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8話 聞き込み

「私何度も言ってますよね?急に無くなったって。それ以外に何も言う事ないんですけど」


「分かってます。ですがそれでは捜査が進まず…他にどんな些細な事でもいいです、何か気になる事はありませんでしたか?」


「だーかーら!!ないって!」



最初に被害にあったブランド店の事務室。そこでは髪をぴっしりと一つに束ね、目元と口元をツンとさせた女性が数々の事情聴取にうんざりしたのか横暴な態度をとっていた。背後には黒のようなくすんだ紫色が視える。あの時の警察のオーラとは違う紫。彼らのは本当に濃いだけの紫だったが彼女のはくすんでいる。


意味は確かな事は分からないけど多分、きっと、"不快"なんだと思う。



「…じゃあ、本当に突然消えたんですね?」


「そうって言ってますよね!?もういいですか?」


「…はい、すみません。では笹山さんを呼んでもらってもいいですか?」



こちらにも聞こえる音量で溜め息をし、扉を強く閉めた女性。最初からこんなにハードだとは思わず内心ビビりまくりである。


次に来る笹山さんも事件当日店内にいた店員の1人だ。お願いだから優しい人であって欲しい。清水さんみたいな人が連続できたら私はもう無理だ。



「すみません、お待たせしました〜」


「いえ、大丈夫です!では、事件当時の様子をもう一度お聞きしても良いですか?」


「…はい。当時私は担当のお客様がおらずレジ付近でちょっとした事務作業をしていて…突然商品が消えたので私も訳がわからなくて…」


「他に何か気になった点などは…?」



俯き、静かに首を揺らす笹山さん。肩につくくらいの髪の毛から小さめのピアスがキラリと輝いた。

先程の人に比べるとお上品、というか落ち着いた雰囲気の彼女によく似合うアクセサリーだった。



「そのピアス可愛いですね」


「本当ですか?ふふ、これ一目惚れして買ったもので…そう言って貰えて嬉しいです」


「宝石ですか…?」


「はい。スファレライトと言って洞察力を高める、と言われてるんです。気に入ったならお店をお教えしましょうか」


「あ、いや!大丈夫です」


ふんわりと控えめに微笑む彼女に泣き出しそうだった心が和む。

笹山さんはお客様に寄り添い、さっきの人、清水さんはお客様にどんどん意見する接客をしているんだろうと、勝手ながらそんな想像ができた。


それ以上は良い収穫ができず店を出る。もう1人の参考人は今日は休みらしく、また明日くることにした。



「う〜む、資料と変わらない証言だったな」


「やっぱりイレギュラーの能力が分からないとだね」


「近くの道の監視カメラでも見る?」


「俺は店の周りを見てくる」


「碧、今日はもう良い。八雲!俺も一緒に行く、お前たちはここで待っててくれ」



2人が路地裏の方へと歩き、私達にはショーウィンドウの隣で待機命令が出たため中のブランド品を見ながら待つ事にする。


流石高級ブランド店なだけあって値段が洒落にならない。これほどの値段のものが盗まれたんだ、被害総額は…想像するだけで背筋が凍ってしまう。



「たっかいねぇ」


「…やっぱり犯人はお金が目的なんですかね」


「あ、そうそう……あったあった、ここ見て。近くのリサイクルショップとか換金店の履歴。盗まれたものが売られた形跡はないっぽいよ」



資料をパラパラと捲り、7ページ目には盗まれた日から2週間のリサイクルショップと換金店の履歴があった。ブランド品なんてものは一個もなく、あっても違うブランド品一点くらいだ。


椎原さんから資料を借りて見落としがないように注意深く見るがやはり該当するブランド品はない。資料に載っていないお店に売ってる可能性もあるけど近辺の店舗全て探してもないんだ、売っていない確率の方が大きいはず。


なら、何が目的なの?



