4話 覚悟
「私なんて感情が視えるだけで…」
「だからだ。だから君が欲しい」
ニヤリと目を細めて笑う蓬莱さん。真っ直ぐな視線が私へと突き刺さり目が離せなくなる。
ドクドクと心臓がやけに騒がしい。心の奥底で潜めていた情熱が噴き出そうとしている。だけど、私は自らその情熱をまた奥底に沈め込んだ。
「…でも、私は」
その真っ直ぐな視線が苦しくなり、逃げるように俯く。心の何処かでやりたいと呟く私をバレないように必死に隠す。
私はそこまで人を救える様な正義感に溢れた人では無い。別に犯罪を犯してるとかそんな大それた事ではないけど…だけど、私は成功してる友達に嫉妬をしては、毎晩毎晩ネガティブな事ばかり考える。あの日だって、私は夢希も私と同じような思いをすれば良いと運命を、友達を恨んだ。
そんな人間が正義を、人の命を背負って良いわけがない。
「…言っとくが要以外誰も自らここに望んで入ってないぞ」
「え?」
「み〜んな、藍羽さんみたいに無理矢理スカウトされたんだよ」
「無理矢理って……べ、別にいいだろ。お前らも楽しくやってるんだから」
なんと他の人にもこういう事をしていた蓬莱さんをまじまじと見る。やりそうだけども、全員にやっていたとは…
良いな、私も自分に自信を持ちたい。
蓬莱さんは自分に自信があるんだ。自信があるから自分の行動に疑問を持たない。真っ直ぐと、前だけを見ていられる。
「霞ちゃんはマシな方だよ。俺なんて毎日鑑識の方に来て「僕は貴方が欲しいです!」なんて叫ばれたんだから」
「俺は毎日アパートの前で待ち伏せされて近所の人に勘違いされた」
「僕も僕も!大学まで来たんだからね、この人!」
「なんというか、お疲れ様です」
「う、うううるさい!それだけお前達の能力に惚れたんだ!!」
耳を真っ赤にして反論してくるが、その台詞でさえも恥ずかしいものでこの人が天性のキザという事がよく分かった。
「っぷ、ははは!あ〜、おかしい」
慌てている蓬莱さんを見てると今まで悩んでいた事がどうでも良くなり思わず吹き出してしまった。笑いで溢れてきた涙が先程の悩みだったのか、今は頭がスッキリとしてる。
「…お、かわい〜笑顔」
「琉生くんも結構キザだよねぇ」
「キザは1人で十分だ」
よくよく考えてみれば私がこの組織に入って受けるデメリットより得られるメリットの方が多い。公安職という安定した職に就けれるし、何より親を安心させられる。そして東京に居続ける事もできる。
確かに私はここで正義を背負っても良い人かどうか聞かれたら答える事はできない。だからってこのまま逃げたくはない。きちんと自分と向き合ってからもう一度決めたい。
「…私、入ります。入らせて下さい」
先ほど断ってしまった手前、入ると言うのが少々恥ずかしくお辞儀という意味も込めて頭を下げた。力強く瞑った目が疲れてきた頃、未だに返事等がなく不安に思いながらも頭を上げる。
するとそこには受け入れるように静かに笑っている4人がいた。ふわり、と風が吹いた気がした。
「明日から楽しくなるな!」
「むふふ、仲間が増えてうれし〜!」
「きっちり鍛えてやるからな」
「男世帯にこんな可愛い女の子が来てくれて嬉しいよ」
「っ…お願いします!!」
受け入れ全開の雰囲気に嬉しくなり、再び頭を下げる。頭を上げろ、なんて声が聞こえてくるけど今は人に見せられない顔をしてるから上げられない。それだけ嬉しかった。
「__よかったね」
すっ、と耳に入ってきた声に頭を上げて振り返る。そこには何も、誰もいなかった。神様のような、そんな声が聞こえた。気のせいかもしれないけど、そうだったなら嬉しい。
「どうした?何かあったのか?」
「あ、いえ……てか、まだ入るの決まってなかったのにパーティーなんてよく開きましたね」
「う"っ、それは言わない約束だろ…?」




