表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

リシェル嬢の幸せな一生

作者: なつき
掲載日:2023/06/27

我が領地は近年魔獣による被害が拡大していた。公爵令嬢であるわたしも魔法で魔獣を倒す手伝いをしていた。

そんなある日町に大量の魔獣が襲い掛かろうとしているという連絡が入った。

両親は王城へ行っている日で、お兄様は別の魔獣を相手にしていた。

戦場へ出れるのは私しかいなかった。


何匹もの魔獣を倒し、あと少しというとき、魔獣のリーダーだったのだろう。

わたしでは到底倒すことのできない魔獣に攻撃されて、あっけなく意識を失ってしまった。



私は、きちんと死ねたのだろうか。公爵令嬢として生きていた18年を思い出していた。『あぁ、なんて愚かで可哀想な私……』

そう呟いて目を閉じた瞬間に思い出したのは、今世で出会った大切な人達だった。

(……あぁ、そうだわ。私にはこんなにも素晴らしい仲間がいたじゃない)

そう思ったら、心が温かくなった気がした。そして私は、そのまま意識を手放したのだ。

「……ん」

「リシェル!!」

目が覚めると、目の前に大好きな婚約者様の顔があった。そしてその向こう側には心配そうな顔をしている兄上の姿が見える。どうやらここは王城にある私の部屋のようだ。

「殿下……?それにお兄様も……」

「良かった!もう目覚めないかと思ったよ!」

「リシェル〜!お前は本当に馬鹿だなぁ〜」

泣きながら抱きついてきた兄上の頭を撫でていると、突然扉から父上が入ってきた。その後ろからは母上とお祖母様もいる。

「とう、さま?」

「あぁ、リシェル。目覚めたんだね」

「母上……」

「リシェル、あなたねぇ……あんな無茶をして!死んだらどうするつもりだったの!?」

「お祖母様……」

皆、とても心配してくれていたようで涙目になっていた。そんな家族を見て胸がいっぱいになる。

「ごめんなさい……でも、どうしてもあの魔獣だけは許せなかったんです……」

私がそう言うと、父上は悲しそうな顔をしながら首を振った。

「リシェル。気持ちは分かるけど、君は女の子なんだから危険なことはしない方がいいんだよ」

「えぇ、分かっていますわ」

「分かっているならいいんだけど……。まぁ、とりあえず今回は無事だったからよかったよ」

「はい」

微笑むと、父上もつられて笑顔になった。

「それで、あの後どうなったのか教えて頂けますか?」

「あぁ、もちろんだよ」

それから、あの後の事を聞いた。

どうやら、私が気を失ってすぐに王城の騎士団が到着してくれたらしい。そして、あっという間に魔獣を倒してしまったそうだ。

「そっか。じゃあ、もう安心ですね」

「うん。ただ……」

「何かあったのですか?」

言い淀んでいる父上に問い掛けると、困り顔のまま口を開いた。

「実はね、その倒した魔獣の死体がないみたいなんだ」

「死体が無い?」

「あぁ、確かに見たはずなのに跡形もなく消えてしまっていたよ」

「そうなんですね……」

それを聞いて、ふと思い出す。

「そういえば、あの時誰かの声が聞こえたような気がしました」

「声?」

「はい。『よくやった』とかなんとか……」

「誰だろうね?」

「さぁ……?」

考えてみたけれど結局分からなかった。だけど何故かまた会える気がして、その時はちゃんとお礼を言おうと思うのだった。




***

あれから2ヶ月ほど経ったある日のこと。私はいつものように学園へ登校していた。すると突然後ろから声を掛けられた。

「リシェル」

振り向くと、そこには制服姿のレオハール王子がいた。まさかここで会うとは思っていなかったので驚いてしまう。

「れ、レオハール様……どうしてここに?」

「リシェルを迎えに来たんだよ」

「迎えにって……」

何故わざわざ彼が?と思っていると、彼は私の横をすり抜けて歩き出した。

慌てて追いかける。

「ちょっ、ちょっと待ってください!」

「何?」

立ち止まってくれたものの、振り返る事なく前を向いて歩く彼の背中を見つめながら私は少し考えた。

(なんだろう……この感じ……)

