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9話 冤罪

「警察は今回の強盗事件の犯人もあの男と見てるらしい。霞、良くやった!俺達の手柄だ!」



にっ、と吊り上げた口角が満足そうに笑っている。その言葉に昨日の慌ただしい出来事を思い出す、ついでに全裸が宙を待っている姿も。



「つまり、僕達の解散はなし?!」


「そうだ!!これで全員立派な社会人だ!」


「いやー、みんな俺がいない間にお手柄だったね〜」


「琉生くんがいる!?」


「流石期待の新人ちゃん、今度デートでもどう?」


「仕事をサボる人はちょっと…」



パチン、と片目から飛んできた星を叩き落とす。昔からこういうチャラい人は苦手だ。地元にはいなかったから、東京に来て初めてナンパされた時は本当に驚いた。



「まあ、兎に角我々アスラの初解決だ!今日はパーティーだぞ!」


「あ、それだけどアスラもしかしたら解散かもよ〜」



騒がしい雰囲気から一転、変わらぬ笑顔でとんでも無いことを言う柏木さん。クルクルと椅子ごと回りながら話していたから私達は驚きで固まりつつ、回り終わるのを待つ。


椅子の音が止み、同時に再び私達の方が騒がしくなる。なぜだ、どうして、理由を話せ、と主に蓬莱さんが騒いでいる。その周りを碧がちょこまかと追いかけ、千桐さんは頭を抱えてる。



「警察は覗き魔と強盗犯を同一視してるけど覗き魔は否定してるっぽくてさ。もし、これで本当に冤罪だったら警察は責任を逃れて覗き魔を捕まえた俺達に罪を被せる気っぽいよ〜」


「…それは本当ですか」


「ほんと〜、ほんと〜。女の子達は噂話が早いからね。多少盛ってたとしても大部分は本当だと思うよ」


「琉生くんは情報通なんだよ。女の子からよく聞いてるみたい」


「仕事に真剣なんだか、不真面目なんだか……」



いつもとは違う真剣な雰囲気の中、ひっそりと碧から聞こえてきた事実に肩を落とす。

よくある女好き警察官だ。いや、女好き能力者(シグナ)



「それで今取り調べをしてるらしいんだけど、行く?」


「……よし、霞行ってこい!僕達は行けないからな!」


「僕と千桐くんは一般人だし、要くんは…警察に嫌われてるもんねぇ」


「…私も一般人ですよ!?」


「お前の能力であの全裸野郎が嘘ついてないか視てこい」


「私別に嘘がわかる訳じゃ無いんですけど…!!」


「じゃあ行こっか、霞ちゃん」



半ば無理矢理部屋から追い出され柏木さんと廊下で2人きりとなる。下げられた目尻から色気が漏れ、首を傾げた反動で結っていた髪の毛が尻尾のように揺れる。


彼と一緒に歩いてみると今までとは違う雰囲気を感じる。今までは敵意剥き出しの紫のオーラだったけど、今は黄色の喜びのオーラが女性の警察官から溢れ出ている。

特に驚きだったのは男性の警察官からはなんの感情も出ていない事。女好きだとは思ってたけど性別関係なしに良い関係を築いてたんだな。



「…どうして蓬莱さんは嫌われてるんですか」


「んー?…そうだね、警察は"規則"が好きなんだ。要くんはね、あの無鉄砲な性格のせいで上司からは厄介者として扱われててね」


「無鉄砲…確かにそうですね、待機命令とか無視して現場行きそうですもん」


「ふふ、正解。でもこれ以上言ったら要くんに怒られちゃうからこの話は2人だけの秘密ね」



しー、と人差し指で塞がれた唇が色っぽく映る。ここは警視庁内の廊下であり、先程の女性達はまだいる為後ろから黄色い歓声が聞こえる。


さっきも言ったが私はチャラい人は嫌いだ。きっかけは大学1年の時に同じサークルにいた先輩だった。付き合った1ヶ月後に7股が発覚した。逆にどうやってたんだよ、と一瞬尊敬までしたが彼女全員でボコボコにした。



