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第一四節 狩勝負は・・・

よろしくおねがいします

その日は特別注文もなく、騒がしいイベントもなく、いつものように夕食時の食堂で忙しなく給仕をしていました

そして、たまたまそのテーブルへ出来上がった料理を配膳しに行ったときのことです

そこでは、かなりの酒を飲んで酔っている二人組の冒険者が、何やら熱く語り合っていました


冒険者とは、地上を主な活動の場としていて、魔物を狩り取ったり、要人の護衛など、街の何でも屋みたいなことを生業としている人たちのことです

探索者も同じような物なのですが、この街では区別するためにダンジョン探索を主な生業としている冒険者を探索者と呼びます


それは、それとして・・・

件の冒険者は二人ともかなり使い込んだ防具や武器を装備していて、一目で熟練の冒険者であると分かる恰好をしていました

その冒険者の内の一人が、突然、テーブルに拳を叩き付けるとともに立ち上がり


「いいだろう・・・

 そういうことなら、どちらがより多くの魔物を狩れるか勝負しようじゃないか」


ともう一人の冒険者に勝負を持ち掛け


「面白い、受けて立とうじゃないか」


と勝負が成立したようでしたが


「だが、普通の狩り勝負じゃつまらんなぁ

 よし、俺たち冒険者にはあまり馴染みのないダンジョンで勝負と行こうか、

 そこなら条件も揃うだろうし、

 あとは、判定役にポーターでもいればいいか」


そんなことを言い出しました

そのやり取りを見ていた、無関係そうな探索者が、余計な口を挟んできたのです


「それなら、そこの給仕のね~ちゃんなら、いけるぞ~」


その探索者を見てみると、かつて中層で救援したことのある探索者でした

こちらも、かなり酔っていたようで直ぐに(物理的な方法で)眠ってもらいましたが、時すでに遅く、中堅冒険者たちは


「よし決まりだ、このね~ちゃんにポーター頼んで、

 明日一日の結果で勝負だ」


と言い出し始めました


「はいはい、それじゃあうちで一番高い料理を食べてくれたらね」


私は、酒の上での話ということで軽く流して給仕の仕事に戻っていきました


その後、中堅冒険者たちは、やはりかなり酔っていたせいなのか、私のあしらい文句を真に受けたのか、一番高い料理を三皿ほどたいらげ、高級酒を飲み干し、肩を組みながら千鳥足で帰っていった

と、仕事上がりの帰り道にアスから聞かされました



ちなみにポーターとは、探索者の代わりに予備の武器やアイテムを持ち運んだり、魔物からのドロップアイテムを集めたり、時としては攻撃支援などを行い、探索者が、戦闘もしくは探索に専念できるよう支援する仕事のことで、新人探索者なら一度は経験する仕事です

