第29話 死者の祠
新しいパーティで向かうのはC級ダンジョンの『死者の祠』だ。
全20階層で、5、10、15、20階に転移陣がある。
ウォーレンさんとサレンさんが抜けた後、トルテさんとミストラルさんはこの死者の祠の浅い階層を攻略していたそうだ。
たった2人でしかも前衛なしで、と思って聞いてみたら、ミストラルさんがその理由をこれから教えてくれるという。
ダンジョンに入って出てきたのは、ゾンビだ。
人型をしたアンデッドで、動きは遅く近距離攻撃しか攻撃手段がないが、腕力は強い。
弱点は火、光属性攻撃。
もっさりと近付こうとするゾンビを確認したミストラルさんは弓を構える。
が、矢を持っていない。
と思ったら、光り輝く矢がミストラルさんの手元に現れて、その矢を番えてゾンビに向けて発射する。
2本目の矢が当たったところで、ゾンビは光の粒子となり消えていった。
「私の固有スキルですが、光属性の矢を生成できます。MPをほとんど消費しません。魔法と違って詠唱も要りませんし、このダンジョンは光属性弱点の敵しかいませんから、私にちょうどいいのです」
ウォーレンさん達とパーティを組んでいたとき、『たまに光る矢が飛んでいるなあ』と思っていたがやっぱり固有スキルだったのか。
固有スキルに関しては無闇に追及しないのがマナーなので僕も聞かなかったけど、教えてくれたってことはそれなりに信頼してくれているのだろうか。
とにかく、遠距離攻撃ができてしかも矢の補充が不要。
MPもほとんど消費せず、光属性付き。
確かにこのダンジョン向きだ。
前衛の僕が加わって、安定感を増して進んでいく。
C級ダンジョンでもまだ僕なら雑魚は一撃で倒せる。
というか、ほとんど【弱者の意地】が発動しているからまだまだ余裕だ。
このためにあえて【取得経験値半減】だけは残しているくらいだし。
他に出てくるダークバットや、デッドゴブリンなどは毒攻撃持ちだが、気をつけるのはそれくらいだ。
スケルトンもいるが、たいして強くない。
少し厄介なのがゴーストだ。
物理攻撃のみだとダメージを与えられず、何かの属性がついた攻撃でないとダメージを与えられない。
しかもHPを吸い取るドレインタッチや毒を付与するポイズンタッチも使う。
その上、消えたと思ったら突然隊列のど真ん中に現れたりする。
僕のブレイズダガーとミストラルさんの光の矢で対応していくが、接近されてしまったミストラルさんが手に掴んだ光の矢をそのままゴーストに突き刺して倒していた。
意外と武闘派なのかもしれない。
トルテさんは出番がないので、スキルレベルが上がるように適当な魔法をぶっ放したり、アンチドートで毒を回復してもらっている。
ここでも僕はわざと毒攻撃を受けて毒耐性の獲得を目指していた。
すると3階に到達してから、【毒耐性Ⅰ】が生えてきた。
おそらく、以前持っていたスキルなら【交換】でなくなっても生えやすいのではないだろうか。
以前僕がスキルを交換した人たちもすぐに生えてきているかもしれない。
生きていればだけど。
◇◇◇
無事5階に着いて、少し休憩だ。
実は僕はあまり休憩の必要がなかったりする。
ここにくるまで【探知】【隠蔽】【トラップシーカー】を使い続けてきたが、【攻撃時MP回復Ⅲ】のおかげで攻撃するたびMPが回復するので、あまり減らないのだ。
瞬速連斬が全部当たれば一気に12%回復するので、少しだがお釣りがくるくらいだ。
このままだとMPがもったいないけど、どうしようと考えて思いついたのが、セイバー系魔法だ。
雷系のサンダーセイバーなら消費MPも多いが、雷魔法を使ってもスキルレベルは上がらないので(水と風のうち低いスキルレベルにより決まるから)、水魔法のアクアセイバーをメタルブレードにかけることにした。
「……水冷の力よ、我とともに在らん、アクアセイバー」
「どうしたんですか、クラウスさん。ボスはまだまだ先ですよ」
セイバー系は持続時間があんまり長くないし、消費も多いので強い雑魚敵か主にボス戦向けに使われる。
「MPがまだあるので、適当に消費しておこうと思いまして」
「中級の水魔法も使えるなんて聞いてないの!」
トルテさんが若干怒っているように見える。
「クラウスさん、差し支えない範囲でかまいませんので、クラウスさんが今できることを教えてもらえませんか?」
まあパーティを組んでいるんだし、ある程度は言わないといけないよね。
