『みんなでテーマパーク!』と『誰かの声』
ここは魔導士ギルド『ラビリンス』マスター、『ジーク・フロデロイド』の執務室。
そこにはレオ、グレン、フロイ、アイリス、フィオネの5人がジークの呼びかけにより集まっていた。
そしてその5人を集めた理由とは…。
「「テーマパーク??」」
「そうだ。エンディミオン1の規模を誇る大人気テーマパーク『ファンタジーランド』。
ちょうど5人分の入場券が手に入ったから折角だしお前らで行ってこい」
そう言って懐から5枚のチケットを取り出すジーク。
「ちょっ…ちょっと待ってくださいマスター。今の僕たちにはそんなことをしている暇は…」
カルト村での戦いで結果的にはクエストをクリアしたもののフロイを始めとした一行はそれぞれ自らの力不足を感じていた。
そのため国に戻ってからの数日は各々更なるレベルアップの為に自身の得意を伸ばす、または不得意を克服するための訓練に明け暮れていた。
そんな時にいきなりジークに呼ばれテーマパークのチケットを渡されても5人は素直にそれを受け取ることができなかった。
「馬鹿野郎。こんな時だからこそだろうが。お前さんら5人、最近無理をしすぎだ。
レベルアップしたい気持ちは分かるが今のままじゃ確実に体の方が先に限界を迎える。
一流の魔導士っていうのは適度に休息を取ってるもんだ」
そう言って半ば強引に5枚のチケットをフロイに渡すジーク。
「しかし…」
「いいんじゃない?」
未だ食い下がろうとするフロイに声をかけたのはアイリスだった。
「確かにここ最近私たち結構無理してたし。
気分転換がてらにみんなで一緒に行くのはいい案だと思うわ」
「うん!私も賛成!」
「俺もそのテーマパークっていうのに興味がある」
アイリスに続くようにフィオネとレオも賛成する。
それを見たフロイは「確かにそっか」と呟き一枚ずつチケットを渡していく。
そして最後の一枚をグレンに渡す時…。
「はい、これがグレンの分だよ」
「……………ぜ」
「え??」
「絶対にファンタジーロックマウンテンに乗ってやるぜえええええええええええええ!!!!!!!!!」
先程まで無言で下を向いていたグレンは喜び溢れる大声を執務室中に響き渡らせた。
余談ではあるが、グレンはこのようなテーマパーク系が大好きなのである。
翌日、エンディミオンの東門に集まったグレンたち一行。
ファンタジーランドはここからしばらく歩いた所にあり年中客が絶えることはない。
アトラクションだけでなく劇団などのショーも楽しめることで老若男女問わず大人気のテーマパークなのだ。
「よおしお前ら!!早速行くぞ!!!」
普段より5割増しのテンションの高さでグレンは走りながらテーマパークの入口へと向かっていく。
残りの4人はその少し後ろから歩いて入口へと向かう。
「あのバカ。はしゃぎすぎよ」
「まあグレンは昔からずっとファンタジーランドに行きたいって言ってたからね」
「あれ?お前らこの国出身なのに来たことないのか?」
「そうなんだよね。いつか僕たちみんなで行きたいねって話はしてたんだけど。
まさかこんなタイミングで実現するなんて思いもしなかったよ」
「レオ君はこういうテーマパークは初めて?」
「ああ、俺村から出たことなかったし村にはテーマパークなんてものもなかった」
「じゃあ今日は私たちにとって最高の思い出にしようね!」
「おう」
そんな話をしている内に入口に到着する4人。
先に着いていたグレンは「おせえぞー!!」と言いながらも全員が来るまで中には入らず待っていた。
全員が揃い1人ずつ受付の女性にチケットを見せてからいよいよファンタジーランドへと入っていく。
その中はまさに別世界。
様々な魔法を最大限活かしたアトラクションの数々。
パレードが行われているのかそこら中に人だかりができていた。
「すげえ…」
そのあまりのスケールの大きさにレオは感嘆の声を漏らす。
それを隣で聞いていたアイリスはレオの手を握り「ほらレオ!あそこのパレードちょっと覗いてみましょ!」と走り出す。
「あ!おい!!」
「走ると危ないよ!」
「アイリスちゃーん!」
グレンたちも急いでその後を追う。
しばらくパレードを見た一行はその後、隅から隅までアトラクションを楽しみ尽くしていた。
『ファンタジーロックマウンテン』
ファンタジーランドで一番の人気アトラクションとも言われるジェットコースター。
相当スリルがあり絶叫系が得意な人でも「このアトラクションだけはいつまで経っても慣れない」と言う者がほとんどである。
「いやっほおおおおおおおおおお!!!!」
「無理無理無理無理!!!!!」
「きゃあああああああ!!!!」
「ああ、死んだおばあちゃんがそこにいるよ」
そんなアトラクションをずっと楽しみにしていたグレンは思い切り堪能し、アイリスとフィオネは涙を流しながら絶叫。
フロイに至っては冷静な顔とは裏腹に意味の分からないことを口にしていた。
ちなみにレオはというと。
「………俺…ああいう乗り物だめかもしれん…」
「情けねえなぁ~全く」
「一番最初に落ちるところから気を失っていたよね」
人生初のジェットコースターで絶叫系が絶望的に苦手だということが判明した。
続いてのアトラクションは『ファンタジックゴーカート』。
あらかじめ液状化されている魔力を取り付けた4輪車でレースを行う。
スピードを上げればその分多くの魔力を失うので配分などが上手くできないと終盤で追い越されたりそもそも魔力切れによりゴールができないということもあるのだが…。
「おらおらおらああああああ!!!!!お前ら遅すぎるぜええええ!!!!」
「あのバカ、説明聞いてなかったのかしら??」
「グレンは昔からそういう人だよ」
「はい…。でも……」
「ふはははははははは!!!!!グレン!!お前のスピードはそんなものか!!
