第一五節 検証は・・・
よろしくおねがいします
変異種討伐騒動で気になったとこができ、その調査のため、街から少し離れたところにある荒れ地に、私はアスと共に来ています
ここは、倒木や背の低い広葉樹がまばらに生えた、放棄山村みたいな荒地です
ですので、誰かに見られることもなく、また、少々派手な爆発が起きたとしても、街の方には何ら影響のないところです
そして、気になったことというのは、『私の魔術で魔物を灰にできた』ということです
どういうことかというと
一般的に通常の初級魔術、例えば火の魔術の場合、魔物に火傷を負わせるのがせいぜいの威力しかありませんし、変異種が相手なら、傷をつけることすら難しいかもしれません
魔物を灰にするには、中級以上の魔術の威力が必要になります
ちなみに、私の初級魔術が中級以上の威力あるなんてことはありませんし、あの時、中級以上の魔術を使ったという感覚もありません
けれども、魔物を灰にすることはできたということです
あの時は、曖昧な意識の中で何故かそうできるという考えが浮かんでいましたが、改めて考えると不思議なことです
◇
知らないうちに、私の魔術がレベルアップしたのかと思い、近くの木に向かって、普通に水の初級魔術を使ってみました
しかし、水弾が木の枝を揺らしたという、ごく普通の今まで通りの結果でした
試しに水の中級魔術を発動させようとしましたが、やはり発動しませんでした
「やっぱり、いままでと同じ結果ね
なんで魔物を灰にできたんだろう」
「そのときは、どうやって魔物を灰にしたの?」
「あの時は、意識が朦朧としていてはっきりと
覚えているわけじゃないんだけと・・・
たしか・・・」
今まで通りの魔術なのに、なぜか魔物を討伐できてしまった理由を思案していた私は、アスに変異種を討伐したときの様子を説明したのでした
「そういうことなら、障壁が何か関係してるのかもね」
「なるほど、まだ把握していない障壁の特性があって、
それで魔物を灰にできたわけね
アス、ありがとう
もう少し調べてみるね」
アスの助言に、障壁魔術の新しい特性ではないかと閃き、再調査を始めるのでした
まず、壁のように周囲を囲うだけの障壁を展開して、その中で、先ほどと同じように近くの木に向かって、水の初級魔術を使いました
けれども、水弾が木の枝を揺らし、水の中級魔術も発動しないという結果でした
普通の状態で魔術を使用したのと何ら変化はありません
「うぅ~ん、何も変わらないわね」
「そうですね
魔物は障壁で動けないようにしたんですよね」
「うん、そうだよ
あの時は、魔物がどれだけ暴れようが逃げられないよう、
周囲四方を障壁で囲って閉じ込めてやったのよ」
「閉じ込めて?」
「そうよ、閉じ込めて・・・」
「きっとそれだよ、お姉ちゃん」
「なるほど」
どうやら、密閉状態であることが重要そうです
◇
早速、調査を始めます
私は、これで高威力の魔術が使えるようになるかもしれないという期待に、興奮が抑えきれません
ですが、安全のため私の後ろで待機しているアスは、何やら思案中のようで、私のことはすっかり放置のようです
とりあえず、密閉状態の障壁を展開し、目標の木と自分を障壁の中に閉じ込めます
そして、目標の木に向かって手をかざし、水の初級魔術を放とうとしたとき
「あっ!、お姉ちゃん、ちょっとまって!」
「えっ?、あっ!」
アスが急に制止の声を上げてきましたが、逆にその声に驚いてしまって、水の初級魔術を発動させてしまいました
とたんに、手元から大量の水が滝のように飛び出し、私は自ら生み出した水の奔流に飲まれてしまいそうになりました
「お姉ちゃん、早く、早くこの障壁を解除しなくちゃ!」
障壁の外にいたアスが、障壁をたたきながら、必死に障壁の解除を促してきます
アスの声に落ち着きをとりもどした私は、障壁を解除して、溺れてしまうことを回避することができたのでした
◇
