ。

それから『嫌々』は、毎日お品書きが変わる店となった。

そして大事なことは、常連たちを黙らせたのは、元大将の威勢だけではない。

今の店主の圧倒的な腕前が、全ての異論を包み込んで、焼き上げてしまったのだ。


 「お待たせしましたぁ~」

二杯目のビールの到着。

勿論、今回もお姉さんが丁寧に拭き上げる。

二杯目とは思えないほどに、ビールが活き活きしている。

時を同じくして、ジュ~っと、鉄製のフライパンが熱される音が響く。

瞬く間に、ほのかなニンニクの香りが立ち込める。

間違いない。俺の『ニンニクの芽炒め』だ。

いや、是が非でもそうであってくれ。

でなければ、俺はとうに辛抱ならん。


 ジャッジャッと二回、軽やかな煽りのリズムが刻まれ、俺の顔の斜め上に皿が置かれる。

幸運にも、今回はお姉さんも手ぶら。すぐにその皿は、俺の前へと降りてくる。

先ほどの『竜田揚げ』とは違い、色気のある蒼い陶器に盛り付けられた『ニンニクの芽炒め』。

少しくすんだ蒼に、艶やかな緑がこれまた映える。

気になっていた具材は、ニンニクの芽と……まさかのベーコン。

たっぷりの緑に比べて、かなり控えめな数本。

しかしそれでも、この古びた古民家の中にあって、些か異質な存在感がある。

予想外の『肉』ではあるが、この小さな肉片に秘められた店主のこだわりを楽しめると思うと、嫌な気など浮かぼうはずがない。


 俺はまず、ニンニクの芽を一本、口へと運ぶ。

この屈強な見た目に反するホクホクな食感。

間違いない。正真正銘、ニンニクの芽だ。

しかし、どことなく漂う異国の香り。油なのか、香辛料なのか、それとも……。

次にこのベーコンだ。いや、『謎肉』と呼ばせてもらおう。

忖度抜きに言えば、俺の見慣れているベーコンの赤茶けたフレッシュ感はなく、もっと黒くみすぼらしい。

こいつもまずは一本だけ、恐る恐る口へと運ぶ。

舌に、ザラザラとした感覚がある。やはり、俺が知っているベーコンではない。

こいつは『謎肉』で間違いない。

そして、案の定ではあるが、先ほど感じた異国の正体もこいつだ。

小さな肉片に、何層にも重ねられたスパイスを感じる。


ゆっくりと、丁寧に、噛みしめる。


(やってくれたな……)

俺は心の中で唸る。

こいつの正体は『マトン』だ。スパイスを塗して熟成させた成羊マトンの肉に間違いない。

どんなに化粧をしても隠しきれない独特なクセ。唯一無二な弾力。

それに、前言撤回する。こいつはフレッシュだ。

若々しさとか新鮮とかではない、大人びた旨味の爆弾だ。

この一皿にほんの数本しか入っていない理由が明確になった。

こいつのポテンシャルは、本来主役級なのだ。

数の不利で押さえつけなければ制御のしようがない、暴れ馬ならぬ暴れ羊なのだ。


俺は一口ビールを煽り、頭の中の混乱を整理する。

(器の中の様子から見るにこれくらいか)と、一摘まみにする数をはじき出す。

はやる気持ちを表すように、前のめりになりながら口へと運ぶ。

……一本の時とは段違いなニンニクの香りが溢れる。

弾けるとも、香るとも、また違う。

ペンキの原液を垂らすように、ニンニクの芽の甘味と刺激が、べっとりと付着する。

そこにきてこの、暴れ羊。

ニンニクの芽の濃厚で強い個性を、一手に薙ぎ払う。

肉特有の〝ジュワ〟ではない。〝グワッ〟だ。

俺の脳内の緑の大草原を、凛々しい羊が駆け回る。


この一皿は、『嫌々』の親子関係なのだ。

素朴な見た目の中に、確かな技術と尖った個性を隠し持つ息子。

しかしそれを「風呂浴びてくらぁ~」の一言でかっさらってしまう父親。

一見アンバランスに見えて、人知れずがっちりと握手をしている。

お互いへの敬意の上で、自分の存在価値をわきまえている。

ニンニクの芽とマトン。息子と父親。

全くの異質同士に見えるこの二つに、親子愛の物語が秘められているのだ。

俺の心は泣いているよ。

無論、感動の涙だ。人情と愛にだ。

ビールで流し込むのが惜しいほどの、歓喜に対してだ。


 それにしても、このニンニクの香り、それに油とスパイス。

米だ! 白飯が欲しい!

