1.ご卒業おめでとうござまない
今年の目標は投稿頻度を高めることです。
去年の自分を戒め、新たに脱皮できる年にしたいと思います。
巳年だけに。
皮という皮を剥いていきたいと思います。
どうぞよろしく。
──夢を見ている気がする。
誰もいない町を四足歩行で歩く『ぼく』。
小さくてかわいいぼくは黒猫にゃん。
自由気ままに目的も無く車道の真ん中なんかをとことこ渡ったりする。
ぼくの家の前を通り過ぎる。母さんも父さんもいない。帰る必要はない。
幼稚園で仲良くしていた女の子の家の前を通り過ぎる。小学校が違ってそれ以来会っていないし、下の名前も忘れてしまった。
小学生の時毎日のように遊んだ公園に立ち寄る。中学に上がってからもたまに遊んだっけ。昔好きだった遊具はいつの間にか無くなっていた。
特に思い入れの無い橋を渡る。自宅から徒歩10分。半年に一回通るか通らないかの、まあどうでもいい橋だ。橋じゃなくて巨大たくあんだったら興味が湧いたかもしれない。子供の頃たくあん好きだったな。最近は好んで食べないけど。どうだっていいか。
何もない町を歩いて何時間経ったのだろう。『ぼく』は歩きすぎていつの間にか月まで辿り着いて、ようやく第一村人と遭遇した。
カラスみたいなボクとは正反対の真っ白なキティちゃん。
神秘を感じるかわいさだ。
俺はその子に近づいて、頭を撫でる。
彼女ははにかんで、青い瞳を俺に合わせる。
なんの意味性があるのか、よく分からない夢らしい夢だった。
〇 〇 〇
小鳥の囀ずりが冷えた空気から気持ちよく聞こえてきて、その音に意識を呼び起こされ、自然と目が覚めてしまった。
スマホを手探りで探して電源を入れると、画面には普段よりも少し早い時間が映されてもう少し寝ていようかと思ったが、なんとなく寝付きが良かったようで意識は完全覚醒へと進んでいた。
良い朝、とでも言うのだろうか。
おはよう世界。グッドモーニングマイフューチャー。
何か楽しい夢でも見ていたのだろうか。もう爆発的に気分が良くて今ジャンプをしたら天井を突き破ってしまいそうだ。
冷静に考えてみたら首の骨が折れるかなと考えつつ、優雅に朝食を嗜もうとするべく悠長に身を起こした。
肩からズレ落ちる寝間着の襟。
そのままベッドから立ち上がるとズボンとパンツが滑り落ちていった。ちなみにパンツはトランクスを愛用している。
それはともかく、朝食を食べに行くべくパンツとズボンを履き直そうとする。
「……ん?」
疑問を抱いて思わず撥音を出すと、喉と耳あたりに違和感を感じた。
そんなことよりも、パンツが腰まで持ってきてもまたずるりと落ちてしまう。それになんだかシャツの裾が妙に長いし、履き直そうとするとトランクスの生地の固さが不快に感じる。
寝ぼけながらシャツの裾を捲って下半身に目を落とすと、股間にいるはずの産まれたときから一緒にいたムスコがいなくなっていた。
いない。無い。無。空虚。Hollow。
思春期になってから特にお世話になっていたムスコがいない。ちなみにムスコというのは、いわゆる息子でない方のムスコだが、息子でもある。
ここいらで自己紹介をしておこう。
俺は名前は春日星凪、16歳。4月14日生まれの牡羊座で身長は174センチ、体重56キロ、血液型AB型の普通の男子高校生だ。
ちなみに好きな色は赤、好きな食べ物はチョコレート、好きな女子のタイプはおっぱいが大きくて清楚で可愛い系だ。残念ながら彼女はまだいない。
高校で所属している部活は帰宅部で、使用するのは男子トイレで、同性は男で、異性は女。
そう、俺は男だ。男のはずだ。
一度遠くを見て現実逃避をしてから、改めて股間を見る。
無い。無。虚しい。ツルツル。
もう一度目を離し、微妙に小さく尖りが無い手指で目を擦ってから、もう一度股間を見る。
無い。平面だ。いや、細かく言うなら平面ではないが、昨日まであったはずの一本のヤシの木は無くなっている。
「あれ……? 俺のムスコがいない……?」
喉に違和感があるが今一度置いておいて、さっきまで寝ていたベッドに視線を移す。
案の定ナニも落ちていない。落ちていたらグロテスクで見たくなかったから有り難い。
まあ、何となく察しが付いてきているが、今一度情報を整理しよう。
軽い癖ッ毛に悩まされていた俺の黒髪はなんということでしょう。絹のようにさらさらと腰まで伸びていて、黒ではなく金髪で毛先が青い綺麗なグラデーションになっているではありませんか。
174センチあったはずの身長はなんということでしょう。今は顔ひとつ分ほど小さく、自分の部屋が違う世界のように感じます。
おまけに細マッチョを自称していた身体は、細くしなやかに、大福のように白くちぎりパンのようにもちもちしているではありませんか。
漢だったビフォーに比べてアフターは女の子のような体だが、見る限り胸には特に違和感を感じない。
IQ500の頭で整理するに、これはいわゆる「取り敢えず触って確認しよう」、通称TSというやつだと思われる。
偉人の言葉通りにペタリと胸に触れる。普段からやたらに触る部位ではないのだが、以前よりほんの少しだけ柔らかくなっただろうか。
揉んでみる。
「……」
悲しくなった。
期待していたわけではないが、なんかこう、虚しい。
いや、あるにはあるのだ。
ただ、虚しい。
「ま、女の子になっちゃったって事で、しょうがないか」
なっちゃったもんは仕方ないので、取り敢えず当初の目的だった朝食を食べに行こう。
俺はそう意気込んで、ずり落ちたズボン及びパンツに足を引っ掻けて転びつつ、背伸びをした。
前に投稿していた物語なのですが、少し修正しながらまた改めて投稿していこうと思います。
楽しんでくれたら嬉しいです。
よろしくぴっ♪