前にもこんなことがあった気がする。一体いつのことだっただろうか?思い出せなくてモヤモヤしてしまう。

「どうかした?」

「いえ、なんでもありませんわ」

首を傾げながらも隣に並ぶ。しかし、今度は逆に私の歩幅に合わせて歩いてくれるようになった。それが嬉しくもあり、寂しくもある。前はもっと早く歩いていたように思うのだ。

「あの……今日は生徒会のお仕事はよろしいのですの?」

「うん。大丈夫だよ。それより君の方が心配だからね」

「……ありがとうございます」

微笑んでくれた彼に、私も同じ表情で笑い返す。

「ところで、今度の休み時間あるかな?」

「え?」

急なお誘いだったので、思わず聞き返してしまった。

「もし空いているのであれば、一緒に街に行きたいなと思って」

「……えっと……それは……」

正直行きたくない。だって彼と一緒にいるところを見られたら面倒なことになってしまう。特にマリアンヌには絶対にバレてはいけないのだ。

そう思って返事に悩んでいると、彼は苦笑しながら首を振った。

「やっぱりダメだよね。ごめん、忘れてくれ……」

「い、いいですよ!全然暇ですから!!」

諦めたような顔をした彼を見て反射的に答えてしまった。

しまったと思ったが、もう遅い。恐る恐る見上げるととても嬉しそうな笑顔があったのでホッとした。

「本当かい!?嬉しいな。楽しみにしてるよ。」

「……は、はい」

そう言われてしまうと、やはり断れない。それに、私自身も彼と出掛けられるのはとても嬉しかったから、断るなんて選択肢はなかったのである。

「あ、でも……」

「ん?」

「あまり遅くまではお付き合い出来ませんからね」

一応釘は刺しておく。

「分かってるよ。じゃあ、また後でね」

「はい」

手を振る彼に、小さく振り返す。そして、そのまま別れて教室へと向かった。

席に着くと、隣の令嬢がこちらを見ていることに気づく。

「おはようございます、マリー様」

「ええ、おはようリシェル」

挨拶を交わして自分の机の上に鞄を置く。

「ねぇ、聞いたわよ〜」

ニヤニヤと笑う彼女に嫌な予感しかせず、頬を引き攣らせながら笑顔を浮かべた。

「……何をでしょうか?」

「ふふふ。貴方、最近レオハール殿下と仲が良いんですって?」

「……」

その言葉を聞いて頭を抱える。

「別に仲良くは……」

「照れなくてもいいのよ。皆知っていることだもの」

「……」

どうやら私が思っていたよりも噂になっているようだ。これは早急に手を打つ必要があるかもしれない。このマリアンヌにかかれば噂話など一日で学園中にばら撒かれてしまう。マリー嬢は人のことをあることないこと噂するのを生きがいにしているのかというほど噂好きだった。

そんなことを考えていると、予鈴の鐘が鳴る。それと同時に担任の先生も入ってきた。

「皆さん、ごきげんよう」

教壇に立った彼女はいつものように出席簿を開くと、1人ずつ名前を呼び始めた。

「マリア=セレシアさん」

「はい」

名前を呼ばれた彼女が立ち上がる。そして、皆の前で簡単な自己紹介をするのだが……。

「……!?」

私は目を丸くして彼女を凝視していた。

(マリア=セレシア?まさか……)

私はすぐに窓の外を見た。

すると、そこには木の上で優雅に寝そべっている猫の姿がある。

(あの時の黒猫……?)

