『戦争』と『英雄』
過去の記録文のようなものです。
今当たり前の様に過ごしている世界がどのようにできたのか。
英雄の雄姿は未来永劫語り継がれていく。
かつてこの世界には数多の国が存在していた。
それぞれの国は領土の拡大のため幾度となく戦争を行い、蹂躙し、国民たちに多くの血を流させた。
そんなある日、突如として世界全ての国に攻撃を仕掛ける第三勢力が現れた。
その者たちは自分たちを『神』と名乗りこう続けた。
「神より与えられし崇高な力、『魔法』を争いの道具としか使えない能無しども。我々は貴様らを断罪する」
そこから先はまさに地獄であった。
たった3人の魔導士に為す術もなく一つ、また一つと国は滅ぼされていった。
ただの魔導士というにはあまりにも強すぎる3人の存在を危険視した各国の王たちは一時戦争を取り止め協力して神を排除するように動いた。
しかし、事はそう上手くはいかない。
つい先日までお互い殺し合いをしていた各国の魔導士たちがいきなり協力などできるはずもなかった。
神々もそのことを理解しているのかそれぞれの国の魔導士たちを衝突させ、同士討ちを誘わせるように動いていた。
そんな時、ある国の一人の女魔導士が声を上げた。
「私たちは確かに今まで殺し合いをしてきた!友を殺された者!親や兄弟、妻や夫を殺された者!……そして…子を殺された者…!!そんな人たちの憎しみが膨れ上がり戦争を助長して今の惨状を作ってしまった…!!私も含め、この地獄を作り上げたのは我々魔導士全てに責任がある!!だから償おう!殺し殺されることのない世界を!!未来ある子供たちにこれ以上血を流させない世界を創ろう!!そして私たちが償うためには、力を合わせてあの神々を退けなくてはならない!!」
そう言い切り最後に彼女は大きく息を吸い込み。
「殺すための戦いではなく!!侵略するための戦いでもなく!!
守る為の戦いをして!!これを私たちにとって最後の戦争にしよう!!!!」
彼女の名前は『エミリア・アステラス』
後に神々から世界を救い、戦争を根絶させ、魔導士たちを一つにまとめ上げ国を造り上げた英雄として後世に語り継がれることになる。
エミリアの想いに世界中の魔導士が胸を打たれ、彼女が思い描く理想の世界を創る為に団結を始めた。
その日から人類の反撃が始まったのだ。
エミリアを筆頭に魔導士たちは今までお互いを憎み合ってきたとは思えないほどの連携を見せ神々を追い詰めていったように見えた。
しかし……
「くそ!!なんなんだ!!なんなんだよこの化け物!!!!」
彼らは甘く見ていた。
「嫌だ!!やめてくれ!!死にたくない!!!!」
人類を断罪するという…
「エミリア様!!お逃げください!!早く!!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
神々の真の恐ろしさを。
人類側の優勢に見えた矢先、神々はあるものを地上に解き放った。
『破壊神ウラノス』
人型の超巨大殺戮兵器とでも言うべきその恐ろしさは団結した魔導士たちを絶望の淵に叩き落とすには十分な存在であった。
ウラノス自身に自我はなく3人の神たちの命令によって動いていたがその兵器が持つ魔法はデタラメと言う他ないものであった。
『破壊魔法』
あらゆる魔法、物理攻撃を無力化し、その大きな手の平に被せられた箇所は一瞬で塵とされた。
魔導士にとって魔法が効かないということは、敵に対して鎧も武器もなく丸裸であることと同義であった。
森も、海も、国も、そこに住まう人々も。
ウラノスが通った後に残るのはただ広大に広がる荒野のみであった。
そんな絶望の中再び立ち上がったのがエミリア・アステラスである。
彼女は生き残った魔導士たちと共に戦い続けた。
どれだけ圧倒的な力に打ちのめされようとも、どれだけ絶望を突き付けられようとも、彼女は諦めずに立ち向かい続けた。
そんな彼女の背中を追い、一人、また一人と奮起した。
そして遂に…
「やった……!!遂に…やったんだ…!!」
「あの絶望の象徴であった破壊神を…!エミリア様が…!!」
「「封印したぞーーーーーーー!!!!!!!」」
この日、世界は真の意味で一つになった。
どのようにしてあの破壊神を封印できたのか、エミリアはどのような魔法を使ったのか。
そもそも魔法が効かないはずの破壊神になぜ封印魔法を施すことができたのか。
当時の魔導士は誰も知る由もなかった。
しかし戦後、涙を流していたエミリアの口から放たれた一言。
「この戦いで朽ちていったたくさんの命がなければ……封印などできはしなかった…」
詳しくは分からずとも、エミリアが行った封印魔法にはこの戦いで朽ちていった多くの命に関係があるということだけは、直接その場にいた魔導士たちは感じていた。
破壊神ウラノスが封印されたことによって神々は姿を消し、長きに渡った戦争も終わりの時を迎えた。
戦後、世界中にあるほとんどの国が壊滅的打撃を受け、帰る場所を失った者たちの為に一刻も早い対策が要求された。
各国の王たちは一つの大きな国を造り、居場所を失った全ての魔導士を受け入れるように考えた。
そして、終戦に多大なる貢献をし、魔導士たちを一つにまとめ上げたエミリア・アステラスを女王として迎え、王たちはエミリアの家臣となり新たな国造りを始めた。
エミリアも進んで国造りに力を入れ、人類の新たな歴史の始まりと共に生まれた国。
それが、『大魔法都市国エンディミオン』である。
エミリアはエンディミオンの初代女王となり国の発展にも力を入れた。
エミリアや臣下、そして国民たちの努力もあり、当初はあまりに広大な国土故、国として安定させるのは不可能と言われていたエンディミオンを誰もが想像できないほど早く国として安定させた。
そこから人類は長い平和を手に入れることができたのであった。
そして数十年後、エミリアの晩年。
当時、不治の病にかかりまともに動くこともできなかったエミリアは臣下たちや多くの魔導士たちの手を借りながらかつて自身が封印した破壊神ウラノスの前に立っていた。
ウラノスはエンディミオンから出て少しした荒野に厳重な警備の元封印されていた。
その体はピクリとも動かず何十にも施された魔法陣を帯にしたような形で縛られていた。
「……ここまで連れてきてくれてありがとう…。これでやっと…最後の使命を果たすことができます…」
最後の使命。
それはエミリアの体内に残った全ての魔力を封印魔法の強度を上げるために使うというものだった。
体内の魔力を全て使う。
魔導士にとってそれは命を使いきるということ。
つまり…エミリアはここで死ぬということを意味していた。
事前にそれを知らされていた臣下や魔導士たちの反応は様々であった。
泣き崩れる者、涙をこらえ、最後まで英雄の雄姿をその目に焼き付けようとする者。
そこに集まったあまりにも多くの魔導士たちから彼女は愛されていた。
「…かつて私はこの巨悪を封印するために、いくつもの命を利用しました…。私自身は今までのうのうと生き続けて…。でもやっと…彼らと同じところに逝くことができます…。向こうに着いたら…まずは彼らに感謝と…謝らなければなりませんねぇ…」
そしてエミリアは振り返り最後に一言。
「皆さん…。仲良く過ごしてくださいね」
そう言い残し、彼女は笑って逝った。
自身の魔力を全て使い切ったエミリアの肉体は残ることもなく、その場からゆっくりと消えていった。
そして、ウラノスを封印する魔法が何倍にも強化され、ウラノスを縛る魔法陣が描かれた帯がたった1人の魔力で10本は増やされていた。
エミリア・アステラス
享年85歳
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