表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

第一三節 魔術具競技会は・・・

よろしくおねがいします

私は、魔術具競技会の新人部門の会場となっている、体育館のような大きな建物内にいます


会場の至るところに、いろいろな魔術具が展示されています

展示品は、やはりというか冒険者や探査者向けの武具が道具が目立ちます

熟練冒険者や新人探索者が自分の助けになりそうな道具を探したり、商人が商売のネタになりそうな魔術具を、鵜の目鷹の目で探したりと、多くの人たちがいろいろな魔術具を興味深げに観察していたりします

積極的に質問している商人や、機能や改良点の説明をしなから自分の売込みに余念がない設計技師なども見受けられます


「はぁ~、始めてきましたが、賑やかですね・・・」

「そうでしょう・・・伝統ある競技会ですからね」


私の感嘆の声に、自慢気に返すコリンでした


コリンの工房は、会場の片隅にひっそりと展示ブースが割り当てられています

やはり、一般市民向けの魔術具ということで注目度は低いようで、素通りする人ばがりです


「そういえば、どういう審査手順で、賞は決まるのですか」

「ええっと・・・

 審査員の方々が観客に紛れて、会場を巡って技術力や着眼点に

 観客の反応など審査員各自が独自の基準で審査してますね・・・

 それと不正防止のために、だれが審査員なのかは分からない

 ようになっています」

「へぇ、そうなんですか」


そんは話をコリンとしていたことろ、一人の初老の老女が現れました


その老女は、背筋がピンと伸び、白髪交じりの髪をハーフアップにしていて、まだまだ若々しく闊達な人のようにみえました

目元は優しそうなのですが、瞳の奥には、なにやら鋭いものを感じます

そして、今日、初めてコリンの魔術具コンロに興味を示してくれた観客です


「おや・・・これは何なのかい?」

「いらっしゃいませ・・・これは我が工房が改良した、魔術具コンロです

 従来のものに比べて、燃費も火力も大幅に改善されていて

 何より、火力調整が簡単にできるようになっているんです」

「こんなに小さいのに?」

「はい、そうです・・・実演を行いますので、ごゆっくり御覧ください」


といって、コリンはフライパンを取り出し、事前の打合せ通り実演による売込みをはじめます


まず、ボタン一つで強火を着火させました、それを見た老女は


「青い炎・・・」


機構ではなく、炎の色に驚いていましたが、これは想定内の反応なので、コリンは落ち着いて対応しました


「はい、ご心配なく・・・この炎は火力を上げた結果であり、

 従来のものより数倍の火力になっています」


そう言いながら、コリンは予め下味をつけた厚切りの肉を取り出し、油を引き熱せられたフライパンの上に載せました

肉が勢いの良い美味しそうな音を奏でながら焼けていきます

表面にしっかり焼き色が付いたら、別のボタンを押し火力が小さい弱火にしました


「おや、ほんとに簡単に火力が調節できたね」


老女は、感心した声を上げました


コリンの料理はつづき、こんどは蓋をしてじっくり焼き上げていき、肉の中に十分火を通すのでした


しっかりと火を通ったところで、蓋を取ると、なんとも香ばしい匂いがしてきました


「こんな感じで、調理も簡単に行なえます」


コリンはボタン一つで火を止め、肉をまな板の上に取り出し、包丁で適当な厚さに切り分け、サッと小皿に盛り付け、老女に手渡した


「ふむ・・・確かに中まで良く火が通っているね・・・

 火力が十分っていうのに嘘はないようだね・・・」


そう言いいつつ、肉を美味しそうに食べていました


「こちらのスープもどうぞ、熱いので気をつけてください」