間違いない。あの日、私を助けてくれたあの子だ。

「……リシェル・ローレン?」

「あ、すみません」慌てて立ち上がり、前を見る。

その後も順調に呼ばれていき、私の番になった。

「次、リシェル=ローレント」

「はい」

返事をして立ち上がった瞬間、私の足元にまで寄ってきていたあの子がジャンプして肩に乗ってきた。

「!?」

突然のことに驚きすぎて声が出なかった。だけど、なんとか動揺を隠しながら猫を膝の上に隠すことができた。


次の生徒の名前を呼んだことで私のことはそれ以上聞かれなかった。

その後、授業が始まったものの私の頭の中は先程の衝撃でいっぱいだった。

まさか、学園に猫がいるとは思わなかった。それも、私の膝の上に座って寛いでいる。その毛並みはとても美しくて、触り心地もいい。

「あなたうちの子になる?」

頭を撫でながら問い掛けると、ゴロゴロと喉を鳴らしながら手に擦り寄ってきた。

可愛い……! 私はすっかりこの子にメロメロになってしまった。

「よし、名前はクロちゃんね」

「ミャア」

「……っ!」

鳴く時に耳元で囁かれるのがくすぐったくて仕方がない。

私は我慢できずにクスクスと笑ってしまった。

「クロちゃ……ふっ……みゃあ……ふふ……」

「……おい、お前何やってんだ?」

「へ?」

隣から聞こえてきた呆れたような低い声。私は間抜けな顔のまま隣を見上げた。

そこには、銀髪の美少年が立っていた。

「……ヴィンセント……様?」

「他に誰に見えるんだよ」

「……いえ、ちょっと考え事をしていて……」

「ほう?随分楽しそうだな?」

「ええ、まぁ……はい」

「…………」

無言の圧が怖い。

そういえば、彼は動物が苦手だった気がする。

「えっと、何か御用ですか?」

「ああ、今日は俺と図書館に行く約束だろうが。忘れたのか?」

「……そうでした!ごめんなさい!忘れていましたわ!すぐに準備しますから待っていてください!!」

「……」

慌てて教科書類をまとめ始める。

しかし、彼はなかなか立ち去らない。

「……どうかしましたか?」

「いや、なんでもない」

そう言うと、彼はようやく教室から出て行った。

なんだあれは?と思いながらも、今はそれどころではない。

「さ、行きましょう!」

「ミャァ」

「!」

返事をしてくれたクロちゃんを抱っこしたまま私も席を立った。

「お待たせ致しました」

図書室の入り口で待っていた彼に駆け寄ると、私の腕の中のクロちゃんを見て眉間にシワを寄せていた。

「……なあ、それ」

「この子はクロちゃんです」

「……は?」

「私とお友達になりましたの」

「……は?」

彼の頭上にクエスチョンマークが見えるような気さえする。

「とりあえず、行きませんか?」

「あ、ああ……」

納得していないような表情だったが気にしない。

私は彼を見上げてニコリと微笑むと、そのまま歩き出した。

「あ、ちょっと待てよ」

「ふふ、ごめんなさい」

「……」

苦虫を噛み潰したかのような顔をしている。

だが、ここで機嫌を損なうわけにはいかないのだ。

「なあ、なんで急に猫なんか持ち歩いてんだ?」

「それはですね、実は……」

私は猫との出会いについて説明をした。

「という訳なんです」

「……」

「?」

なぜか首を傾げられた。

「つまり、その猫に助けてもらった礼に餌付けをしているということか?」

「ええ、そういうことになりますね」

「ふーん……」

興味なさそうな返事だ。

「それより、早く行きましょう」

「は?行くってどこにだよ」

「もちろん、図書館の中にですよ」

「だから俺は本なんて読みたくねぇって言ってんだろ」

「大丈夫です。私が教えて差し上げますから」

「は?何を?」

「文字の読み方を」

「!?」

「この国の言葉はしゃべれても、文字までは分からないでしょう?」

「いや、まぁ、確かにそうだが」

「では決まりですね」

「いや、でも」

「レッツゴー!」

「ちょ、待てって!おい!!」

ぐいぐいと手を引いて歩く。

嫌がる彼を無視して、私はまず絵本を手に取った。

「これは『ロゼットの花』と言って、この国の童話集のようなものです」

「童話?」

「ええ。物語のようなものだと思ってくだされば結構です」

パラリとページを開く。

「ほら、ここに絵があるでしょう?」「ああ」

「これが文字なんですよ」

「……へぇ」

「じゃあ、読んでみてください」