しかし、この時の俺はまだ、目の前の寡黙な男の本性を見抜けていなかった——


「宜しければこちらぁ~」

唐突に、俺の前に一枚の皿が差し出される。

その上には……薄く焼かれたバケットが二枚。

「パン……」

小さく溢した俺のセリフに、店主は微かに笑った気がした。

この男、俺を何処へ誘おうというのか……。


俺は思わず店主を見る。

戸惑う俺に、店主はジェスチャーで応える。

(このバケットに、ニンニクの芽炒めを乗せろと……。

そりゃそうだろうが……こっちは完全に白飯の口だぞ?

あんたの誘導するその道は、本当に安全なのか?)


訝し気に視線を戻す。

何度見ても、何の変哲もないパン。左手に取っても、重さを感じられないほどの薄切り。

香りは……バターだ。

俺は、左手の不愛想な楕円形に、つい先ほど愛したばかりの『ニンニクの芽炒め』を乗せる。

小さなキャンパスに、慎重に芽の緑を並べ、その上にちょこんと、羊を一匹。

確かにこうやってみると、なんだか様になって見える。


 右手の箸を置き、使命を受け皿に切り替え、バケットを半分、ザクッと——

固い空気を噛むような軽快な音が、口内から鼓膜を震わせる。

小麦、ニンニクの芽、スパイス……折り重なるように混ざり合った香りを、バターが優しく、強く抱きしめる。

満更でもない……どころではない。

口の中の羊が無邪気に踊る。

緑の草原から、小麦畑へと移動する。

もはや危険物となった油が、ザクザクの小麦に侵食し、危ない湿りを作る。

火気厳禁。俺は慌てて、ビールで消火する。

黄金色の風が吹き荒れ、口の中の小さな世界を飲み込む。


 大陸だ——

大陸の、横断だ。

日本列島から中国へと渡り、北上。モンゴルの大草原をひた走り、西へ、西へ。

途方もないユーラシア大陸を突っ切って、今、フランスに辿り着いたのだ。

東京・押上の古びた古民家に居るはずの俺を、この男は、遥か欧州へと誘ったのだ。

なんてことをしてくれたんだ。

俺は、無事日本へと、帰って来れるのだろうか。


 俺は迷子になって、困り果てた目を店主に向ける。

男の口が動く……“赤ワイン”。

俺は、さらに困惑する。

何故ならば……俺は知っている。

この店のドリンクメニューに、赤ワインなど存在しないことを。


それであれば……俺は、料理のお品書きを手に取り、いま一度しっかりと読み返す。

『ニンニクの芽炒め』を越えて、煮ものの最初。

こいつか…… 『牛頬肉の赤ワイン煮』

フランスに辿り着いたのなら、いっそ満喫しろってことか。

俺は店主に微笑んで見せる。

店主は、スッと、頭を下げる。


 ともなれば、日本ブランドのビールは少々不躾だ。

ワインが無い店で、この男はいったい何を飲ませるのか。

俺は、ドリンクメニューに目を通す。そしてすぐ、店主の思惑を察し抜く。

本日のドリンク 『レモネードハイボール』

憎い。実に憎たらしい。用意周到。準備万端。

俺はどこまでも、この男の手のひらの上のようだ。


店主への微笑みか、メニューを見る俺の所作からか……お姉さんは既に、横に立っていた。

「あっ……『牛頬肉の赤ワイン煮』と、『レモネードハイボール』を」

「赤ワイン煮いち~ レモネード作りまぁ~す」

姉弟の熟練された連携プレイ。単騎の俺なんかには、躱す術があるはずもない。


 まんまとしてやられた俺は、虚ろにテレビを見る。

俗なバラエティー番組は終わり、世界の芸術作品を紹介する歴史ドキュメンタリーへと変わっていた。

まさか、これまで計算済みではあるまいに、フランスの有名画家・ゴーギャンの特集回である。

荒れ狂う時代の海を、水先人として渡り歩いた奇才。

大人の余暇で絵を描き、売れ切ってみせた時代の革命家。