この俺のライトニングサンダー号の敵ではないな!!!!」
「その乗り物そんな名前じゃないからな!?」
「「………レオ(君)も同じタイプなんだね(なのね)」」
結果は察しの通り、グレンとレオは序盤で魔力を使いすぎてゴールすることができずに失格となっていた。
続いて、『ファンタジースリラーハウス』。
所謂お化け屋敷と言われるそれは数々の客を恐怖のどん底に落としたアトラクションである。
度胸試し、男女の仲を深める等様々な目的で挑戦する者が多いのだ。
「じゃあ僕はここで待っているから、みんなで行ってくるといいよ」
まるでそれが当たり前かの様に出口の近くに立っているフロイ。
「なんでそんなとこに突っ立ってんのよ、早く入るわよ」
「いやいやいや、僕はいいよ。ここで待っているからさ。だから4人で」
「ほら、行くぞー」
頑なにお化け屋敷に入ろうとしないフロイをアイリスとグレンが連行する。
「や…やめようじゃないか君たち。こんなことをしても誰も幸せにはならない。
今ならまだ間に合う。引き返そう。引き返せば何か大切なものを失わずに済むかもしれない。」
強引に連れていかれてからもフロイはどうにかして離脱しようと説得を続ける。
表情こそ笑顔なのだがその顔色は真っ青になっている。
そんな様子を見てレオは心の中で「フロイってこういうの苦手なのか」と思いながらふと隣を見る。
するとそこには…。
「…………………」
身体をビクビクと震わせ涙を堪えながらなんとか歩いているフィオネの姿があった。
(ああ、こいつも…)
入るときは特に抵抗もしていなかったので問題ないと思っていたがどうやらフィオネもこういう類のものは苦手らしい。
「フィオネ、大丈夫か?」
「はひ!?!?ぜっ!全然!?全然大丈夫だよ!?」
(だめそうだな)
そう感じたレオはすっと右手をフィオネに差し出す。
「え…??」
「手、繋ぐか?誰かに触れてたら少しは落ち着くかもしれないだろ」
「……////」
「俺でダメならアイリスとかにでも…」
「つ、繋ぐ!私はレオ君がいい!!」
「ん??そうか??」
そうしてレオと手を繋ぎながら進むフィオネ。
心なしかフィオネの機嫌が良さそうにも見える。
「……ふ~ん…」
そんな2人の様子を前を歩いていたアイリスがどこか面白くなさそうな目で眺めていた。
「うわあああああああああああああ!アイスロック!アイスロック!アイスロック!!」
「おいやめろフロイ!!見たお化け片っ端から凍らせるな!!」
ちなみに、このアトラクションで誰よりも多く悲鳴を上げていたのはパーティー最年長のフロイであった。
それから昼時になり一行がファンタジーランド内にあるレストランで食事をとっていた時。
「そういやさ」
口を開いたのはレオだった。
「なんか東門の外にめちゃくちゃでけえ像みたいのなかったか?」
「ああ、あれね」
「そっか、レオ君は知らなくて当然だよね」
「率先して教えることでもなかったしな」
「そうだね」
「??」
レオの質問に対してアイリス、フィオネ、グレン、フロイの順でそれぞれ反応する。
その反応の意味がいまいちわかっていないレオにフロイが説明する。
「もうずっと昔の話だし僕たちも古い文献でしか知らないんだけど…」
それからフロイが中心となり他の3人がところどころ補足しながらレオに東門の外にある像のようなもの…。
かつて大魔導士エミリアが封印した『破壊神ウラノス』について説明した。
「……なるほどな。それでそのウラノスってのを何百年も封印してるわけだ。
で、そのウラノスを使って攻撃を仕掛けたのがこの前おっさんが話してた神だと」
「そういうこと」
「なんだったら帰るときにちょっと見ていくか?封印されてるウラノス」
「え??そんなことしていいのか?」
「多分大丈夫だろ」
「適当だなおい…」
しかしレオ自身もかつての魔導士が力を合わせて封印した破壊神を一度間近で見てみたいという気持ちがあり結局グレンの提案に乗りファンタジーランドから帰る際に全員でウラノスの封印を見に行くということになった。