「は?俺が読むのか?」

「ええ、頑張って」

「……」

渋々と言った様子で朗読を始めた。

「昔、あるところに小さな女の子がいました。彼女はお母さんを病気で亡くし、お父さんと一緒に暮らしていました。だけどある日、お父さんは遠い街へ仕事に出掛けてしまい、家には彼女一人きりになってしまいました。彼女が寂しくなって泣いていると、どこからともなく白い綺麗なお花が現れて彼女の涙を止めてくれました。それからというもの、毎日のようにその花は現れて彼女を慰めてくれたのです。そんなある日のこと、今度は赤いバラが彼女に近付いてきました。そして、その薔薇はこう言いました。"君の悲しみを僕にも分けてくれないか?僕は君を独り占めしたいんだ。だけど、君は僕のことを愛してくれないだろう?だったらせめて、その悲しい気持ちを少しだけ分けてほしい。そうしたら、ずっと一緒にいてあげるよ。永遠にね……"」

「素晴らしいです!ヴィンセント様!すらすら読めるようになっているではありませんか!」


ヴィンセントは照れたように、

「まぁ、この国に留学してきてもう2週間経つからな。それに・・練習に付き合ってくれるお前のおかげだ…

その・・ありがとう。」

聞こえるか聞こえないかの大きさでヴィンセントはお礼を言った。


「いえ、ヴィンセント様の努力の賜物です。さすがは、ヴィンセント様です。」


「その・・お礼と言ってはなんだが、次の休みどこか行かないか?」

ヴィンセント様からの突然の誘いに戸惑ってしまった。

「ありがたいお誘いなのですが、つぎの休みは予定がありまして・・・。申し訳ございません。」

「そうか。気にするな。…そろそろ帰るか。」

「はい。またお誘いお待ちしております。」



その日は、ヴィンセントと別れ屋敷にそのまま帰った。


「ただいま戻りました。」

「おかえりなさいませ。旦那様が書斎でお呼びでございます。」

「わかりました。」

私は父の部屋に向かった。

コンコンとノックをする。

「失礼します。」

中に入ると父がこちらを振り向いた。

「おお!リシェルか!ちょうどいいところに来た!これを見なさい!」

そう言うと父は一枚の写真を見せてきた。

そこには、私の婚約者であるレオハール殿下と、今日転校してきたアリア=セリシア様が写っていた。

「お父様、これは?」

「ああ、うちで雇っている密偵からの情報だ。殿下がリシェルではない女性と密会しているという情報が入ってな、詳しく調べさせた。」「まさか、そんなこと……」

「私も最初は信じなかった。だが、どうやら本当らしい。」

「……」

「リシェル、お前はどうしたい?」「……私は……」

正直言って、私の心の中は怒りと嫉妬の感情でいっぱいになっていた。

「私、許せませんわ!こんなに素敵な私を差し置いて他の女と逢い引きするなんて!」

「そうだな。だが、問題はここからだ。相手は公には伏せられているが隣国の王女だ。」

「えっ!マリアさんが王女・・。」


「ああ。」

「つまり、私はこのままだと婚約破棄されるかもしれないということですか?」

「ああ、そうなるな。」

私は考えた。

(このままでは、私は捨てられてしまう……。なんとかしなくては)

私は決意した。次の休みの殿下との予定の際にマリアさんのことを尋ねてみることを。



◆◆◆


「おはようございます。レオハール殿下」

「ああ、おはよう。では、いこうか。今日は、王都で評判の洋菓子店を予約してあるんだ。」

いつも通りの挨拶を交わす。

「まあ!楽しみですわ!」

心にもないことを口にしながら、私たちは馬車に乗り込んだ。

「それで、話とはなんだい?」

「はい、実は聞きたいことがありまして。」

「うん。なんでも聞いてくれて構わないよ。」

「では、遠慮なく。最近、私以外の女性と会ったりはしておられますか?」「……いや、していないけど。どうしてだい?」

「それは本当でしょうか?」

「もちろんだよ。」

「それなら良いのですが、もしかしたら私の勘違いかもしれません。」

「……?ああ、わかった。」

その後も、他愛もない話を続けて、お菓子屋に到着した。

「美味しいですわ!」

「ああ、そうだね。」

「どうかされましたか?」

「いや、別になんでもないよ。」

その後、特に何事もなくお茶会は終わった。

帰りの馬車の中で、私は考えていた。

(嘘をついているようには見えませんでしたね。でも、あの写真のことは一体なんだったのでしょうか?)

