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3話 異能力対策本部-AsterLampo-

「じゃあ改めて自己紹介するな。僕はアスラのリーダー、蓬莱要(ほうらいかなめ)だ!」


「は、はあ…」



ケーキを頬張りながらにんまりと笑う赤目の男、蓬莱さん。少し長い黒髪と赤い瞳の組み合わせのせいか吸血鬼の様に見える。


昨日この人に意味の分からない事を言われて逃げる様に家に帰って、それから寝て、それでバイトに行こうと扉を開けたら目の前にこの人がいて、目隠しをされて、気づいたらここに連れてこられてて、


あれ?私ってまだ夢の中なのかな



千桐八雲(ちぎりやくも)、よろしく」



昨日蓬莱さんと一緒にいた青髪の男性だ。前髪からチラリと見える目元はギラリと光っており、悪くいえばガラが悪く、可愛くいえば猫の様なツリ目をしている。



椎原碧(しいばあお)だよ、よろしくね〜」



桃色の髪色にぱっつんの前髪。丸くてクリッとした瞳は柔らかな印象を与えてくれる。八重歯が特徴的で全体的に可愛い雰囲気だ。



「あと今1人遅刻してる奴がいるんだ。来たら自己紹介をさせよう」


「はぁ…えっと、私は藍羽霞で、、いやここは何処で貴方達は何ですか!?」



あまりのスピード感に脳が処理し切れず流されるままに自己紹介をしてしまった。チキンを頬張っている椎原さんは首を傾げ、千桐さんは凄まじいスピードで蓬莱さんを睨んだ。


てかこれ誘拐じゃない?!



「だからちゃんと説明してから連れて来いって言ったよな?」


「え〜?だって善は急げって言うじゃん?」


「あっ、バイト先には休みの連絡入れたから安心してね!」



蓬莱さんが千桐さんに絞められてる。こう言っちゃあれだけど千桐さんは見た目がとてもイカついからカツアゲみたいだ。

今のところ好感度が高いのはヘッドフォンを首に掛けてる、恐らく常識人の椎原さんだ。お礼を伝え、あの2人を刺激しない様にこっそり椎原さんに聞いてみる。



「…あの、ここって本当になんですか?アスラって…?」


「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれたね!アスラはイレギュラーによる犯罪の対策及び制圧をする組織なんだよ。一般的には公安職っていうのかな。ちゃんと政府公認だから安心してね!そういえば藍羽さんは生まれつきじゃないんだっけ?珍しいね〜じゃあシグナについても教えてあげるね!シグナはね〜」



待ってましたと言わんばかりに早口で説明をされて更に理解が難しくなる。因みに私が追いついていないのにも関わらずまだ説明は続いていて、ここが漫画の世界なら私はとっくに文字に押しつぶされてるだろう。



「おら!碧も落ち着け、困ってんだろ」


「ったぁ〜!…うぅ、ごめんね仲間が増える事が嬉しくて」


「と、取り敢えず一から説明して貰ってもいいですか?…あ、椎原さん以外で」


「えぇ!?」



結局蓬莱さんからゆっくりと落ち着いた説明を受けた。要約すると私は神様の冗談ではなく、正真正銘の能力者(シグナ)であり、そんなシグナが集まり犯罪者に対抗する組織が-AsterLampo(アスターランボ)-略してアスラらしい。



「そしてアスラのアジトはここ、警視庁の地下一階にある!」


「え?みなさん警察って事ですか?」


「あ〜いや、詳しくいえば警察とは別の組織なんだが…まあ、とある事情で警視庁に場所を借りてるだけだ!それに事件があったらすぐに情報交換ができるから便利だぞ」


「因みに要は元警察官だよぉ〜」


「びゃ、っ!」



突然耳元で発せられた声に反射で色気もない反応をしてしまう。右耳を抑えながら後ろを振り向けば全く知らない男性が1人増えていた。


垂れ下がった目尻に犬の様な親しみを感じる。肩につくほどの髪を下の方で結んでおり、大人の魅力を擬人化した様な見た目だった。



「あ〜琉生くん遅刻だぁ」


「ごめん昨日は遅かったからさ。…それにしても新しい子は女の子かぁ。嬉しいな、こんな可愛い子が近くにいてくれるなんて」



ちゅ、と態とらしく音を鳴らして掬った髪に唇を重ねた遅刻男。周りの反応を見ても驚いてはいないから普段からこうなんだと、少しアスラへの信頼度が下がった。



「俺の名前は柏木琉生(かしわぎるい)。要くんと同じで警察出身。気軽に琉生くんって呼んでね」


「えっと、柏木さんですね」


「おお!照れてない!これは椎原辞書によると"ふ、おもしれー女"の枠に当てはまる!!」


「…これで通常通りなんですか?」


「…残念だがな」



漫画の様に興奮している椎原さんを指しながら千桐さんに問いかける。これが日常らしく千桐さんは悟りを開いたかの様に遠くを見つめていた。

やっぱり見た目がイカつい人が常識人なんだ。


過去読んでいた様々な漫画のキャラに千桐さんを重ねる。一番の苦労人なんだと、慰めのつもりで頭の中で肩を組んでおいた。



「ん"んっ!霞、分からない事は何でも聞いてくれ!」


「えっと、実はそんなに能力者とか詳しくなくて」



仕切り直すかの様に咳き込んだ蓬莱さんに右手を少しだけ上げて質問をする。

ナチュラルに呼び捨てだけどもう何も気にしない。



「そうだな…シグナは理解してるか?」


「あー、普通に能力者ですよね」


「そうだ!ここにいる全員シグナだ。ならイレギュラーは?」


「んー、悪い能力者…?」


「うん、そうだな。詳しくいえば犯罪を犯した能力者だ」



世間一般的な知識と相違ない事を再確認する。相違がないという事はつまり、ニュース等で話していた通りイレギュラーが実在しているという事だ。


少し前まで一般人だった私からしたらシグナもイレギュラーも全て都市伝説程度だった。毎日毎日馬鹿みたいにニュースで取り上げて視聴率を上げたいが為に作りだした嘘の話だと思い込んでいた。



「そしてイレギュラーによる犯罪組織が、これだ!……つまり僕らの敵だ」



バンっ、とホワイトボードを叩きつける音が地下に響いた。そこには"TerraPere(テラペーレ)"と大々的に書かれており、聞き覚えもなく首を傾げた。


イレギュラーやらシグナは聞いた事はあったが、テラペーレはまるっきり初耳だった。



「てら、ぺーれ?」


「ああ、一般人にはまだ公表してないからな。知らなくて当然だ。僕が現役の頃、何人かのイレギュラーがいたんだが、その内の1人がテラペーレという組織の情報を漏らしてくれた。そこから調べてみればそれはイレギュラーばかりの犯罪組織だったんだ」


「えっと、つまり…アスラ?はテラペーレを無くすための組織って事?」


「そうだ!僕が最近作り出した組織だからまだ歴も実績も浅くてな……そこで霞の能力が必要なんだ」


「私の…」



蓬莱さんの力強い目線にドクン、と心臓が跳ねた気がした。

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