私は、開場と同時に温め始めたアス特製のスープを手渡しました

近くを通った何人かの冒険者が、匂いにつられたのかやってきましたが、宣伝も兼ね、お肉やスープを振る舞いました


「朝から気になっていたけど、いいものが見れたわ」

「ありがとうございます」

「良ければ、彼女の工房の商品をよろしくおねがいします」


老女の感想に、お礼と売り込みをかける、コリンと私でした



昼過ぎ位になり、実演で焼いた肉やスープ目当てに、人が集まってきた頃


「グフフ・・・

 こんなショボいものを展示してるからって、

 匂いで客を集めるとは、ずいぶんせこい真似をするのだな

 それに、まだ潰れていなかったんだな、お前の工房・・・

 ・・・グフフ」


耳障りな声色が、人垣の向こう側から聞こえたかと思うと

その人垣がサッと割れ、護衛らしき人を連れた立派な服を着たオークが現れました


「げっ、ゲオルド!」

「どなたですか?」


コリンに件のオークが誰なのか確認しました


「私のことを嫁にほしいと、あの手この手で迫ってくる、

 ボンゴラン商会の会頭の孫です」

「あぁ、あのそこそこ大きな商会で、何かと黒い噂のある・・・」

「そうです」


立派な服を着たオークはどうやら、ただの太った人間だったようです

まあ、以後もオークと呼ぶことにしましょう

違和感ないですし


「グフフ・・・俺様の嫁になる決心は付いたか・・・グフフ」

「誰がアンタの嫁になるもんですか!!」

「グフフ・・・無駄なことを・・・

 この競技会で客がつかなければ、工房は潰れて

 俺の嫁になるんだよ・・・グフフ」


そんなやり取りを始めた二人を気に留めつつ、護衛の方を見てみるとなんとなく既視感があったので

よく見てみると、数日前にコリンの工房前で伸びていた男に、とてもよく似ていました

そこで私は、ある可能性を思いつき、行動を起こしました


「そういえばコリンさん・・・

 この商品の肝である、火力を調整する機構には、

 いろいろと苦労しましたよね」


突然話しかけられたコリンは、驚いて閉口していましたが、私はそれに構わず、話を続けました


「試作品の中には、鍵の模様の検討不足で、

 突然発火するようなものもありましたね

 まあ、おかげで安全装置の開発もできたので

 良かったですけど・・・

 あっそうだ

 あの試作品はきちんと破棄してありますよね

 なんせ突然発火するので、火事なっては危険なので」

「なっ、あれにはそんなものなかったぞ!」


私の話を聞いたオークが焦りだし、こちらの狙い通りに口を滑らせたようです


「おや・・・どうしてそんなことがわかるんだい?」


突然、初めてコリンの魔術具コンロに興味を示してくれた、あの老女が現れて、オークを追求しはじめました

それは私がやろうと思ったこと何だけとなぁ・・・


「そっそれは・・・」

「どうしてなんだいだい・・・はっきりおいい」

「くっ」


気味の悪い笑い声も忘れ、言いよどむオークに、鋭い眼光で老女は問い詰めます

分が悪いと感じたのか、オークたちは慌てて立ち去ろうとしたので、私はオークたちの首に障壁を展開し、少し首を吊り気味にして動けないようにしました

オークたちは、障壁を外そうともがきだしました


「はっきり答えてくれるまで逃しませんよ

 あと、首のそれは嘘を付くと絞まるようになっていますので、

 素直になったほうがいいですよ」


オークたちだけに聞こえるよう、こっそりと囁いてみると、囁かれたオークたちは一様に焦りだし、更にもがき暴れだしました


「そういえば、護衛のあなたは

 数日前に工房の前で伸びていましたね

 どうしてですか?」

「お、俺は何もしていないぞ」

「おかしいですね?