考え事をしていたせいで、隣に座っている殿下がニヤッとしたことに気が付かなかった。




「おい!起きろ!このクソアマ!」

私は見知らぬ男たちに囲まれていた。周りを見渡すと、どうやらここは使われていない倉庫の中らしい。

「あなたたちは誰です!?」

「あぁ?俺たちはな、お前みたいな貴族のお嬢様に恨みがある奴らの集まりさ。」

「なんですって!」

「へへへ、これからたっぷり可愛がってやるぜ。」

そう言うと、男はいきなりナイフを取り出した。

「きゃー!助けて!誰か!!」


必死に助けを求めるが、誰も来る気配がない。

殿下は?殿下はご無事なのでしょうか

「無駄だって、ここら辺は人通りが少ないからよぉ。」

「いやぁ!来ないで!」

「大人しくしろ!」

男が近付いてくる。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



その時、扉が大きな音を立てて開いた。そして、そこにはヴィンセント様の姿があった。

「リシェル!大丈夫か?」

「ヴィンセントさま……?」

私はヴィンセント様の姿に安心したのか、気を失ってしまった。


「チィ!また邪魔者かよ。」

「おまえらここから生きて出れると思うなよ!!」

ヴィンセント様が男に向かっていく。

「おっと、危ねぇな。」

「くそっ、外したか。」

「こいつ、強いぞ!」

「逃げろ!」

「逃すか!」

ヴィンセント様が追いかけようとすると、目の前にもう一人の男が立ち塞がった。

「おっと、行かせねえぜ。」

「どけ!」

「そうはいかねぇな。」

そう言いながら、短剣で斬りかかってきた。

「ふんっ」

「ぐあっ」

ヴィンセント様は相手の攻撃を避け、腹パンをした。

「なんだと!」

「お返しだ!」

そう言うと、相手の顔を思いっきり殴った。

「うぎゃ!」

相手は気絶してしまったようだ。

「次はお前だ!」

そう言うと、もうひとりの男の方へと向かっていった。

「ひぃ!く、くるんじゃねえ!」

「死ね!」

そう言うと、男の心臓を一突きにした。

「ぐふぅ」

そう言うと、男は倒れた。すると、どこからともなく大量の人がやってきた。

「こいつがリーダーか?」

「ああ。そうだ。」

「そうか、じゃあお前たちも死んでもらうか。」

「なっ!待ってくれ!頼む!見逃してくれ!」

「無理だな。」

そういうと、次々と人を刺し殺していった。

「これで最後か。…おい!いるんだろ、出てこい。」


ヴィンセントが誰かを呼ぶと

「にゃあ~~。」


どこからともなくリシェルが保護した黒猫が出てきた。


「お前リシェルをちゃんと守れ、なんのための護衛だと思ってるんだ。それとリシェルとくっつきすぎた!離れろ!」


「にゃん!(嫌だ!)」

「はぁ、まあいい。帰るぞ。」

「にゃあ!」


◆◆◆

私は目を覚ました。どうやらベッドの上に寝ているらしい。

(ここは……?)

周りを見渡すと、見覚えのある部屋だった。

(ああ、私の部屋ですね)

「起きたかい?」

声のする方を見ると、そこには殿下がいた。

「殿下!?なぜここに!?」

「君が倒れてしまったので、連れてきたんだよ。それにしても、よく眠っていたね。」

「そうなのですか……」

(ということは、あの時助けに来てくれたのは殿下だったのでしょうか?)

私がそんなことを考えていると、殿下は

「それで、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」と言ってきた。

「はい、構いませんが……。」

「ありがとう。では早速だが、君は黒い猫をみていないかい?」「えっ?どうしてそのことを知っているのですか?」

「やはりそうなのかい?」

「どうしてわかったのです?」

「実は、この国の伝記によると魔獣が大量に発生する年にどこからともなく現れて、魔獣を追い払ってくれるらしい。そしてその猫を従えられたものが世界を制することができるといわれているんだ。」「そうなのですか・・・」

(まさか、あの時の猫さんは私を助けてくれたのでしょうか?でも、どうして私についてきてくれるのでしょう?)