世代交代を果たしてみせた自分と、この稀代の天才を、重ね合わそうと言うのか?

いや、それはない。この男に、そんな驕りがあるはずはない。

どちらかといえばカミーユ・ピサロだ。

写実的な中に、鋭利に研ぎ澄まされた思想を掲げているのだから。


 ——ここで、思う。

先ほどのバラエティーも、今流れているドキュメンタリーも、結局は、誰かの思想の下に制作されている。

そしてそれを、俺たちが受け取る。

中には意見が食い違うものも多くある。

そりゃそうだ。皆、人間だもの。


それでは、食べ物屋はどうだ?

同じだ……誰かの思想の下にレシピが構築され、調理され、盛り付けられ、我々の前に置かれる。

そしてそれを、俺たちが口へと運ぶのだ。

中には解釈が食い違うものも多くある。

当たり前なのだ。俺たちは皆、一人一人、違った心を持つ人間なんだもの。


それは決して、料理の腕が上手いか、下手かの話ではない。

思想が噛み合わなかっただけなのだ。

白飯を欲する俺に、店主がバケットを差し出したように、店と客とは、常にせめぎ合う関係性なのだ。

そんな時、俺たちに出来ることは、それすらも愛して噛みしめるか、飲み込まずに吐き出すかの二択でしかない。

嫌いな番組を観ないのと同意。

店を選ぶのも、飲みものや、食べるものを決めるのも、俺たちなのだから。

その証拠に、俺は今も、白飯を注文する権利を失ってなどはいない。

ここまでの自由を用意されておきながら、なんの文句が出てくるのか?

それほどまでに、俺たちの思想ってのは立派なものなのか?

よもや、金ぴかに光っているとでも思うのか?


 俺は前者だ。

訪れた店の全てを噛みしめて、飲み干す。

勿論、涙する夜もある。

そんな時は、自分自身を笑えば良いのさ。嘲れば良いのさ。

(お前はなんで、あんな店を選んだんだい?)と。


〝わたし〟が選んだ店であるからには、美味しくて当たり前。

金を払って提供される限りには、心も腹も満たしてもらえて当たり前。

自分の貴重な時間を消費した対価として、どこまでも深く感謝をされて当たり前。

頭を撫でられるのを懇願する子供のような、浅はかで傲慢な思想。

それは、他人の人生も、歴史も、性格も、そして思想までもを踏みにじる——現代社会の〝闇〟に隠された、性根の悪いハラスメントだ。


 少し酔った。

それもこれも全て、いま目の前で寡黙に調理を続ける男のせいだ。

自慢じゃないが、俺はダイの酒飲みだ。

たかだかビールの二杯で酔っぱらうほど、やわではない。

俺は今、この男の人生に、歴史に、性格に、そして思想に、酔っているのだ。


 「お待たせしましたぁ~」

お姉さんの優しい声色が、俺を平穏な日常へと引き戻してくれる。

美容など気にしていないであろう、洗剤であかぎれた手で、『レモネードハイボール』のグラスを拭き上げる。

つい癇癪を起こしてしまった俺を、それでも、おおらかに愛でてくれる。

「とぉ 赤ワイン煮ですぅ~」

俺の前に、皿が置かれる。

黒く艶光る肉塊。真っ白な皿の上に、堂々と居座る。

生まれてこのかた、自分が主役であることを疑ったことのないような顔をしている。

お前のちんけな悩みなど、俺様の前に置いてくれるな……と、言われている気がする。


 息を呑む。

こいつを味わうために、俺は万全を期さなければならない。

店主の覚悟に相応しい、俺なりの誠意を表さなければ忍びない。

小さく息を吐き、心を鎮める。

今は、この時だけは、世間なんて知ったこっちゃない。

俺と牛頬肉……それだけだ。


 まずは、フォークとナイフ……が、出て来ない。

まさかお前——俺の目線に、店主は小さく頷く。

こんな屈強な肉塊が……自身に劣等感を植え付けてくるような厳つい牛が、よもや、箸で()()()と言うのか?

