第9話 ギルドマスターの呼び出し
火の山岳のボスを倒した次の日、ディメンジョンボックスを再作成したあとギルドの納品窓口で昨日の魔石を納品し、ついでに手に入ったダガーも見てもらう。
これは、ブレイズダガーといって、攻撃にすべて火属性が付与され防御時に火属性ダメージを低減する効果があるとのことだ。
僕は火属性攻撃をもってないからこれは使えそうだ。
しかも2本。
……いつもならすぐに納品書をくれるのに、時間がかかっているな。
「クラウスさん、お手間ですが、ギルドマスターの部屋までお越し願えませんか?」
エリアさんから声を掛けられる。
わざわざ納品所にまで来て、それでもってギルマスの部屋に来いって何かバレたんだろうか。
ああ、逃げ出したい。
エリアさんの丁寧な物言いも、今回ばかりは死の宣告にしか聞こえない……。
「おう、お前がクラウスか。俺はギルドマスターのヴェインだ。顔が硬いぞ。聞きたいことがあるだけだ、そう緊張しなくてもいいぞ」
ギルマスに緊張するな、と言われてもそれは無理だ。
今ギルマスの部屋には、ギルマス、サブマス、エリアさん、そして僕の4人がいる。
やっぱり逃げたいけど、元Aランク冒険者のギルマスがいるから多分無理だ。
まあ、そもそも逃げるあてがないんだけども。
「早速だが、お前が納品にきた魔石は、自分で倒したものか? それとも誰かにもらったりたまたま拾ったものか?」
「自分で倒したボスの魔石です」
「どこのダンジョンのボスだ?」
「火の山岳です。ファイアナイトでなかったので、レアボスだったと思います」
「ところがな、お前が持ってきた魔石はB級ボスのブレイズナイトのものだ。しかも2つ。正直な、E級のお前がB級ボスを倒したのは信じられないんだが。もう一度聞くが、盗んだりしたものじゃないな?」
「違います」
あのボスB級だったのか。
攻撃が当たれば一撃だったから、そこまでランクが高いと思わなかったな。
よく考えれば高い腕力がさらに【弱者の意地】で底上げされてたから一撃でも当然か。
魔法もバンバン撃ってきたし、やっぱり強かったんだ。
「ホントか? 嘘をつくと身のためにならんぞ。今ならまだ若いし、引き返せるぞ」
若干ギルマスの声が荒くなる。
僕は嘘をついていないが、理由は話しづらい。
と、サブマスが助け舟を出してくれた。
「ヴェイン殿、それはまあよいではありませんか。固有スキルとボスの相性が合えば格上でも倒すことが可能な場合もあるでしょう。それよりもクラウス君、ダンジョンであったことを教えてもらえないか」
「…………それは…………」
「言いにくいこともあるかもしれないが、教えてほしい。E級の火の山岳でB級のボスが出現するとなれば、知らずに挑戦して命を落とす冒険者が出るかもしれない。わかってくれるね?」
「……わかりました。僕の体験したことをお話しします。火の山岳はまだ2回目だったのですが、4階の転移陣から進み始めて、6階に到着しました。6階に着いてしばらく敵が出なかったのですが、急に辺りが真っ白くなりまして、虹色のスライムが出てきたんです。で、僕はそれを倒しました」
僕は一息つく。
「その虹色のスライムを倒して以降は、普通に魔物が現れていました。ゴブリンメイジとか火トカゲとか通常出現する魔物です。それで7階に到着して、ボス部屋に入ったら、扉が閉まってボス2体が現れました。で、ボスを倒したら扉が開いてました」
「よく話してくれた。他に何か気づいた点はあるか?」
「ありません。ですが、1つだけ。多分調べればわかると思うのでお話ししますが、虹色のスライムを倒したあと、【弱者の意地】というスキルが生えてきました。効果は、自分よりレベルが高い相手と戦う場合のみ、自分のレベルが低ければ低いほどHP、MP以外の全ステータスが上昇するというものです」
「なるほど。それでB級のブレイズナイトを倒せたというわけか。疑ってすまんな」
「いえ、納得していただけてよかったです」
