表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/23

#02

 中学三年生の夏。母に内緒で桜花と一緒に受けた『ナナイロサクラ』のオーデションに見事合格し研修生になった私には、世界の全てが輝いて見えていた。


『わぁ……これがサクラ劇場かぁ。凄いなぁ、感動しちゃうなぁ』


 アイドルとしての活動を許すのは高校まで。成績が落ちたらアイドルは辞めること——そんな母との「約束」を守るつもりなんて端から一ミリもない。


 ……母との「約束」を守る事に何の疑いも抱いてなかった今までとは違うんだ。

 そんな大きな決意と小さな叛逆が、何だか私を大人にしてくれたような気がしていた。


『メグってば、さっきからそればっかりだね』

『だって私たち、憧れの場所に立ってるんだよ? 興奮するなって方が無理な話だよ』

『ここに立つ事はぼくたちの目標じゃないよ。ここはあくまでスタートライン。でしょ?』

『それは……そうだけど。でも、嬉しいものは嬉しいんだから、仕方ないじゃない』


 レッスンは毎日吐く程厳しかったけど、辛くはなかった。

 隣を見れば、同じ夢を目指す親友がいる。

 歌もダンスも、新しいことを全力で学んで吸収していくことが楽しかった。

 皆が努力と呼ぶ積み重ねや反復は得意分野で、周りはそんな私に期待してくれたから。

 まだ一人のお客さんもいない無人のステージで、私はどこまでも自由で無敵だった。


『ねえ桜花聞いて! 私も今度のライブで、桜花と一緒にデビューできるかもしれないの! 桜花と一緒にあの曲でデビューさせたいって、くじらさんが——』

『……遅い。待たせすぎ』

『あう……』

『……でも嬉しい。ぼくらの未来があのステージから始まるんだね。ここから、一緒に』


 期待されている。認められている。求められている。

 母との「約束」を守らなくても、私にはちゃんと価値がある……! 

 誰かに強制された訳じゃない。縛られてもいない。私自身が頑張りたくて、自由にどこまでも羽ばたきたくて、だから練習して練習して練習して練習して練習してその果てに——


『……メグ、ごめん。くじらさんもすみません。こんな大事な時に、疲労骨折だなんて……』

『ううん、仕方ないわ。でも、困ったわね……例の曲は二人のために書き下ろした新曲だったのだけど、こうなってしまったら今から他の人に振り覚えをして貰うしか……』

『……くじら、メグのパートならぼくも覚えてる。メグがいないならぼく一人でいい』 


 ——「サクラフブキ()、ユメメブキ()」が、生まれた。


『あの曲はぼくらの曲だ。だから——メグが流した涙の分まで、ぼくが歌うよ』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