俺は、頼りなく震える二本のか細い棒切れで、ゆっくりと、肉に触れる。

そして……それは容易に達成されるのであった。


箸の先にほんの少しの力を加え、下へ。

牛肉の繊維に沿って、スーっと、難なく箸が通る。

断面に、夜空のような油が輝く。

(ホロホロなんて次元じゃないぞ。

この皿に盛られるまでに、お前は一体、どれほどの試練を乗り越えて来たというのか)


裂けた一片を口へと運ぶ。

舌の上で牛肉の旨味が溶ける……とろける……違う、泳いでいる。

この牛は今、泳いでいるのだ。

自身の全てを、俺の口内全土に行き渡らせるように、航海しているのだ。

これはもう、美味しいよりも、悲痛な幸せの方が似合う。

必ず訪れる完食という別れを見据え、出会ってしまったことを、後悔しているのだ。


ねっとりと絡み合う舌と油。

ここに、『レモネードハイボール』。

甘く爽やかなシトラスが、この一夜の恋をより甘美に盛り上げる。

この時がいつまでも続けばと、甘酸っぱい気持ちに、胸が締め付けられる。

時間の許す限り、何度でも、何度でも、お前を愛し、抱きしめたい……俺の中の男が漲り、官能的に喉を通る。


 またひとつ理解した。

この店主の前では、そもそもハラスメントなど通用しまい。

心配する方がナンセンスだ。

この男には、ちゃちな客の思想など、入る隙もないのだ……と。

俺はカウンターに両手をつき、深く長い息を吐く。

そして、ゆっくりと頭を下げる。


(俺の愚痴を、受け止めてくれてありがとう。

俺の不安を、払いのけてくれてありがとう。

今夜の俺を、華やかな歓楽街へと、誘ってくれてありがとう)


店主は、スッと、頭を下げる。


 ——『嫌々』の常連たちは、本当に良い人ばかりだ。

大半は俺より年上で、人生経験が豊富な諸先輩方ばかり。

恋も、仕事も、人生も、俺に勝ち目は無いのではないかと思う。

それでも、こんな図体だけの若造を、例外なく大事に扱ってくれる。

正直、酔っぱらい過ぎて何を言っているのか分からない人も居たりはするが、それでも、その口から溢れる未知の言語が、なにかしらへの愛情であることは理解できる。

それもこれも、この古民家に息吹く、親子愛の反映なのであろう。


 俺の実家は埼玉——

今住んでいる曳舟ひきふねから近すぎるのもあってか、あまり頻繁に帰ってはいない。

正直に言うと、まめな連絡も取っていないし、そもそも、そんなに仲も良くない。

大学時代に『ゴシップサークル』ってニッチな環境に居たからなのか、俺の周りには、家族関係が崩壊している奴も少なくない。

それに比べれば、俺の家は全然マシだとは思う。

それでも、今からどんなに再構築したところで、この『嫌々』の中に凝縮された家族愛に、行きつくことはないだろう。


ではせめて、自分が一から、そんな家庭を築くことは出来ないだろうか?

