『魔導士ギルド』と『今を生きる魔導士たち』
遂にメインキャラクターたちが登場していきます。
ここは、大魔法都市国エンディミオン。
そこに住むとある少年の家。
「かつて神々が世界を滅ぼそうとした時にその身を賭して戦った大魔導士かぁ~。やっぱかっこいいな~」
片手に持つ手帳をパタンと閉じながら自身の上着の胸ポケットへとしまう少年。
その髪色と同じように真っ赤な上着を着直すように整えて外へと向かう。
「んん~!今日もいい天気だなー!」
家から出た少年は体を大きく伸ばした。
この少年、『グレン・アルバノクス』16歳。
いつか『英雄エミリア』を超える最強の魔導士になるという夢を持っている。
「今日もいい天気だなー!じゃないでしょうがあああ!!!」
「へぶうううう!!!!」
外に出たばかりのグレンに見事な飛び蹴りを決めたこの少女、『アイリス・マクベス』16歳。
勝気な性格だが根は優しい女の子。
「いってえなぁ!!こんにゃろう!!」
「うっさい!あんたが集合時間になってもちっともギルドに来ないからこうやって迎えに来てあげたんでしょ!!」
「迎えに来る時は普通飛び蹴りなんてしねえんだよ!!」
「ま、まあまあ二人とも落ち着いて…」
グレンとアイリスの喧嘩をなんとか止めようとするこの男、『フロイ・エスカルド』18歳。
気が弱そうに見えるが冷静で優しく、グレンたちにとって頼りになる兄のような存在。
「グレンも悪気があって遅れたわけじゃないだろうし…」
「いやあいつもの癖でご先祖様の手帳読んでたらついつい読みふけっちまって」
「はぁ!?あんたまたあれ読んでたの!?もう何百回目よ!!」
「何百回でも読むに決まってんだろ!?何せあの英雄の雄姿が記録されてる手帳なんだからよ!」
「はぁ…呆れた…。とにかくさっさとギルドに行くわよ。フィオネが依頼を選んでくれてるから」
そう言いアイリスはさっさと歩き出した。
「ったく…。アイツもうちょっと女の子らしくできねえのかよ…」
「それ…聞かれたらまた飛び蹴り食らうよグレン…」
そう言いながらグレンとフロイもアイリスに続きギルドへと向かった。
ここは、魔導士ギルド『ラビリンス』
魔導士たちにとっては様々な仕事を受ける集会所でもあり大きな酒場でもある。
このエンディミオンの中でもトップクラスの規模と活気を誇る大型ギルドなのである。
「こんにちわー」
先頭を歩いていたアイリスがギルドの中に入り続いてグレンとフロイが入っていく。
「お!アイリスじゃねえか!今日も仕事か?」
「そうよ」
「たまには俺らとも仕事に行ってくれよなあ」
「はいはいその内ね」
「ギャハハハハ!!おいグレンなんだよその顔!またアイリスに飛び蹴りでも食らったのか~??」
「あれだろ!ちょっと魔がさしてアイリスのスカートでも捲った結果だろ!」
「ちげえしうっせえな!飲んだくれども!真昼間から酒ばっか飲みやがって!ちょっとは仕事に行け!」
「ばっかやろう!今朝仕事終わらせてきて今飲んでんだろうがよ!」
「そうだそうだ!仕事後の一杯は最高だぞ~!」
「そういうセリフを言う時間は絶対に今じゃねえんだよ…」
このように、昼夜問わず賑やかなギルドである。
「フィオネ、待たせちゃってごめんね?」
「あ、アイリスちゃん!」
クエストボードの前にいる一人の少女にアイリスが話しかける。
この少女、『フィオネ・シルベスター』16歳。
誰にでも分け隔てなく接することができる優しい心の持ち主の女の子。
アイリスとは幼馴染である。
「グレン君とフロイさんは?」
「あそこで飲んだくれどもに絡まれてるわよ」
「あはは…。あの光景ももう見慣れたものだね…」
フィオネは苦笑いしながらクエストボードへと向き直る。
魔導士ギルドに所属する魔導士たちは依頼人から依頼を受け、それを遂行することによって報酬を得て生活している。
ちょっとした落とし物を探す依頼から国外に出向き魔獣の退治をするなど依頼の種類は様々である。
「何かいい仕事は見つかった?」