「いったんパーティを離れた後、中級の盾術、水魔法、風魔法、雷魔法、光魔法、MP回復力上昇、沈黙耐性、麻痺耐性のスキルを取得しています」
「あれから2か月も経っていないと思うのですが、いったい…… 伝説の【英雄】か【勇者】の固有スキルでもあるのでしょうか…… これは間違いなく将来のSランク候補ですね。今のうちにお近づきになっておきましょうか」
「そんなことより、どうやって短い期間で魔法スキルのレベルを上げたのか、教えるの!」
「レベルを上げて魔法を使い続けるということくらいしかわかりません。あ、あと毎日寝る前に瞑想しています」
僕の固有スキルに触れられたくないので、こんな回答になるが仕方ない。
ていうか、仮にそれを言ったとしてもトルテさんは真似できないから告げる意味もない。
「そんな基礎訓練トルテもしているの! クラウスのレベルはいくつなの?」
「多分50弱くらいです。というか、トルテさんは四属性全てを使えるんですよね? 僕より魔法について詳しいと思うのですが……」
「トルテさん、落ち着いて下さい。おそらくクラウスさんの固有スキルが関係していそうです。これ以上の追及はしないほうがよろしいかと思われます」
さすがのミストラルさん。
常識的だ。
まあ、聞きたくなる気持ちはわからなくはない。
「……わかったの。固有スキルなら真似できない可能性も高いの」
「トルテさん、随分と魔法に熱心なんですね」
「いつか宮廷魔術師になりたいの」
人にはいろいろ事情があるものだ。
僕もこれ以上は聞かないことにしよう。
◇◇◇
というわけで、途中でアクアセイバーをかけなおすのを繰り返しながら10階に到達。
トルテさんはあれから魔法を繰り返し使うようになり、無事中級魔法にレベルアップした。
今日は少し早いけどこれで終わりにすることにした。
ギルドで今日の魔石とドロップ品を買い取ってもらう。
【ドロップ率半減】がなくなったので、いつもよりドロップ品が多い気がする。
◇◇◇
受付でカードの更新が終わった後、ヴェインさんから声を掛けられた。
「クラウス、ちょっといいか。頼みたいことがあるんだ」
「ギルドマスター、どうしたんですか? パーティで伺ってもよいでしょうか?」
「かまわんぞ。てか、パーティ組んだんだな」
「ええ、いろいろありまして。ミストラルさん、トルテさん、いっしょに話を聞いてもらえますか?」
「もちろんです」
「もちろんなの」
「そうか。では俺の部屋に来てくれ」
ヴェインさんに連れられて3人でギルマスの部屋に入る。
ミストラルさんとトルテさんのことをヴェインさんに簡単に紹介して、話に入る。
「クラウス、前に受けた調査依頼あっただろ。その結果、メイベルの都市常駐部隊がブラッドグリズリーを一斉討伐することが決まってな。で、ギルドからB級パーティを何組か出すよう言われてて、お前たちにもお願いしたい」
「僕はC級ですが……」
「そうなんだが、今はメイベルにB級パーティがあまりいなくてな。『暁の戦士団』もいなくなっちまったし。数が足りなくて、軍がC級のお前たちを出せと言ってきた」
「ギルドマスター、一番数が多いC級の中でなぜ私たちなのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
ミストラルさんが確認する。
「軍もC級全てを調べるほど暇ではないからな、事前の調査依頼を受けた者だけ調べて、クラウスが目をつけられたのさ。調査になかったはずの討伐もこなしていたしな」
「軍からということは、事実上強制ですね」
「おお、わかってるじゃねえか。ギルドといっても、実態は軍の下部組織扱いでな、俺も逆らえない」
「逆らうとどうなるの?」
「嬢ちゃん、仮定の話になるが、俺が逆らうと命令違反でクビだ。ギルドマスターは形式上軍属だからな。嬢ちゃんたちなら、ギルドでの買い取り価格に影響が出るし、非行の記録として残るぜ。実際にやらかした奴を見たことはないが」
何それこわい。
「命の危険はないさ。あくまで部隊の補助だ。雑用と、あるとしても討ち漏らしのお片づけだ。報酬は安いが、それは我慢してくれ」
「わかりました。いつ参加すればいいんですか?」
「すまんな、クラウス。3日後だ。討伐の期間は5日間の予定となっている」
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