それは正直分からないし、確たる自信も無い。

彼女は居る。恐らくあと数年の間に、その子と結婚すると思う。

願わくば、子供も欲しい。都心から離れた庭付きの一軒家で暮らしたい。

ただ何となくのっぺりと、そんな願望が漂って、そのまんま、薄い人生を送る気がしている。

皆が与えてくれた《ダイ》って呼び名に似合わず、俺は小心者だから。


そんな自虐的な想いも相まって、俺は『嫌々』のような家族経営の食べ物屋が好きだ。

勿論、今まで行った店の中には、客が気を使うほど不仲な店もあった。

それでもやはり、そこに滲み出る歴史と生活感が、俺を魅了する。

時に罰のような断ち切れない鎖が、愛おしくも思う。

そんな血の繋がりの一部を、こんな俺に分け与えてくれているようで、酷く心が潤むのだ。

()()()()()()()と、しゃぶりつくのだ。


 ——不意に、店の扉が不器用に開く。

決して一度では開けきれない引き戸が、気怠い音を立てる。

そこには、いかにも冴えない男が立っていた。

俺と同い年か、もう少し上か……時代外れのちゃんちゃんこを羽織り、いやにしょぼくれて入って来る。

そして……酔っている。

その後ろから、いつものあの声が響く。

「さっさと入りねぇ! 客が寒がるだろうが」

元大将のご帰還だ。

「ほんと、すみませんねぇ」

さらに後ろに、女将さんが続く。


冴えない男をカウンターに座らせ、元大将がその横を陣取る。

女将さんは、テンパるお姉さんに何やら説明をし、そのまま急勾配の階段を上って、二階へと消えた。

別に大したことはない。まぁまぁ良くあることだ。推測するに……。

「風呂の帰りにコイツがよ、しょぼくれて歩いていやがるから、訳を聞いたのよ。

そしたらこの野郎、店を閉めるってめそめそしやがって」

ほらな、やっぱり。元大将お得意のお節介だ。

そんな荒ぶる口調を、現店主は優しく受け止める。

「何かあったなら聞かせてください。

いつもの瓶ビールで良いですかね? 今日は父の驕りでしょうから」

「あったりめぇだ、こんちきしょう。

言われなくてもさっさと用意しねぇ」


俺は笑ったね。

振り向かずとも、お姉さんの顔が目に浮かんだから。

ほら……片っ方の頬を子供みたいに膨らませて、嫌々に、瓶ビールを運んでいる。

こんなところも、『嫌々』の魅力なんだよな。

正確には、元『嫌々』のだけれど。


「兄ちゃんも飲みねぇ。悩みなんてのはな、瓶ビールのグラスで分け合って、飲み干してやるんだ」

元大将の勝手な注文に、お姉さんはまた、可愛らしく頬を膨らます。

「是非、ご一緒させてください」

俺は満面の笑みでお姉さんをなだめ、小さなグラスを受け取ると、元大将からの光栄なさかづきを頂戴する。

そして、分け与えられた見ず知らずの男の悩みを、一気に飲み干してやる。


兎にも角にも、今この時を持って、この店は……いや、子の店は、親父に乗っ取られたわけだ。

どう考えても湿っぽい話をしているはずなのに、そんな陰気を全て、元大将の豪快な笑い声が吹き飛ばしていく。

最初こそ、怒気のような威圧感があるものの、意味を理解してしまえば、全部この男の優しさなのであると腑に落ちる。

その証拠に、萎れていた冴えない男の背筋が伸びてきた。

微塵も時代にはそぐわず、せっかちで、おこりんぼう。

その実、この元大将という男は、今や絶滅危惧種とも思える懐の深さも兼ね備えた怪物なのだ。

今や、日本一の電波塔が立つこの街の、歴史を守る重要文化財なのだ。


 「〆でも食いねぇ。人間まずは腹だ。腹が満ちりゃあ、悩みなんてねぇんだ。この贅沢もんが」

元大将の見事な啖呵が飛ぶ。

俺は最後の『竜田揚げ』を噛みしめながら、この威勢に痺れ、唸る。

「父の言うことも確かです。今は贅沢な世の中だと思います。

わたしも、父からこの店を引き継いだ時には、沢山の悩みがありました。

そんな時には、父のさっきの言葉を思い出しました。

子供の時から聞かされている、父の好きな啖呵ですから」