私は不思議に思った。

(でも、私には理由なんて関係ありません。私の命を救ってくれたのです。感謝しなくてはいけませんね。)

私は心の中でそう決心した。

「なるほど、リシェルの傍に黒猫が…。‥‥じゃぁ今リシェルには死んでもらわないとダメだね」


「っえ?・」



殿下がなにかを言っているようですが、私には聞こえませんでした。

「殿下?いま、なにかおっしゃられましたか?」

「ん?ああ、なんでもないよ。気にしないでくれ。」


そういうと殿下は、刃物を取り出した。


「リシェル?君はここで今死ぬんだ。私という婚約者がいながら暴漢に襲われそうになった。このままではこの国の王妃にはなれないと悲観してね。私は止めたが間に合わなかった。そんな筋書はどうだい?」

殿下は恐ろしいことを言っています。

「いやです!死にたくありません!」

「うるさいなぁ。静かにしろよ。」

そう言うと、殿下はナイフを振り下ろした。

「いやぁぁぁぁ!!!!ヴィンセント様!!助けてください!!!」


私は力の限りヴィンセント様を呼んだ。


「リシェル!私は愛する人ができた!私とマリアが結ばれるように今死んでくれ!私のために!!」

「いやぁぁぁ!!!」


私は必死に逃げようとするが、すぐに捕まってしまった。

「やめてぇぇ!!」

私は抵抗するが、無駄だった。

そして、ナイフが振り下ろされたその時、 バンッ!!!! 大きな音を立てて扉が開かれた。そしてそこにはヴィンセント様の姿があった。

「ヴィンセントさまぁ!!」

「チィ!また邪魔者かよ。」

「おまえここから生きて出れると思うなよ!!」

ヴィンセント様が殿下に向かっていく。

「おっと、危ねぇな。」

「くそっ、外したか。」


「逃すか!」

殿下が追いかけようとすると、ヴィンセント様が立ち塞がった。

「おっと、行かせねえぜ。」

「くそっ、外したか。」

「ここままだと、お前の大事なリシェルも巻き添えを食うぜ。」

「ちっ!」

ヴィンセント様は立ち止まって考えています。すると、殿下は逃げ出した。

「くっ!今回は諦めるか!」

「大丈夫か!リシェル!」

「はい、ありがとうございました。まさか殿下が、あんなことを・・」


ヴィンセント様は私の方へと向かってきた。

「リシェル、無事でよかった。」

「はい!助けていただいて、ありがとうございました。」

「今はもう何も考えるな、ゆっくり休め、あとは俺に任せておけ。」


ヴィンセント様の言葉を聞くと私はゆっくりと意識を手放した。


◆◆◆

俺はリシェルの屋敷を後にし、王城の陛下のもとへと向かった。

コンコン

「失礼します。」

「入れ」

「はっ!ヴィンセント・セレナード参りました。」

「リシェル嬢の件だ。」

「はい、わかっております。」「今回のことは全て貴殿の責任だ。」

「申し訳ございません。必ず、レオハール殿下を見つけ出します。」

「だが、リシェル嬢の命を救ったことは褒めてやろう。」

「ありがたき幸せ。」

「下がってよいぞ」

「はっ!」

◆◆◆

私は、ヴィンセントから逃げ切った後、急いで学園に向かった。

(まだ間に合うかもしれない。急がなければ!)

私は全速力で走った。

(早くなんとかしなければ!!マリアのところへ行かなければ!)



「マリア!まずいことになった!」

「えぇ、そうみたいね。」

「そうみたいって、そんな悠長なことを言っている場合じゃない!バレたんだ!

リシェルを襲わせたことがヴィンセントにバレた!」

「あら、そうなの。まあ、それはそれで好都合ね。」

「何を言っているんだ!?」

「だって、そうでしょう?これで貴方の計画は台無しになるのだから。」

「えっ!それはどういう意味だい?