「うむ。さっき聞いたスキルも含めて、この部屋での会話は、調査に必要なこと以外は秘密にしておく。もちろん出所も伏せる。じゃああとはギルドの仕事だな。B級ボスが出たことは口外するなよ」
「わかりました」
◇◇◇
……朝から疲れた。
納品するだけのはずだったのにな。
魔石の報酬を受け取って自分の部屋に帰ってきてから僕は大きくため息をついた。
【弱者の意地】について話してしまったが、仕方ないだろう。
隠したいのは【時空魔法】のほうだ。
さすがに2つもスキルが生えてきた、とは想像できないだろうからこれ以上の追及はないはずだ。
とりあえずステータスを確認しておこう。
LV:42
HP:2789/2789
MP:10/100
腕力:817
体力:344
速さ:211
器用:439
知性:94
精神:76
スキル
【生活魔法】【中級剣術Ⅲ】
【初級水魔法Ⅰ】【時空魔法Ⅰ】
【取得経験値半減】【最大HP半減】
【腕力上昇Ⅴ】【体力半減】
【速さ上昇Ⅴ】【知性半減】
【精神半減】【器用上昇Ⅲ】
【MP回復力半減】
【消費MP軽減力半減】
【スキル成長速度半減】
【ドロップ率半減】【全属性耐性半減】
【状態異常耐性半減】
【探知Ⅱ】【隠蔽Ⅰ】
【トラップシーカーⅢ】【初級錬金術Ⅰ】
【毒耐性Ⅰ】【弱者の意地】
固有スキル
【交換Ⅱ】
レベルが29も上がって42になった。
あの闘いはホントに死ぬかと思ったから、これくらいレベルが上がらないと割りに合わない。
直前に虹色のスライムに【時空魔法】をもらってなかったら死んでたよ。
【取得経験値半減】がなければもっとレベルが上がったのに、と思うけどその分【弱者の意地】の効果が下がるので悩ましいところだ。
◇◇◇
クラウスがギルドマスターに呼ばれた数日後。
冒険者ギルドメイベル支部のサブマスターの部屋にて、エリアとマリーが話し合っていた。
「エリアリア様、ギルド本部からの返事がございました」
「ええ、どうだったの?」
「はい、まず虹色のスライムについてですが、現存する記録にその存在は確認されなかったとのことです。代わりに、70年ほど前の記録で類似の魔物の記述がありました。ゴールデンスライムです。C級ダンジョンにおいて、ソロの冒険者が遭遇し、倒した後スキルを取得していたとあります。スキルは精神を50%上昇させる【メンタルⅤ】だったようです」
「クラウス君の場合と似ているわね」
「はい。まだ共通点があります。その冒険者は、数はわかりませんがマイナススキルを所持していました。また、その後に挑んだボスはランクが一つ上で、部屋の扉は閉められてしまったと」
「クラウス君がたまたま条件を満たしていたから上位のボスが出現した、ということね。ダンジョン自体に何かあったというわけではなかったのね」
「おそらく。ですので、ヴェイン殿には今回の件について、特に対策をとる必要はないと報告します」
「それでかまわないと思うわ」
「次は、【弱者の意地】についてですが、効果は(100-自分のLV)%のステータス上昇でした」
「マリー、E級のステータスが上昇したとしてB級のボスに勝てるのかしら?」
「仮にレベルが20だったとして、80%ステータスが上昇した程度でB級に勝つのは無理です。せめて300%はほしいところです」
「となると、クラウス君のステータスはE級ではないということね」
「その可能性が極めて高いかと思われます。火属性のブレイズナイトを倒しているので、水属性攻撃に特化した固有スキルという可能性もなくはないですが……」
「いずれにしても強力な固有スキルを持っているのは間違いなさそうね」
「エリアリア様。気になるのでしたら彼を囲って調べてみてはいかがでしょうか?」
「……それは無理みたい。私のスキルがそれをすべきでないと強い警告を発しているわ。時期が来るまでは様子を見ましょう」
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