82.探索②
「フーヤ、簡単なことのように言っているが、草が身体につかないように常に避け続ける魔法はそんなに簡単に出来ないぞ。短時間であれば、何とかなるかもしれないが、維持し続けるのは難しい」
意外なことに、レクスルがそのまま獣道に入っていこうとするフーヤを止める。
理由はそれなりに真っ当なものであったため、フーヤも大人しく足を止める。
「ええと、草が身体につくのってもしかして大問題だったりする?」
カザヤがフーヤとレクスルの顔を見比べる。レクスルがフーヤに目配せすると、フーヤが話し始める。
「・・・・・・かぶれたりする植物とかはある。見分けてそれだけ避けるとかの方が現実的ではないから全部避ける方向で」
淡々としたフーヤの説明にカザヤは首をかしげる。
「そういうものなの?というか、かぶれるって確か何か痒くなったりするってことだよね?」
「嗚呼、かぶれた時の痒みや痛みが年単位で引かないこともあるし、毒があって死ぬ場合もある」
「いやいや、普通に大問題じゃん」
淡々と告げられた説明に、声を荒げるカザヤ。しかし、フーヤはそんなカザヤの様子に反応することなく、淡々と淀みなく答える。
「まあ、大抵の毒は解毒出来るし、そもそも僕は『異物排除』カザヤは『毒物除去』がそれぞれあるから。問題はない」
「なら、触ってもいいのか?」
カザヤが道端の草を見ながら言う。
「いや、服についたりして、それで二次被害が起きることもあるから、あまりよくはない」
「ニジ被害って何?」
フーヤがため息をついて、米神を指でとんとんと叩きながら言う。
「・・・・・・服についた草とかのせいで別の人に被害が出ること」
「あ、なるほど。おばあちゃんとかが、毒にやられたら大変だもんな」
カザヤが合点がいったというように頷く。
「・・・・・・そろそろ、俺の話に戻してもいいか?」
レクスルが口を挟むと、カザヤはハッとした顔で申し訳なさそうに一歩下がる。
「魔法については、僕が全てカバーするってことで」
フーヤが既に用意してあったらしい答えを告げると、レクスルは軽く頷く。
「ならいい、高度な魔法となるとフーヤしか使えないからな」
「いや、継続して発動が出来ないだけで発動自体はできるのだから確実に進歩してる。自信持っていい」
「そうか、フーヤが褒めるなんて珍しいな」
「・・・・・・カザヤの調子が移った?」
「さあな」
レクスルがニヤリと笑う。
「・・・話、まとまったってことでいい?そろそろ、行かない?問題は解決ってことでいいんだよね?」
カザヤが話に割り込む。
「それじゃあ、行こうか。散々カザヤに話の腰を折られてなければもう少し早く行けたんだけど」
「ええと、俺にも否があるってことでいいから、行こうよ」
カザヤがフーヤの背中に手を当てて押す。フーヤたちは背中を押されているフーヤを先頭に獣道に入っていった。
◇ ◇ ◇
「何か面白いものでもあるかなって思ってたけど、草しかないじゃん」
カザヤがうんざりしたように言う真後ろで、レクスルは咳払いすると表情を引き締める。
「フーヤ、それでわざわざここまで来たのは何でだ?何も理由がないわけじゃないんだろ?」
先頭を歩くフーヤは振り返ることもなく、手前の草をのけながら進む。
「いや、獣道から入れば誰にも見つかっていない森の中の開けた場所とかあるかなと『万能感知』の地図だと探しずらかったから。船を作った時の空き地ものってなかったし」
「そんな理由で、こんな道に付き合わされてるの?わざわざ?」
カザヤの非難の声を聞いて、フーヤは歩む速度を落とす。
「そういえば」
「露骨に話変えたな」
レクスルの言葉を気にすることなく、フーヤは話を続ける。
「この村、様子がおかしい。人が少な過ぎる。おばあちゃん以外の人に会ったことがない」
「あ、そういえばそうかも。特に気にしてなかった」
「そうだな。辺鄙な地だからこんなもんだと思っていたが」
カザヤとレクスルが口々に言う内容を聞いて、フーヤの歩みがよりゆっくりになる。
「・・・・・・何かあるのかもな」
「何かって?」
カザヤが緊張した面持ちで、小声で尋ねる。
「分からないけど」
「いや、思わせぶりに言っておいて分からないんかい」
カザヤの突っ込みと共に、ガサリと草むらが揺れる。草むらから出てきたのは、白い塊。フーヤとカザヤの前世で言うところの、サッカーボールのような大きさで、簡単に持ち上げられそうであった。そして、形はこの世界には存在しないはずの狐に酷似していた。フーヤは突然現れたその存在に目を止めると、即座に魔法を使う。結果、その白い生き物は燃え上がった。
「フーヤさん!?いきなり何してるの!?燃えてるよ!」




