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1日目(後編) 怠惰の罪とモヤモヤ

後編です!

 なめていた。出発してからかれこれ3時間ほど、私は山を1つ登り、2つ目の山を登ろうとしている。いや、つらい旅になることは十分に覚悟しているつもりではあった。しかしたかが一つ県境を跨ぐだけ、つらいといっても中学生のころにやったマラソン大会程度であろうと高をくくっていた。その程度の道のりがまさかここまでつらいものになるとは思ってもいなかった。

 初めのころはあれだけ良い香りだった自然の香りも、今では口と鼻いっぱいに滲む血の味のせいで何も感じなくなり、あれだけ力強くペダルを踏んでいた足はもうなんというか、生まれたての小鹿のようにプルプルしている。私はかれこれ10年以上はしっかりとした運動をしていない。最後に運動といえる運動をしたのは1年前にあるyoutuberから影響を受けて散歩をしていたくらいだ。

 「少し休もう。」私は近くにあったスーパーに自転車を停めて水と塩分を取れるものを買おうと店に入った瞬間に体に内包されていた疲れがすぅーと音を立てて消えていくような気がした。クーラーの効いた場所がこんなにも気持ちいいとは。私は今までの生活がどれだけ満たされていたかを確認し、それと同時にそんな状況に甘えて何もしてこなかった自分を少しだけ恥じた。そんなこと、今更考えたところで家に戻れるわけでもにもならないのだが。ましてやまだ家を出て1日目だ。今帰ったところで門前払いされることはまず間違いない。今から家に帰ったならば「すいませんがどなたでしょうか。」と父の間抜けな演技が聞けることだろう。私はそんな妄想を鼻で笑い、これから好きな飲み物ランキング第1位になるであろう水を探した。こいつは旅の相棒として素晴らしい活躍をしてくれる。そういえば道中水を飲んだ時、あまりのぬるさに太陽を睨みつけたことを思い出した。どうにかして冷えた水が飲めないものか…とりあえずスマホで調べてみると、クーラーボックスというものが出てきた。なんとこいつは中に氷などを入れることで中のものを冷やしたままの状態に保てるらしいのだ。(素晴らしい‼︎)

 私は水を買った後、早速クーラーボックスを購入する為に近くにあったホームセンターへと向かった。1万円は消える覚悟をしていたが意外と安かったので少しいいものを買うことにした。ついでに自転車を改造するのに使っていた紐も買い足した。外に出る前に目的地の設定とSNSを確認した。

 明日は熊本へ向かう予定なのでできれば県境から近いところが良い。山を1つ越えた先に(えびの市)があるらしい。熊本の県境とも近いので今日はそこを目指すことにした。

 SNSに関しては2ちゃんねるの反応が良かった。プロニートが日本横断の後に自殺をしようとかいう馬鹿げた目標に皆が面白がっているようだった。行き先を書き込むと地元民がいるらしくその人の家に泊めてもらえることになった。何はともあれ宿泊先が見つかり旅は上々の始まりを見せた。

 そこから大体5時間が経ち、えびの市に着いた。時刻は夜の7時を回ろうとしていた。駅の方へ行ってみるとこちらに走ってくる、私と同い年くらいの公務員っぽい私服をした男が1人やって来た。名前は小五郎というらしく、案の定公務員だった。軽く挨拶を交わした後、家にお邪魔した。

 家に着くと小五郎さんは風呂とご飯をくれた。味はまぁ男らしいガツンと系で嫌いではなかった。しかし風呂はありがたい。8時間は続けて自転車を漕いでいたのでわかりやすく汚れていた。ここに泊まれなければ銭湯に行こうとも考えていたくらいだ。

 風呂から上がり、ひと通り感謝の言葉を述べた後、彼から質問を受けた。「なぜこんなことを始めたのか、どこで最初のつまずきがあったか。」など風俗店のピロトークのような内容で面白みはとくになかった。私は答えるだけ質問に答えてその日は眠りについた。

 次の日、私は小五郎さんのアラームで目を覚ました。寝心地は最高だった。まぁ小石が悪かったといえば話はそこで終わりなのだが、今まで当たり前だったことが一度無くなったからか床にもの凄いありがたみを感じた。彼もこれから仕事らしく彼が支度をするのと同時にに私も支度をして家を出ようとした時、小五郎さんに呼び止められた。彼は「僕は今まで自分に自信が持てなかった。でも君の話を聞いて恵まれた環境とは何かを改めて知れた良い機会になった。これはその気持ちだ。」と言って運動用の服と水とおにぎり、そして2万円をくれた。何やら馬鹿にされたような気もしたがそれ以上に必要なものを一式くれたのでとりあえず感謝をして自転車を走らせた。

 ムズムズモヤモヤするような気分だが不思議と悪い気はしなかった。

資金 残り11万円

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