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10話 覗きも冤罪?!

容疑者、堀越剛(ほりこしたける)のプロフィールや当日の行動、アリバイなどをホワイトボードにまとめる。インクたっぷりのペンからは音が鳴り、背後からは椅子の劣化した音が聞こえてくる。


先程の事情聴取から聞いた事や、メモした事を取りこぼす事なく全て書き写す。一通り書き終え、見直しては追加で書いたりを繰り返して数分、ペンのキャップを締めて勢いよくホワイトボードを叩く。



「これが容疑者についてまとめたものです!読んでください!」


「…まて、本当に冤罪なのか?」



躍起になっている私とは対照的にひどく冷静な3人。今まで黙って様子を見ていてくれただけで信じてくれた訳ではなかった。

それもそうだ、私1人の考えで他の人を巻き込む事になる。それがどれだけ重大な事なのかは理解してる。もしかしたら彼が嘘をついていて起訴を遅らせようとしてるかもしれない。


それでもあの時の感情に、表情に偽りはないと信じたい。



「確証はありません、けど彼が嘘をついてるとも思えませんでした……覗き魔ですけど、」


「…霞が信じたなら僕達も信じよう」


「うんっ!どうせ暇だし、やれる事はやろう!」


「あれだけじゃ味気ないと思ってたんだ。やっと組織っぽくなったな」



逸らした目線は蓬莱さんの言葉を機に真正面へと戻る。みんなの暖かい視線が突き刺さり、嬉しさや恥ずかしさで再び目を逸らしそうになったがなんとか耐える。


一度、深呼吸をしてまたホワイトボードと向き合う。



「容疑者の堀越の能力は"透明化"です。発動条件は()()()()()()。あと因みに覗きの件についても容疑を否定してます」


「…流石に冗談だろ?」


「それが____」





「本当なんです!俺は昨日自分が透明になれるって気づいて、」


「ちょ、ちょ、もっと経緯を詳しく説明して下さい」


「経緯?…えっと、気分転換に服でも買おうと思って試着室で着てみたら凄く良かったのに値札を確認したら思ったより高くて驚きで息止めちゃったんですよ。試着室って目の前が鏡じゃないですか?そしたらなんか自分透明になってて!」



飛躍しすぎた話で頭を抱えてしまう。きっと堀越さん以外のこの空間にいる人間は全員頭を抱えているはず。

確かに私も自分の能力に気付いた時はこんな感じだったけども……



「それで、覗いたと?」


「だから覗いてないですよ!女の人が俺に気づかずに入ってきて、俺は必死に息止めたのに!」


「ならなんで全裸…?」


「いや、服まで透明にならなかったので折角ならと…」



後ろで私達を見守っていた柏木さんと目を合わせる。窃盗については冤罪だとは思う、思うけど覗きは本当に疑わしい。この話が本当だとしても信じられない話だし、嘘だとしてもよくここまで練られた話を作れたな、とは思う。


一度は信じるといった身だから彼を信じてあげたい。



「じゃあ覗きも窃盗も冤罪なんですね?」


「そうです!!やっぱり若い人の方が頭は柔らかいですよね!」



いや、かなり理解に苦しみましたが?


輝いた瞳のまま身を乗り出して近寄ってくる堀越さんにできる限り遠ざかる。背が椅子に当たると今度は柏木さんが机に手を置き、身を乗り出して私と堀越さんの間に入ってくれた。



「その話が本当だとしても被害者はいるから、起訴されるかもしれないよ」


「…そうですよね。俺は彼女の目を汚したし、彼女の下着姿を見てしまった。やっぱり罪を償うべきですよね…」



思ったよりもネガティブな堀越さんにペースを乱される。覗きの件は本人も一応は認めてる(?)はずだから良いとして、大事なのは窃盗だ。

さっきの話が本当なら事件発生当時は犯行が不可能となる。



「じゃあ本当に昨日能力を発現したっていう証拠は…」


「証拠……試着室を撮ってる監視カメラがあればそこに驚いてる俺が映るとは思います。……けど試着室を撮ってるお店なんてないですよ」


「…まあ、そうですよね」



もしその監視カメラがあったとしても「演技をしてる」なんて理由で証拠にはならない可能性が高い。普通に考えて昨日能力が発現した証拠なんて私も出せないし、誰も出せないと思う。



「…どうして能力の発動条件が()()()()()()って分かったの?」


「俺、昔から驚くと息を止める癖があるんですよ。だから透明になった時はそれかなってすぐピンときて……でも他にも試したんですよ!値札見るとか、瞬きするとか!」


「そっか。ありがとう」



机に置いてあった柏木さんの手が堀越さんの服の袖に触れてから離れる。柏木さんの様子を伺いながら次の質問を考えていると、少しして柏木さんの顔が耳元に近づいてきた



「彼、嘘はついてないよ」



耳元から離れた口元は薄く笑っていて、それが嘘のように感じられた。





「____と、いう事で」


「すっっごい、嘘みたいな話だねぇ」


「堀越を信じるとは言ったが…」


「全部嘘に聞こえるな」


「大丈夫、俺の能力で視たけど嘘はついてないよ」



今まで後方で静かに腕組みをしていた柏木さんが突然口を開いた。その言葉に私以外の3人は納得し始めたが、私だけは理解が及ばない。



「柏木さんの能力って…?」


「そんなに俺の事知りたいの?」


「いや、知りたいっていうか、」


「俺の能力はね、"物の記憶を視る事"ができるんだ」


「記憶…」



その瞬間、柏木さんが堀越さんの服に触れた場面を思い出した。普通なら触れるような距離ではなかったから何処か気になるような瞬間ではあった。


確かあの時着ていた服は現場に残されていた堀越さんの洋服だ。



「服の記憶を視てみたら運良く彼の証言と同じ記憶が視えたんだ」


「なら、覗きの件は一旦解決だな。問題は窃盗か…」



柏木さんの一言で一瞬にして解決してしまい、呆気に取られる。呆気に、というか関心に近い気もするけど


やっぱり能力者(シグナ)は凄いんだ…

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