マリアを殺して、僕と結婚するって言っていたじゃないか?」

「そうね。あの時はそういったわ。でも、あなた失敗したじゃない。

だからもう、いいの。」


「いいのって、じゃぁ僕との結婚はどうする気だ?」

「それも考えてあるの。安心して。私、妊娠しているの。」

「…….は?妊娠?」

「そうなの。あなたの子供よ。」

「僕の子?」

「そうよ。私のお腹の中にいるの。だから、もうあなたは用済みなのよ。私は、王妃になりたいわけじゃないの。国母になりたいのよ。」


「国母って・・そんな・・。」

「だからさようなら。今から王城へ行くわ。行って保護してもらうの。あなたは、犯罪者だけと、このお腹の子は違う。王子が一人しかいないこの国にとってこの子は、大切な王位継承者よ。きっと保護してもらえるわ。だからさようなら。」


マリアはレオハール殿下のもとを去っていった。




◆◆◆


ヴィンセントは黒猫を使ってレオハール殿下の居場所を突き止めていた。



(見つけた!)

俺は黒猫に案内されて、殿下のもとへとたどり着いた。

(これは・・・!)

そこには、血だらけで倒れている殿下がいた。

「殿下!これはいったいどういうことだ?!」

殿下は虫の息だった。

「うっ、ヴィンセント?どうしてここに・・。」


「殿下!しっかりしろ!いま治癒魔法をかける!」

「無駄だよ。僕はもう助からない。」

「何言ってんだよ!あきらめるんじゃねぇ!お前は罪を犯した。生きて償うべきだ!」

「ヴィンセント・・・頼みがある・・・」

「なんだ?なんでも言ってみろ!」

「リシェルを頼む。僕にはもったいない女性だった。完璧すぎたリシェルから目をそむけたくて、マリアに愛を乞い過ちをおかした。」

「ああ、わかった。リシェルは俺が守る。」

「ありがとう。そして・・・すまなかった。君を巻き込んでしまって・・・」

「気にすんな。」

「最後に一つだけ、伝えておきたいことがある・・・」

「お前の正体を早くリシェルにいうことだ。あの子をもう傷つけるな、まぁ僕が言うセリフではないがな。」


「あぁ、わかった。」


レオハールは、静かに目を閉じ18年という短い生涯を終えた。

「おい。黒猫いるんだろ?こいつを陛下のところまで運んでやってくれ。」

「にゃぁ~~。」


◆◆◆

「陛下、レオハールの居場所を突き止めましたが・・。」

「あぁ、わかっておる。影のものから報告はうけておる。」

「申し訳ございません。力及ばず。

殿下は、マリア嬢から魅了の呪いを受けていたようで、マリア嬢の心が離れた場合には、体内で毒素が発生し死に至らしめるというやっかいな呪いでした。

私が発見した時にはもう・・・。」

「うむ。ご苦労じゃった。」



「陛下、マリア嬢は?こちらには?」

「あぁ、あやつならもう始末した。レオハールの子供が腹の中にいると喚いておったが、、、

全く。それが事実か事実じゃないかなどどうでもよい。

魅了の魔法が使えるやっかいな女が存在するだけで鬱陶しいわ。

保護するといって、魔法が使えない貴族牢に入れておいた。





今頃は、己の現状を悟って喚いているだろうよ。

もう遅い。あそこに黒猫殿をあってくれるか?

