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2話 彼らとの出会い

「…さ、さつい、?」


「そう殺意。今朝のニュース思い出してみて」



聞き慣れた抑揚のない平坦な声が耳元で囁かれ、その言葉にスイッチを押されたかのように脳が記憶を辿っていく。


今朝のニュース…

犯罪に詳しい人が出て、いやそこじゃない、銀行強盗?それでもない、…思い出せ思い出せ!


殺意を背負った男は血がついた刃物を持っている。

倒れている女性はお腹から血を流しているが、誰も助けようとせず逃げている。

男はそのまま人混みへと紛れて多くの悲鳴を浴びている。

周りの人間はパニックを起こして反対方向へと逃げているのに私は何の使命感からなのか逃げ出さずに神様の言う通りに思い出そう尽力している。


はもの、刃物、…



「いま、犯人が逃走中の通り魔事件!?」


「そう、正解!」


「…え、で?」


「ん?それだけだよ?早く逃げないと、霞ちゃんも刺されちゃうよ?」


「はあ!?」



思い出せ、と言われたから私の能力に関する何かがあるのかと思ったのにそれ以上は何もなかった神様に苛立ちと殺意が湧く。


逃げようと体を動かしたいのに一向に足が動かない。あぁ、そっか私はただ使命感からこの場にいた訳じゃないんだ。

呼吸が浅くなり手先からゆっくりと血の気が引いて小刻みに震える。


本当は怖かったんだ…


すぐそこに死が近寄ってくる。死にたくないと頭の中で考えてても体は死んだかの様に冷えて動かない。



「___大丈夫ですか!?怪我は!」



真っ黒となった視界は突然前へ引っ張られ、晴天の下へと連れ出された。その衝撃で緊張が解け私の足に纏まりついていた枷が外れて、体が自由に動く。トクン、と心臓の音が聞こえ生きていると実感できた。


お礼を伝える為に顔を上げると目の前には赤い瞳をした男性が私を見つめていた。



「だ、大丈夫です!」


「なら良かった。早く避難して下さいね」



優しく手を包むように握りしめてくれる彼。じんわりと温もりを感じ、震えが落ち着いていく。何処かの神様とは遥かに違う対応で心の中で神様を睨んだ。



「おい、"要"怪我人は」


「治療済み。だけどその間に犯人に逃げられた」


「辿れないのか」


「色んなところで流れてるから…はあ、もうちょっと鍛えとけば」



逃げようとしたところで私を助けてくれた赤目の人とガラが悪そうな青髪の人が気になる話をしているのが聞こえてきた。言動を見るに2人は警察か何かなのだろう。2人はなす術が無いのか、何かを考える様に周りを見渡している。


もしかして神様が言ってた「必要とされる」ってこういう事なのかな


チラリと神様を見れば人間が逃げ惑う姿を神様らしくつまらなそうに高みの見物をしている。暫く見続ければ目が合ったがウィンクをされるだけで意味は無かった。


こんな神様を一度は信じようとした私が馬鹿みたいだ。今後神様には頼らないと心で誓った。



「…あの、」


「逃げ遅れた一般人か?早く逃げた方が、」

「犯人の位置、分かります!」



あまりの緊張に青髪の人の話を遮ってしまった。こんな人生に関わる重要な場面なんて初めてで、2人の目線に耐えきれず俯いてしまう。

きっと変な人だと思われた。こんな大事な時にふざける人だとも思われてるかもしれない。



「…もしかして君は"こちら側"なのかな」


「要、どうする。勘違いだったらこいつも俺らも許されないぞ」


「こんな状況だし、僕は自分の直感を信じるよ。君、犯人がどこにいるか教えてくれる?」


「…着いてきて下さい!」



震える足を鼓舞しながら黒いオーラが見える方向に走る。その時神様の横を通ったが何故だか笑っている様に見えた。


実は私には犯人が出している黒いオーラがずっと見えている。人混みの中だから普通の人は勿論、警察のお二人が犯人を見失うのも仕方がない事だ。私だって青い悲しみのオーラや緑のオーラが多く、黒なんて分かりやすい色じゃなきゃ混ざってしまいきっと分からなかった。

だから私なら見失わずに正しい位置を伝えられる。


道中では残穢の様な黒いオーラが残りそこでは色んな人が血を流して倒れている。目を背けたくなったが私には私の果たす役目があるため覚悟を決めて真っ直ぐと前だけを向いた。



「…ここの奥です」


「ありがとう」


「…行くぞ」



一番濃い黒いオーラに近づけばある路地裏の入り口に着いた。犯人が警察の追手に怖気付いたのか疲れたのか分からないけどきっと隠れているのだろう。だけど殺意のオーラだけは隠せてない。


感謝を伝えてくれた赤目の人を半ば強引に引っ張りながら奥へと進んだ青髪の人。あの人の態度を見る限り信用されてないのが一目瞭然だ。

それは当たり前だから悲しくも無いが、少し目線が怖かったりする。


2人が奥に進んで数分後、凄まじい音や声が聞こえた後に犯人を拘束し表へと戻ってきた。そのまま他の警察も到着し、犯人はパトカーへと乗り込んでいった。

犯人が連行される光景をみて肩に乗っていた重荷が外れ、ドッと疲れが溢れる。その数秒だけコンクリートの壁に身を任せて深呼吸を繰り返した。神様には悪いけど今日は疲れたから観光は後にして家に帰ろう。



「ちょっと君!」


「うわっ、!…あ、す、すみません!」



家路に着こうと背を向けた瞬間、後ろへ引っ張られ疲れていた体はそれに耐え切れず倒れてしまった。だがすぐ後ろには人がいたのかその人、赤目の男性が受け止めてくれて怪我はせずに済んだ。

なぜ止められたのか全く検討がつかず、黙ったままの赤目の人や此方を眺めてるだけの青髪の人を交互で見つめる。


あれ待てよ。この前ニュースで見たけど捜査に協力したら感謝状を貰える、みたいな…!!

え、私これって有名人!?


内心ワクワクしていると青髪の人が深いため息を吐き頭を抱えていた。そんな行動に疑問を抱いていると、手を再び引っ張られ互いの顔が近づき赤い瞳が視界を満たした。



「僕は君が欲しい!!!」


「…は?」

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