 工房には、防犯のため、やましい心の持ち主が

 入ろうとすると痺れてしまう仕掛けが施されているので、

 なにもしていないなら、

 伸びているなんてことはないんですけど」


そう言いながら、護衛の首の障壁を、少しだけ釣り上げてみました

すると、護衛はもがくのをやめ、諦めたような表情を浮かべると共に白状しだしました


「おっ、俺は坊っちゃんに命令されて、仕方なくやっただけだ

 ・・・何も悪くない」

「護衛の方はこう言っていますが、そこんところはどうなんですか

 そちらの坊っちゃん」

「そんなことは知らん、そこの護衛が勝手にやっただけだ、

 俺様は関係ない・・・早く開放しろ」

「嘘だ俺は確かに命令された、『そこ女が競技会に参加できなくなるよう、

 展示する魔術具を盗んでこいと』 と・・・」


護衛は、わめきながらコリンを指差した


(これは有罪ですね)


私はオークの首の障壁も、少しだけ釣り上げてみました

オークは自分の首がしまっていると感じたのか、よりいっそうに焦りだし、首の障壁を外そうと必死に暴れたのですが、ひとしきり暴れた後


「ごめんなさい

 俺様が命令しました

 許してください」

「他にも何かやっていたんじゃないですか」

「ごめんなさい

 魔術師のパートナーが見つからないよう

 裏から手を回したり、手のものをけしかけたりしました

 ほんとうに、ごめんなさい、だから、命ばかりは・・・」


オークは漸く涙ながらに罪を認めたのでした


私はもうしばらくそのまま放置しようと思ったのですが、会場警備の警備員がやってきたので、障壁を解除しました

すると、オークたちは「覚えとけよ」と捨て台詞を吐いて警備員に連行されていくのでした



その後は、特にコレといったトラブルもなく時間が過ぎていきました


夕暮れになり、観客も疎らになった頃、競技会終了の声が、会場に響きました

この後、各審査員の審査結果がまとめられ、表彰式が行われるようです


コリンと今日の競技会についての感想や反省などを話ながら待っていると、会場の中央の方で表彰式が始まりました


次々と審査結果が発表され、歓喜と悲哀の声が会場に響きます

コリンの声も、その中に含まれています


そして、新人部門の最後にして最高峰の賞である、最優秀新人賞は、刃が簡単に交換できる剣を考案した魔術具設計技師が受賞しました

やはり、冒険者や探索者が多くを占めるこの街では、一般市民向けの魔術具では太刀打ちできなかったのでしょう


受賞を逃したコリンは、絵に書いたような落ち込みようで、私も掛ける言葉が見つかりませんでした


それでも、会場は片付けないといけないので、粛々と行っていると


初めてコリンの魔術具コンロに興味を示してくれたあの老女が、私とコリンの前に現れました


「ずいぶん落ち込んでいるようだね」

「あのときは、どうもありがとうございました」


声をかけてきた老女に、私はお礼をいいました


「いやいや、あたしも随分いいもの見させてもらったよ

 ボンゴラン商会には、いい加減頭にきていたからねぇ

 おかげでこっちも手を打つ決心ができたよ

 そのお礼って訳ではないんだけれど、

 今日、展示してた魔術具コンロの取引をしたいんだがね

 こう見えても、そこそこの商会の会頭をやっていてね、

 見る目には自信があるんだよ」

「失礼ですが、どちらの商会の方でしょうか」


コリンが申し訳なさそう伺ってみると


「あぁ、まだ名乗ってなかったね

 あたしはクラベレン商会のクラレスてもんさ」

「えっ、この国一番の商会の

 一般人では顔を見ることすら無理とか

 言われている会頭の?

 ははっ、ははは」


あまりにも大物の人物だったのようで、半ば思考が停止するコリンでした

私?・・・私は関係ないからね商売、もうただの気っ風の良いおばあちゃん枠で接してます


しばらくして、再起動を果たしたコリンが、何もかもほぽってクラレスさんを工房に連れて行き、親方であるお祖父さんと三者面談・・・もとい・・・商談を行ったようです



その後、魔術具コンロの大量の注文を受け、工房もかつての繁栄を取り戻し、嬉しい悲鳴を上げながら私に泣きついてくるコリンの相手を時々するようになったのでした


あっ、あとでプレス加工を教えてあげようかな

ありがとうございました

『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

ブクマや評価をしていただけると、とても励みになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