黒猫殿のちょうどいい餌になるだろう。」

「かしこまりました。」



「して、ヴィンセントよ。そなたはこれからどうする?レオハールもいなくなった今、この国の玉座でも狙うか?わしは止めはせん。

好きにするがよい。なんならわしの首もやる。」

「御冗談を、陛下。

私は玉座など狙ってはおりません。リシェルさえ傍にいてくれれば何も望みません。

今まで通り学園に留学生として通うつもりです。そして卒業後、国へ帰ります。」


「そうか。それもまたいいかもしれな。しかし、この国は今後どうなるのだろうな。滅ぶのかそれとも・・・。」

「陛下が治めているのです。まだまだ安泰でしょう。もし、陛下が崩御されて、国が乱れた時には、私が手を貸しましょう。

我が国がこの国をもらい受けます。」


「あぁ、その時がきたら頼むとしよう。ルース帝国第一王子・ヴィンセント=ルース」


「では、失礼いたします。」



◆◆◆

レオハール殿下の死去は、国中に伝わりみなが悲しんだ。

リシェルも例外ではなく、学園でみなが喪に服した。

マリア嬢も学園から姿を消したが、誰にも噂されることもなく存在が忘れ去られていた。


「リシェル、今日放課後時間をくれないかい?」

「えぇ、いいわよ。どうしたの?」

「君に伝えたいことがある。」

「わかったわ。図書館で待ち合わせしましょうか?」

「あぁ、じゃあまた放課後に」



◆◆◆

放課後、図書館リシェルが向かうと、






すでにヴィンセントが待っていた。

「お待たせしました。」

「いや、待っていないよ。」

「それで、伝えたいことというのは?」

「あぁ、うん。その前に場所を変えようか。ここは人が多すぎる。」

「そうね。行きましょう。」

私たちは、人気のない場所に移動することにした。

「ここなら大丈夫そうだ。」

「さっきの話の続きだけれど・・・」

「リシェル、僕は君のことが好きだ。結婚を前提に付き合ってほしい。」

「・・・!嬉しい!よろしくお願いします!」

こうして、私たちの交際はスタートした。

◆◆◆

「ヴィンセント!こっちこっち!」

「そんなに急ぐなって!」

「だって、初めてなんだもの!ヴィンセントと一緒に出掛けるの!」

「はいはい、分かったから少し落ち着け。」

「はーい。」

あれから一年が経ち、私達は二年生になった。

私は、ヴィンセントからプロポーズされ、婚約をした。

そして、今は二人で王都の街にデートに来ていた。

「ほら、これお前に似合うんじゃないか?」

「本当?!可愛い!」

「試着してみろよ。」

「うん!」

店員さんに頼んで試着させてもらうことにした。

「どう?似合ってる?」

「あぁ、凄く似合っている。綺麗だよ。」

「ありがとう!じゃあ、これにする!」

「本当にいいのか?」

「もちろんよ!早く買っちゃいましょ。」

「わかったよ。」

その後、私たちは買い物を終えて、カフェで休憩をしていた。

「ふぅ~、楽しかった~。」

「俺も楽しいよ。」

「ねぇ、ヴィンセント・・・」

「ん?どうしたんだ?改まって。」

「あなたは、私のことを愛してくれてる?」

「あぁ、もちろんだ。世界で1番リシェルのことを愛している。」

「よかった・・・。実はね、不安だったの・・・。レオハール様が亡くなったあと、ヴィンセントはどこか遠くに行ってしまうような気がしたの・・・。」

「・・・」

「だから、私もっと強くなるわ。ヴィンセントに負けないくらい強くなって、ヴィンセントを支えられるようになるから。」

「・・・ああ、期待している。」

「それと、もう一つ約束してほしいの。」

「何?」

「私より先に死なないと誓って。」

「それは・・・」

「私を残していかないで・・・。私を一人にしないで・・・」

「・・・あぁ、誓うよ。俺は絶対にリシェルを置いていったりなんかしない。」

「・・・ヴィンセント、キスをしてもいいかしら?」

「あぁ、いいよ。」

私は、ヴィンセントの唇に自分のそれを重ねた。

「ヴィンセント、大好きよ。」

「俺もだよ。リシェル」

私たちは、もう一度口づけを交わした。

◆◆◆



あれから30年経った。ヴィンセントが帝国の第一王子だと告白されたり、クロが魔獣を食べていることがわかったりいろいろあったが、私はヴィンセントの子を3人も産み王妃となった。今は子供に王位を譲りヴィンセントと気ままな隠居生活をしている。

「ヴィンセント!見てみて!雪が降っているわよ!」

「あぁ、本当だ。ホワイトクリスマスってやつか?」

「素敵ね。」

「そうだな。」

「でも、寒いわ。」

「あぁ、確かに冷えてきたな。そろそろ帰るか?」

「ううん、もう少しだけここにいたいわ。」

「わかったよ。」

私は、ヴィンセントの腕の中でゆっくりと目を閉じた。




「リシェル?」


「リシェル君は幸せだったかい?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