ずぶ濡れになったままですたが、溺れかけた動揺から立ち直った私は、私以外の人が同じことをしたときにどうなるかを調査したくなり、アスにも同じように密閉障壁内で初級魔術を使ってもらうようお願いしました
ですが、やはりあんなことが起きた後なので、非常にとてつもなく嫌がりましたが、私も障壁の中には入るという謎の説得により、しぶしぶながらも了承してもらえました
密閉障壁の中で、期待や不安など、いろいろないまぜになった気持ちでアスの挙動に注視する私の前で、アスは目じりに涙を浮かべつつ、目標の木に向け両手をかざし、水の初級魔術を発動させるのでした
しかし、私の時とは違って、普通の水弾が目標の木の枝に向かって真っすぐ飛んでいき、着弾と共に目標の木の葉を揺らすのでした
その結果に、心底安心したような感じで息を吐くアスでした
私はそんな様子をアスを見て、ちょっと複雑な気分になりました
まあ、理由はわからないですが、密閉状態の障壁内だと、私の魔術の威力が大幅に増すようで、障壁魔術に、また一つ新しい特性が見つかったことを、アスと共に喜びたいと思います
◇
そろそろ帰ろうかなと考えたとき、まだ障壁内で発動させた魔術の、威力限界を調べてないと思いつき、調べることにしました
まず、適当な大きさの正方形密閉障壁を、自分から1mくらい離れたところに展開します
そして、密閉障壁の外から、内側へ最大の威力の魔術を順次発動させます
まず、障壁内部にある大岩に向かって、水の初級魔術を展開してみました
すると、水弾が勢いよく岩に向かって飛び、岩肌に奇麗な穴を空けて飛び去っていきました
その穴の側面は、鏡のようにピカピカで、その貫通力の凄さを物語っています
次に、火の初級魔術を先ほどの大岩に向かって展開してみました
炎弾がユラユラと飛び、大岩に着弾したとかと思うと、瞬く間にドロドロと解け落ちてしまいました
一〇〇〇度以上の高温が再現できてしまったようです
そして、風の初級魔術を、別の大岩に向かって放ってみたところ、ものすごい砂嵐が吹き荒れたかと思うと、大岩が消え去ってしまいました
その凄まじい威力に身震いしました
最後に土の初級魔術で、錬金をしてみれば、一瞬で巨大な岩を生成することができてしまいました
その巨大さは、中級魔術並みの魔術を使ったのと同じくらいでした
中級魔術も試してみたところ、密閉障壁内では何の問題もなく発動することができました
しかも威力倍増、さらに密閉障壁の容積が小さいほど威力が増加することも分かりました
◇
どれだけ練習しても発動することがなかった中級以上の魔術が、密閉障壁内では、苦も無くしかも威力増大で発動できることに大喜びして、中級魔術を連発するのでした
「お姉ちゃん、そろそろ帰ろうよ」
「あともうちょっと、この炎の魔術を3発ほど発動させて、あの雷の魔術を落としたら終わるから」
「えぇ~、さっきも同じようなこと言ってたよ
それに、周りをよ~く見てみてよ」
アスの言葉に促されてあたりを見てみると、調査に使用していた荒地の地形がすっかり変わってしまいました
岩や砂が散乱し、あちこちに巨大なクレーターや池ができ上がっていて
燃え尽きた木々や、いまだに紅く発熱している岩があったりと、惨憺たる状態でした
「うん、もう大丈夫かな
さあ帰ろう、いま直ぐ帰ろう、とっとと帰ろう」
これはやりすぎたかなと思い、適度に隠蔽工作をして、呆れ顔のアスとともに、そそくさと街へ帰るのでした
◇
後日、すっかり変わってしまったその一帯を見た冒険者たちの間で、大規模な戦闘があっただの、局地的な嵐があっただの、いろいろと噂になっているそうです
そして、近々、調査のためのギルド職員を派遣するという話がでているそうです
私がやらかしたってこと、ばれないといいな・・・
ありがとうございました
『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、
ブクマや評価をしていただけると、とても励みになります