そして昼食後、一行はアトラクションやショーを夕刻になるまで堪能した。
~数時間後~
「ったは~!!!!満喫した~!!」
日が暮れ始める頃、ファンタジーランドの出口に向かいながらグレンは体を伸ばしつつ心から楽しんだとわかる言葉を口にする。
「むしろちょっと疲れるくらい遊び回ったね。でもすごくいい気分転換になったよ」
「そうね。たまにはみんなでこうやって遊びに来るのもいいかもね」
グレンの後ろを歩きながらフロイとアイリスも満足そうな顔で話す。
更にその後ろを歩くフィオネが隣にいるレオに話しかけた。
「レオ君はどうだった?」
「俺??ああ、めちゃくちゃ楽しかったぞ。最高の思い出になった」
「そっか!」
レオの満足気な笑みを見てフィオネも自然と笑みがこぼれる。
「また、一緒に来ようね?」
「ああ、約束だ」
「それじゃあ帰る前に少し寄り道をしていこうか」
「おお、そうだったな」
フロイの言葉により思い出したのかレオがそう返事をした。
東門から出てすぐのところに破壊神ウラノスは封印されていた。
かつてエミリアによって強力な封印魔法を施されたウラノスはピクリとも動かず何重もの魔法陣の帯が体を拘束するように巡っている。
「ん??おお!フロイじゃないか!」
魔法聖協会に勤めている魔導士が今も24時間交代制でウラノスを見張っており万が一封印魔法に異常が見られてもすぐに対応できるようになっている。
その見張りの魔導士の1人がフロイを見つけ声をかける。
「勤務、お疲れ様です」
「ありがとな。どうしたんだ?こんなところに来て」
「ええ、実はちょっとうちのギルドの新入りにウラノスの封印を見せたいと思って…」
「新入り…??ああ、君か!!」
そう言った見張りの魔導士はフロイの後ろに立っているレオを見る。
その反応からどうやらレオの事を既に知っているようだった。
「あれ??レオの事ご存知だったんですか?」
「もちろんだよ!最近七天の方々がずっと彼の事を話していたからね」
「へ~…あいつらがね…」
「またなんかよからぬことでも考えてるんじゃないでしょうね」
グレンとアイリスが嫌そうな顔をしながら小言を言う。
見張りの魔導士は「こらこら」と苦笑いを浮かべながらレオに自身の背後で封印されているウラノスを見せる。
「これが…破壊神ウラノス……。こいつってまだ生きてはいるのか?」
「う~ん…。生きてるか死んでるかって言ったらどうなんだろう…。
ウラノスは生物と言うより神々の兵器って感じだから…ウラノスそのものに意識はないというか…。
ロボットとして見た方がいいのかもしれないね」
レオの質問になるべくわかりやすいように答える見張りの魔導士。
東門からその姿は見えていたがこうして近くで見ると予想以上に大きい。
そんなことを考えながらボーっとウラノスを見続けるレオ。
すると…
(………を……け)
「??」
突如レオの頭の中に声が響く。
断片的にしか聞き取れないが間違いなく誰かがレオの頭の中に話しかけている。
(封………を……解け………前………は………鍵………)
「鍵…??」
「??レオ君??」
ポツリと呟いたレオの声に反応したのはフィオネ。
どこか様子のおかしいレオを心配している様子である。
「レオ君、どうかしたの??」
「え、ああいや…。なんでもない」
「本当?また何か無理とかしてない?」
「大丈夫だって。心配かけてごめんな」
そう言ったレオは「さ~て、見たいものも見れたし帰るか~」と言いながら帰路につく。
4人はそんなレオの後を追う様にそれぞれ見張りの魔導士に挨拶をしてからその場を後にした。
(……鍵…。さっき俺に話しかけてきたのって…)
そう考えながら後ろで封印されているウラノスを一瞥するレオ。
先程レオの頭の中に話しかけてきた声の正体は…。
(ま、そんなわけないか。さっきあれには意識がないって言ってたし)
その後は深く考えることもなく後から追ってくるグレンたちと共にレオはギルドへと戻っていった。
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