「…おかしいなぁ。これやったら大体みんな顔を真っ赤にするのに」


「私も赤面できるくらい純粋でいたかったですよ…はは、ははは……」


「…行こっ、か」



気まずい雰囲気にしてしまった罪悪感は無い。私は悪く無い、悪いのは7股先輩だ。いや、先輩なんて呼ぶもんじゃ無い。7股クズ。



「あ、柏木さんだ。なんでアスラになんか入ったんだ?あの人のとこより鑑識の方がいいのに…」


「だよなー、あの人問題児だし、脅されてんじゃね?」



何処からか聞こえてきた噂話。きっと柏木さんにも届いている筈なのに変わらぬ表情で歩く彼に私もついて行く。


蓬莱さんの警察時代の話はあまり触れてはいけない話題なのかな…



と、もんもんと悩んでいると目的の場所についたらしく柏木さんの足が止まった。

扉を開き、中に入ると刑事ドラマでよくみる空間が広がっていた。刑事2人に容疑者1人、見慣れた光景だった。



「柏木か?…誰だそいつは」


長谷川(はせがわ)さんお疲れ様でーす。この子はアスラに最近入った、藍羽霞ちゃん。ちょっと事情聴取を体験させようと思ってね」


「はあ?アスラだあ?大した実績も積んでねえ癖に人だけは増えてくんだな」


「まあまあ、その犯人だって霞ちゃんが活躍したから捕まえられたんですよ。もっと感謝しなきゃ〜」



感じの悪いガタイのいいおじさん刑事。どこかで見た事があると思ったら昨日捜査一課にいた、刑事ドラマによくいる新人いびり刑事だ。


この人がいるということはあのキャラ崩壊竹田さんもいる気がして周りを見渡したがそれらしき人はいなかった。こんな大勢の前でラキニちゃん!なんて叫ばれたらたまったもんじゃ無い。



「で、犯人は容疑を否定してるんでしたっけ?」


「ああ。こいつの能力、透明化だと色々辻褄が合う。だがこいつはその犯行は否定をしていてな」



2人の会話をなんとなく聞いていると突然柏木さんからある資料を渡された。そこには犯人の名前や年齢、経歴などが書かれていた。


堀越剛(ほりこしたける)(34歳)

現在職場をクビになりアルバイト生活を送っている。金目当ての強盗であり、どこに売ったかは未だ分かっていない。



「どう?容疑者は嘘をついてそうに見える?」


「…私は感情が分かるだけで、嘘とかは……」


「そう。じゃあ、長谷川さん!俺たちが代わりに取り調べするから中の人達出して」


「おい、一般人にそんな権利ないぞ」


「彼女はアスラの人間、能力者(シグナ)ですよ。権利はあると思うけどな〜」


「……はぁ、お前ら出ろ」


「え、ちょ、!?」



思わぬ方向に物事が進んでしまい、止める間もなく私は部屋の中へと入れられる。背後には柏木さんがいて逃げられず、隣の部屋には警察がいてガラス越しに全ての言動が見られている。

緊張なんてレベルじゃない。冷や汗が止まらず目の前もくらくらとしてきた。


なんで急に。私にできるわけない。



「ほ〜ら、ちゃんと前見て」



ぽん、と肩に置かれた手から温もりが伝わってくる。一気に意識がハッキリとして、心臓の焦りが収まっていく。


目の前には昨日捕まえた堀越さんが俯いて座っていた。表情からは生気が感じられず、何よりも背後にあるオーラが異質だった。くろ、いや、黒に近い紫だ。

一歩だけ近づいてみようと片足を上げる。たったそれだけの行為。なのに、



「いや、むりです!むり!!」


「おっと、霞ちゃんってば積極的なんだね」



ガラス越しに伝わってくる警察からの圧に隠れるように柏木さんの背後に引っ付く。この際なんて言われてもいい。

警察の圧に勝てる人なんていないよ!!



「でも、今はダ〜メ。ちゃんと取り調べしなきゃ」


「…これカーテンとか付けれないんですか?」


「そんな不正し放題な設計にはしないよ。はい、座る〜」


「わっ、」



腕を引っ張られ、無理矢理椅子に座らせられる。再び堀越さんが視界に入り、どんよりとしたオーラに私も呑まれそうになる。


あの後、昨日家に帰って私も感情の色について調べてみた。合っているかは分からないけど、この色も見た事がある。確か、この色は"自信喪失・無気力"そんな意味だった気がする。



「あの、いつから取り調べを…」


「…長谷川さーん?」


「朝6時からだ。昨日の夜もしたんだが、中々犯行を認めないからな」



現在の時間は9時。3時間も取り調べをされてこんな無気力になってるのに犯行を認めないのは、本当に冤罪だから…?

ただ単に罪を逃れたいから耐えてるって事もあると思うけど…私だったら、普通の人だったらこんな状態になるまで耐えられない。



「…あの、本当は窃盗なんてして無いんですよね?」


「………っ、そう、っそうです!俺はやってないです!」



ぶわっと一気に視界が黄色へと変わる。先程の生気の感じられない瞳には光が宿り、身を乗り出してきたので慌てて椅子ごと下がった。


感情は嘘をつかない。それこそこういう場面では誤魔化せない、ってネットに書いてあった。



「でも、貴方俺を捕まえた人ですよね?…やっぱり、だれも…」


「っあ、いえ、私は覗きの件はそうですけど…窃盗については冤罪だと、思ってます…」



もう一度暗いオーラに呑まれそうにになったと思えば再び黄色に包まれる堀越さん。明るい黄色が目に染みて痛い。こんな弊害もあるのかこの能力…


ガラス越しから伝わってくる動揺と疑いの視線。そんな視線から逃げるように柏木さんの方を向けば満足そうに笑っていた。

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