「う~ん…報酬を4人で分けることを考えると残ってる仕事はどれも物足りないかも…」
「完全にあのバカが遅刻したせいね」
「ま、まあまあ…。そんなことだってあるし…それにほら!この依頼だったらどうかな?いつもの仕事よりは報酬少ないけど」
そう言いながらフィオネは一枚の依頼書をアイリスに渡す。
「ん~??全焼したココヤキ村での原因調査の依頼?随分と物騒な話ね…って依頼者は魔法聖協会!?」
『魔法聖協会』とはこのエンディミオンを統治する最高権力団体。
初代女王エミリアが亡き後、エンディミオンは一人の王ではなく組織としてこの国をコントロールすることを決め国内から優秀な魔導士たちのみを集め、生まれた団体。
それが、魔法聖協会である。
「うん、詳しい出火原因の調査を依頼したいんだって。いくらココヤキ村が自然に囲まれた村だったとしてもちょっとした炎で村全体が燃えるのは不自然な話だから…」
「……事故じゃなくて誰かが意図的に起こした火災ってこと…?」
「…協会はそう睨んでるんだと思う…」
「まあ、依頼者なんて誰でもいいんだけどね私は…。報酬は20万Gね。いいんじゃない?私は賛成よ。」
「じゃあ二人にも聞いてみよっか!」
「おう、いいんじゃねえか、これで」
「うん。僕も異論はないよ」
「これで決まりね、早速出発するわよ」
「うん!」
4人は出発の為ギルドにある受付窓口へと向かった。
「あ!4人とも!今日もお仕事?」
笑顔で4人を迎えたこの女性、ギルドの看板娘『ラキア・ミルコス』17歳。
いつも明るくこのラビリンスでは超人気なアイドル的存在。
密かにファンクラブがあるとかないとか…。
「ラキア、この仕事に行きたいんだけど」
年長者であるフロイが依頼書をラキアに渡す。
「え~っと…。ココヤキ村での調査ね。了解!この依頼を受理しました!」
そう言いながらラキアは依頼書にハンコを押した。
「よし!じゃあ行こうか!」
「おう!」「ええ!」「うん!」
エンディミオンには東西南北に一つずつ門が存在する。
ココヤキ村は北の門からひたすらまっすぐ進んだところに位置している。
しかし、今やエンディミオンの国土は魔法界一の広さを誇る。
ギルドから門へ移動するだけでもかなりの距離があるのだ。
それを解決するために街にはいくつかの転移魔法エリアが存在する。
ここ、魔導士ギルドラビリンスも転移魔法エリアが用意されておりそこに入り頭の中で東西南北どこの門に行きたいかをイメージすればすぐに移動することができる。
もちろん、門からギルドに帰ることも可能。
万が一にも悪用されない為に、それぞれの門の転移エリアには24時間交代で警備する魔導士がいるのだ。
そしてフロイたち一行は北の門から出発しココヤキ村へと向かっていた。
歩くこと数時間。
一行はココヤキ村へと到着した。
「ひどい有様ね…」
「うん…」
そこにあったのはもはや村とは呼べない無残な姿となったココヤキ村の跡地。
木造の民家は全てが焼け落ちており無事であるのが御神木として大切にされてきた一本の大木のみ。
その悲惨さがこの村に起きた火事の規模の大きさを物語っていた。
そのあまりの光景にアイリスとフィオネは胸が締め付けられるような気持ちになった。
フロイとグレンも言葉には出さないだけであまりにも悲惨な姿へとなり果てた村を見て顔を歪ませていた。
「村の人たちは…助からなかったの…?」
「聞いた話によると一人だけ行方不明で他は全員亡くなったらしいわ…」
「……そっか…」
「悲しむ気持ちは分かるけど、今は仕事だ。村に入って調べてみよう」
フロイがそう言い村の中へと入っていく。
グレンもその後に続き、アイリスとフィオネも覚悟を決めたように歩き出した。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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