あっ、今、何かトラウマ級なことを思い出しかけて背筋に寒いものが走りました



翌日の朝、いつものように出勤してみると、昨晩の中堅冒険者たちが、バーカウンターのところで待ち構えていました


「よう・・・ね~ちゃん・・・遅いじゃねぇか、

 それじゃあサッサと準備して行こうか」

「一体、なんのことですか」

「覚えてねぇのかい、狩勝負の審判役をすることになってたじゃねぇか」

「えっ・・・冗談じゃなかったんですか・・・その話」


私は、冗談だったのではと、聞き返したのですが


「そんな訳ねぇだろう

 ね~ちゃんの言ったように一番高い料理を三皿たいらげて、

 高級酒もたらふく飲み干したんだから、

 今さら無しとは行かないだろう」


中堅冒険者はどうやら本気のようです

そこで私は、恐々としながらギルド食堂の店長であるクロラルさんに事情を説明しにいくと、大笑いしながら許可を出してくれました

結局、私は慌ててポーターの準備をする破目になりました


まあ・・・準備といっても今回は、籠を背負っていくだけです、大した手間ではありません



「それじゃあ、ポーターと審判役よろしく頼むな」

「わかりました」

「あぁ、自己紹介がまだだったな、俺はボーゼスだ」

「それで、俺っちがビルトフっす、よろしくっす」

「ツナです・・・精一杯務めさせていただきます

 それで、勝負の方法はどうなっているのでしょうか・・・」


目的地へ向かう途中で自己紹介をしつつ、勝負方法を聞いてみると

場所は森林階層・・・地上の森とあまり違いのない森林地帯が広がる、中層のやや浅い階層です

方法は、前半と後半に分かれ一方の冒険者がパーティーリーダーとなって索敵・狩りをおこない

魔力結晶やドロップアイデムの精算金額で勝敗を決めるというもの

相手の冒険者は、索敵中は口を挟まないし、討伐中は手を抜かないということです

前半・後半での有利・不利があるとは思いますが、当人たちはこのルールで納得しているようです



前半戦は、ボーゼスさんがパーティーリーダーとなって狩りをするようです

地上とあまり違いのない森林階層ということで、冒険者たちは順調にウサギ型や猪型の魔物を狩りとって行きました


昼近くになったので前半戦を終え、一旦、階層扉前まで私たちは戻りました

前半戦の成果は、ウサギ型三匹・猪型一匹という、一般的な中堅探索者と同程度の結果に終わりました

冒険者たちは、「どうだ、おまえにできるか」とか「そのくらいどおってこのないぜ」とか言いながら昼食をとっています

私は、後半戦準備をするため、前半戦で狩り取った獲物の換金をしに、一旦ギルドに戻りました


私が換金と簡単な昼食を済ませて、森林階層に戻ってきたところで、後半戦を開始しました

後半戦は、ビルトフさんがパーティーリーダーとなって狩りをします


前半戦とは違う場所で索敵を始めてしばらくたった頃のことです


「変異種が出てきやがったぞ~」


と、少し離れたところで探索者の叫び声が上がりました


変異種とは、普段相手にしている魔物よりも、強くなっていたり特殊能力を持っていることが多く

十分な準備がない場合は、相手にせず速やかに非難することが暗黙のルールになっています


私たちは、いったん勝負はお預けと引き上げることにしました


しばらく出口に向かって歩いていたのですが、後ろからやってきた探索者が


「何呑気に歩いてやがる、変異種がすぐそこまで来てんだ、さっさと逃げろ」


声を掛けつつ抜き去っていきました


私たちは、後ろを振り返ると、疎らな木々の合間から、取り巻きの魔物を連れた変異種が走ってきているのが垣間見えました

身の危険をようやく認識した私たちは、先ほどの探索者を追うように走り出しました


変異種は、この階層ではよく見かける類の魔物でした

狼型の大型魔物で、人の高さの倍くらいの大きさで、銀色の体毛に覆われ、赤い目をぎらつかせいて、口から大きく飛び出した犬歯が獲物の血を求めるように、白く輝いていたりします

遠吠えによる敵の萎縮や、同系統の魔物の召喚に、噛みつき攻撃を得意としていて、それ以外にも、前足と鋭い爪によるによる薙ぎ払いやスタンピング攻撃を行う、俊敏性の高い魔物です


取り巻きの魔物は、変異種と同種のようですが、真っ黒い体毛で人の膝ぐらいの大きさしかありませんが、変異種の護衛とばかりに、かなりの数が変異種を取り囲んでいました


ようやく階層扉が見えてきたのですが、変異種たちは今だに私たちを追いかけてきていて、このままでは階層扉を抜け、街の方にまで被害がててしまいそうです

もしそうなったとき、アスに被害が及ぶかもしれないと思い至り、私は応戦するために立ち止まり、変異種の方に向き直りました


私は、右の掌を魔物の方に向け、左から右へと振り、取り巻きの魔物たちを、正方形状障壁内に封じ込め、身動きできないようにしようとしましたが、俊敏性が高いだけあって、かなりの数の取り巻きの魔物が封じ込めずに残ってしまいました

封じ込めた魔物も、体の一部しか封じ込めることができませんでした


しかしながら変異種たちも、突然の反撃に警戒したのか、その場に留まり、私に向かって威嚇を始めました


私は、それに憶することなく、右の掌を魔物の方に向け、左から右へと振り、先ほどと同じように取り巻きの魔物を封じ込め、身動きできないようにしたのですが、それを無駄なことだとでも言うように、変異種は遠吠えをして取り巻きの魔物を召喚してきました


それを忌々しく思った私は、指を鳴らし、変異種の口が開かないよう障壁で拘束してやりました

突然、口をふさがれた変異種は、前足や後足を使って障壁を外そうと猛烈に暴れだしました


その変異種の姿を見た私は溜飲が下がる思いがしました



そんな私や変異種たちの様子に気がついた、他の探索者たちが加勢にやってきてくれましたが、取り巻きの魔物たちも私に向け襲い掛かってきたため、魔物と探索者たちによる白兵戦が始まりました


私も障壁を拳に展開させ、格闘戦で応戦しました

そして、殴りつけた端から、殴った部分を正方形状障壁内に封じ込め、身動きできないようにしていきました

止め刺すのは、他の探索者たちにお任せです



どのくらい、そうやっていたのでしょうか・・・

気が付けば、変異種も討伐されていて、辺りは歓喜の歓声に沸いていました


魔力結晶やドロップアイテムの回収を終わり、ギルドへ帰還する道すがら、興奮気味な探索者たちの話に耳を傾けてみました


纏めてみると・・・

私が変異種の口を塞いだことで、変異種が混乱し群れの統制が取れなくなったようです、その上、増援を呼ぶこともできなくなったとかで、取り巻きの魔物は、只の雑魚に成り下がりあっさり駆逐されたらしいです

残るは変異種のみとなったとき、混乱から立ち直った変異種が、口を塞がれたままで唸り声を上げ、どことなく静かな怒りを湛え佇んでいた私と対峙していたようです


(このあたりの記憶がちょっと曖昧になっていたりしますね)


そして、変異種のほうえゆっくりと歩いていったらしいです

変異種も一瞬怯んだらしいのですが、口を塞がれているにもかかわらず、噛みつこうとしたそうです

私は、カウンタを決め、続けざまに変異種の頭部を正方形状障壁内に封じ込め、火の魔術で骨すら残さず灰にしたそうです


帰還後、探索者たちは大宴会を行ったらしいのですが、私は、そのまま帰らせてもらって、自室に戻ったとたん、そのまま倒れ込みそのまま眠りについたのでした



目が覚め、大きく伸びをしている時、ベットの傍にいたと思われるアスに抱き着かれ、大泣きを始められてしまいました


「どうしたの、落ち着いて・・・」

「お姉ちゃん・・・

 もう起きないかと心配したんだからね

 ・・・うわぁぁぁん」


なんとか、アスを落ち着かせて訳を聞いてみたのですが

どうやら魔力切れが原因で七日間ほど昏睡状態が続いていたようです


先ほどの大げさなアスの態度も、アスが同じ状況になったなったらと考えると・・・


因みに、今回の変異種討伐騒動で、共に戦った探索者たちは、私に感謝の気持ちを込めて二つ名を贈ったそうです


「封檻灰葬」と・・・


宅配業者のような二つ名を初めて聞いたとき、なんでそうなったのかを、探索者にもちろん聞きましたとも・・・

騒動の際、変異種の口を封じて、障壁の檻に閉じ込め、火の魔術で骨も残さず灰にして、葬り去ったからだということです

その説明を聞いたとき、事実には違いないが、もっといいものが無かったのかと愕然としました

ありがとうございました

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