「なにを偉そうに。おめぇなんかはまだまだ丸太んぼうでぃ。べぇらんめぇ」

酒のせいか……頬を赤らめる元大将。

俺は最後のバケットに、残りの『ニンニクの芽炒め』と、希少な生の『べぇらんめぇ』を乗せて、頬張る。


冴えない男が口を開く。

「なんてお礼を言えば良いのか……家の近くにこのお店があってくれたことに、本当に感謝しています」

俺は、それに深く頷く。

気を良くした元大将が、俺のグラスに、また瓶ビールを注ぐ。

お姉さんの頬は、今や左右両方膨らんでいる。


「感謝だなんて……今も昔も、この店を支え続けてくれているのは、お近くに住む皆さんですよ。

うちはスカイツリーからも離れていますし、近くに大きなオフィスもありませんから。

感謝しなければならないのは、私たちの方です」

現店主の謙遜に、元大将は「なにを知った風な……」と小さく零しながら、満更でもなく微笑んで見せる。

俺は、最後の『牛頬肉の赤ワイン煮』を口に運び、心の中で謝罪する。


 (ごめんな……。

お前がどんなに、長い時間、丁寧に煮込まれたとしても、今、俺の目の前に広がる『歴史の煮込み』には敵わない。

家族という、旨味も、苦味も、酸いも甘いも、全部一緒に煮込まれた、この『嫌々』という逸品に、適うわけがない。

それでも、お前に出会えて、本当に良かった。

またどこかで会えたなら、もう一度、俺をフランスに連れて行っておくれ。

どうやら、今夜の俺は、もうすでに日本に帰って来てしまったから)

そうやって、少しだけ残っていた『レモネードハイボール』と一緒に、旅の思い出ごと心に流し込む。


 「今夜の〆です」

現店主がそう言うと、お姉さんがカウンターの向こうから茶碗を受け取り、お盆に乗せて、冴えない男と……俺の前にもひとつ。

「お兄さんも、今日は付き合ってもらっちゃったんで、宜しければ。『玉子丼』です」

「ありがとうございます」と、俺はその好意に甘える。


目の前に置かれた小さな茶碗には、それは質素な卵とじ丼。

具材は一切なく、三つ葉すら添えられていない。

ホカホカのうちにと、一口掻き込む。

さっきまでフランスにいたはずの俺を、どうしようもないほどの日本が襲う。

白飯が卵と出汁と溶け合って、どこか満たしきれていなかった俺の胃袋の隙間を埋めていく。


これは確かに、鶏肉も、玉ねぎも要らない。

玉子だけで、十分成立している。

違うな……邪魔なだけだ。

米と卵。究極の引き算。

だからこそ、こんなにも隅々までみっちりと、胃も心も、満たしてくれるのだ。


 贅沢な世とは良く言ったもんだ。

この玉子丼を食べた後には、よりそう思うよ。

単調だからこそ、そこにある喜びの種を、見つけられるのかもしれない。

シンプルだからこそ、そこに学びが芽生えるのかもしれない。

質素の中にこそ、美しい花が咲き誇るのかもしれない。


俺の人生もこうありたいと思った。

のっぺりとした思想でも良い。薄く平たい人生でも良い。

ただその中で、俺の《ダイ》ってあだ名に見合った大きな花を、一輪だけ咲かせられたなら、それで良い……と。


 確かに、この玉子丼は、父親からの独立宣言にも見て取れる。

敢えて親子にせず、自分だけでやっていけるという尖りにも思える。

でも……俺は知っている。

目の前の男は、そんな薄情者ではない。

この白飯なのだ。この白飯こそが、元大将なのだ。

その土俵の上だからこそ、自分が活きるのだと、この男は理解しているのだ。

自分自身が、父に、母に、姉に、客に、街に、歴史に、そして『嫌々』に、支えられているということ。

そして、それを理解したうえで、主役を張り、他に頼らず、自分ひとりで金ぴかに光る。

その覚悟が、この小さな茶碗に秘められているのだ。


(次の休みの日には、彼女でも連れて、実家に顔出してみるか)

そんな俺の想いを察したように、カウンターの中の寡黙な男は、スッと、頭を下げた。


【固定】

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