プロローグ 『絶望の始まり』と『戦いの始まり』
はじめまして。
天草みと(あまくさ みと)と申します。
初めての小説で口から肝臓が出るほど緊張していますがよろしくお願いします。
ここは、『ココヤキ村』という小さな村。
木々に囲まれ自然溢れるのどかなこの村は今、、、
火の海となっていた。
そこら中から聞こえる村人たちの悲鳴。
子供たちの泣き声。
なんとかして火を消そうとする者。
全てを諦めその場で立ち尽くす者。
あまりの恐怖にうずくまることしかできない者。
まさに地獄絵図としか言えない村の状況、パニックになる村人たちの中に明らかに場違いの態度をしている3人の男がいた。
真っ白なローブに身を包んだ3人の男は目の前で気絶している一人の子供を見て一言。
「ついに見つけたぞ。この少年で間違いない」
顔が隠れるほど深くローブのフードを被った男の声はその声を聞いただけでわかるほど冷静で、周りの悲鳴や泣き声など意に介していないのがわかった。
「ようやくですね。これで我々の計画も進めることができる」
「ああ、この少年さえ見つけることができたのであれば後は時間の問題だ」
「なら、さっさとこのガキ連れて戻ろうぜ。さっきから村の奴らの叫び声とかが耳障りで仕方ねえ」
そう言いながら三人のうちの一人が気絶している子供を担ぎ上げたその時。
「待て!!」
着用している服が火事によって煤まみれになり息を乱しながらもココヤキ村の村長が少年を連れて行こうとする3人の男を呼び止めた。
「あ?なんだこのジジイ」
「この村の村長でしょう」
「その子をどうするつもりじゃ!!」
「んなこと聞いてどうすんだよ。こんなガキのこと気にするほど余裕ねえだろ?今のお前らはよぉ」
「その子はこの村の子供…!儂らにとっては家族同然なんじゃ!この村をこんな惨状にしたイカれた貴様らなんぞにその子を渡す訳にはいかん!!」
「おーおーおーかっこいいねー。流石は村長様ってか??」
「アルファロス様。如何いたしますか?」
アルファロスと呼ばれるリーダー格の男は静かに村長に向かって歩き出した。
「ご老人。あなたの言い分は理解した」
「ッッッッッ!!!」
アルファロスが言葉を言い終えた途端村長の腹に大穴が開いていた。
「身の程を弁えろ、虫けら風情が」
(いったい……なに……が……)
自身の身に起きたことも理解できないまま村長は力なく倒れる。
腹を抉られたことにより溢れ出る血が地面を染めていく。
「あーあー、容赦がねえなぁ」
「行くぞ。これ以上ここに留まる理由はない」
そう言い3人の男たちは火の海となったココヤキ村から姿を消した。
~数時間後~
ここは地上から遥か上空に存在する天空国、『アルマトリア』。
少年を攫った3人の男の本拠地であるこの国で少年は気絶したまま酸素マスクを付けられた状態で液体の入ったポッドの中に入れられていた。
「アルファロス様、少年の方はどうなりましたか?」
「問題ない、万事順調だ。今は培養ポッドの中に入れ肉体の強化を行っている」
「なんだよ、さっさと力を与えちまえばいいじゃねえか」
「あの力はただの人間の肉体では耐えることはできん。じきに暴走を起こしてしまうだろう。そうならないためにまずは体を改良させる必要がある」
「せっかく見つけた貴重な存在です。万が一にでも正当に力を与えることができなければ我々の計画もまた先送りになってしまいます」
「はっ!お前は毎度心配性すぎなんだよヘギナ。お前も神の端くれならもう少し豪快にいかなくちゃいけねえぜ」
「そういうあなたは考えなしに行動しすぎな気がしますけどね、ヴェルゴード様」
「お?なんだ?やろうってのか?」
「よせお前たち。くだらん言い合いなどするな。何度も言うが我々はこの世界、そしてこの世界におけるあらゆるものを創り出した神だ。そんな我々が今何のためにこうして結託しているか忘れたとは言わないだろうな?」
「もちろんです。かつて我々がこの世界の人間どもに授けた偉大なる力『魔法』。我々は人間どもが魔法を世界の発展、よりよい世界へと導くために使うことができると判断し世界の創造と同時に魔法を扱うことができる人間、『魔導士』を創り出しました」