「…ふふ、」


「どうしたんですか?」


「あ、いや、深い意味はなくて…ただ、仲間になったなーって感じがして。今まではこんなこと出来なかったし、」



ワタワタと慌てたと思えば頬を赤らめて照れ臭く笑う椎原さんは黄色のオーラを背負っていた。その光景になんだか私も照れ臭くなる。



「ふふ、今まで皆さんはまともに調査ができなかったみたいですからね」


「…その、敬語さ、…やめない?僕達同い年だし、同期だし!」


「じゃあ、碧って呼んで良い?」


「うんっ!よろしくね、霞ちゃん!」



碧の背後に見えないはずの尻尾が見える。しかもブンブンと、遊びたがってる犬のように激しく動いている。

それと同時に黄色のオーラだけでなく、背後に向日葵のような明るい花も見えた気がした。



「はあ、特に収穫なしだ。…どうした?」


「いえ、なんでも!」



2人の声が重なり、顔を見合えばニヤニヤと頬が緩みまくっている姿が見える。きっと私もこんな表情をしているんだと思ったらなんだか楽しくて再び笑い合う。


同期って、憧れの言葉で私は前の会社では同期とは仲も深められず終わったから今回は仲良くなれそうで嬉しい。





2店舗、3店舗目も同じようになんの収穫もなかった。全て資料に書いてある通り。そりゃ警察が解決できてない事件なんだし、そんな簡単に事が進む訳ないよな…


それにこれはイレギュラー関連だから尚更。透明人間とか時間停止なんて能力だったら絶対捕まえられない。



「やっぱり厳しいな…」


「僕はもうこれ以上能力使えないですよ〜」


「続きは明日か?」


「そうだな、一旦戻って整理したら解散にするか…」



お店を出て車を置いてある近くの駐車場へと向かう。3人の後ろを歩いていると溜め息などが聞こえ、目の前が暗い雰囲気で満たされていく。

やっと手に入った事件。でも解決の兆しは見えてなくて、期限まであと2週間。暗い雰囲気になるのも納得で私も呑まれそうになる。



「きゃー!!!覗きよ!覗き!!」



突然後ろから叫び声が聞こえ、振り向くと着替えていた途中なのか下着姿を服で隠している女性がある男性を指していた。その男性は肌色の、いや全裸で大事なところを隠しながら走っていた。


蓬莱さんと千桐さんが走り出し、私は思わず目を逸らしそうになったが、その瞬間に男性の姿が消えた。人混みに消えた訳じゃない、その言葉通り消えたのだ。



「透明化…?」


「っくそ!見失った!!」



碧の呟きに彼がイレギュラーだったと分かる。あの時、通り魔事件のように人混みに紛れればあの男は見つからないと思っているようだ。



「蓬莱さん!右に曲がって下さい!」


「っああ!」



でも私にだけ視える緑色のオーラ。通行人とは違う、目立つオーラを追いかける。

姿は見えないけどオーラだけは視える。濃い濁った緑色だ。色んな緑が混ざって管理されていない沼のように澱んでいる。濃い緑、薄い緑、少なくとも前向きな感情ではない。直感だが、そんな気がした。



「まっすぐです!っあ!みぎです!」



右に曲がった瞬間、男性の姿が見える。全裸で猛ダッシュだ。私達へと向いてた好奇の目は一瞬にしてその男性へと向いた。そしてまた少ししたら姿が見えなくなる。


透明化には規則性がある…?


チカチカと視界が光り、目の奥がずきりと痛む。今日一日中人混みの中で色んな感情を視てきたからか、目が疲れてきた。



「千桐さん!そこです!」


「っ!よし……要、手錠」


「はあ、はあ、…みんな、はやい、…よぉ……警察には…通報しとい、た…から、」



犯人に追いついた千桐さんの見事な背負い投げで男の姿が綺麗に宙に浮く。気を失っているのか全裸を公開しながら静かに地面に横たわっている。


良かったぁ、柔道で千桐さんとペアじゃなくて…

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