「けどいざ蓋を開けてみりゃ魔法を使っての戦争やらなんやらのオンパレードだ。今はほとんどの魔導士が一つの大きな魔法国家に住むことで戦争は落ち着いたんだったな。なんだっけ?あのだっせえ名前の国」
「大魔法都市国エンディミオンです」
「そうそうそれだ。まあ結局あんな猿か虫けらかわかんねえ奴らに俺らと同じ魔法を使いこなすなんて無理があった。だからもういっそのこと今いる人間どもを皆殺しにしてそいつらに代わる新しい生命体を創り出す…だろ?」
「その通りだ。300年前は上手くいかなかったが…今度こそ必ず成し遂げなければならない」
「まさか…たった一人の魔導士に我々の計画が阻止されるとは…」
「挙句『アレ』を起こすための『鍵』が全く見つからねえし。ま、それはやっと見つかったからいいんだけどよ」
「そう、この少年は『鍵』だ。いや…今はまだ鍵ではないな。この少年を『鍵』にするために今我々はこうして時を待っている」
「肉体強化が終わればいよいよ力の移植ですね」
「そうだ。すべては我々の悲願の為に」
「…ざ…る…な…!」
3人の神が話している時に突然少年が入っているポッドから声が聞こえる。
それに反応したリーダー格の神、「アルファロス」がポッドの方を見る。
「…なんだ?」
次の瞬間、少年が入っている培養ポッドにヒビが入る。
「アルファロス様!ポッドにヒビが!」
「バカな…意識の覚醒にはまだ時間がかかるはず…」
「自力で目覚めたってのか!豪気なことじゃねえか!」
「何を悠長なことを…!ダメです!このままではポッドがもちません!」
ヘギナが叫んだ直後培養ポッドのヒビが広がりそのままガラスが割れ、破片が飛び散る。
ポッドの中から勢いよく流れ出る培養液とヨロヨロとふらつきながら、しかし確かにその足で立っている少年の姿があった。
「げほっ!げほっ!!」
激しく咳をする少年。
少し押せば倒れてしまうほどに弱りきっているはずであった。
しかし…
「「ッッ!!!!」」
神々が一瞬委縮するほど少年の目には殺意が籠っていた。
憎しみ、殺気、それらは魔力のオーラとして少年の身に纏い神々を威圧していた。
(膨大な魔力に耐えるために肉体を強化させていたが…同時にこの少年に眠っている計り知れない魔力を呼び覚ましてしまったのか…)
アルファロスの頬に一筋の汗が伝う。
「俺は…お前らなんかに…絶対…!!」
そう言った少年は目にも留まらぬスピードで神々の間を走りぬける。
「ッッ!!捕えろ!!」
アルファロスが叫びヴェルゴードとヘギナは少年を追おうとする。
しかし…
「な!?」
「まじかよ…」
少年は部屋を抜けても尚直進し続けた。
この施設は天界、つまり空にある。
そしてこの部屋を抜けたその先には…
「……は??」
何もない。
急いで止まろうとしたが時すでに遅し。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
少年はそのまま地上へと落下した。
ヴェルゴードとヘギナが少年が落ちたであろう地上を眺める。
「あーあー。油断しちまったとは言えなんてザマだよ。どうすんだアルファロス。ガキが落っこっちまったぞ」
「すぐに回収に向かいます!」
「いや、構わん」
「ッ!?なぜですか?」
「この下はエンディミオンからそう遠くない。そこに回収に向かえばエンディミオンの魔導士たちと鉢合わせる可能性が高い。今はまだ、奴らと戦う時期ではない」
アルファロスは一息つき薄ら笑いを浮かべる。
「なに、回収は今でなくてもいつでも行える。あの少年は鍵だけでなく我々の戦力としても使えそうだ。それまでの間、精々あの国の連中に魔導士として育ててもらおうではないか」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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