7.ルーン=ルナティック③
明日は忙しくなりそうなので、本日投稿させていただきます。
「フーヤ、お帰り。それで、何の用で呼ばれたんだ?」
レクスルが戻ってきたフーヤに声をかける。
何処か上の空なフーヤはふんわりと微笑むとつぶやいた。
「・・・最高」
「答えになってないんだが」
レクスルが呆れた様子を見せつつも、フーヤに近づく。
「呼び出された時は面倒な事になったと思ったけど、最高の物を手に入れたからね。問題無い、むしろ最高」
熱に浮かされたようにつぶやき続けるフーヤを見つめるレクスル。
「フーヤ、頭大丈夫か?」
フーヤの様子がおかしい理由。
それは、ルーン=ルナティックから紙袋をもらった時まで遡る。
◇ ◇ ◇
「これって・・・」
紙袋の中に入っていたのは、前世で所謂ライトノベルと呼ばれていた本の山だった。
「前世でよく読んでたと知ったのでね、前世で所有していたシリーズと私が布教したいやつの一巻目をつめておいた。他に欲しい本があるなら教えて。来月までに用意しておく」
これまでの会話でもちょくちょく怪しかったが、遂に完全に敬語がとれたルーン=ルナティックが笑顔で告げる。
「・・・・・・つまり、欲しい本は貰えるということですか?」
フーヤは紙袋の中に入っている本を確認しながら問う。
「本だけならどれだけでもいいよ。私が布教したいのもちょいちょい混ぜるかもだけど。月一くらいでここに来る予定だし、その時に渡すから」
全ての本を確認しつつ、シリーズごとに分けて机に積み上げていくフーヤ。
「それじゃあ、いくつかリクエストいいですかね?」
「いいよ、教えて」
いくつかのシリーズ名を答えつつも、フーヤはある本に釘付けになる。
気に入っているシリーズの最新刊、それも二冊である。
前世で死んでから時間も経っているため、新刊が出ている事は当然だろう。
しかしこの世界で生まれ、魔術学校に通える十三歳という年まで過ごしているにしては新刊が二冊なのはどう考えてもペースが遅すぎる。
よくある、時間の流れが違うというやつなのだろうかと思いつつも、フーヤはパラリと本をめくる。
「欲しいのはこれで全部?」
ルーン=ルナティックがメモを見せつつフーヤに聞く。
そのメモには、フーヤが欲しいシリーズが箇条書きかつ日本語で書かれていた。
「それで、全部です」
フーヤがリクエストしたのは、前世で金銭的な都合で購入出来なかったお気に入りのシリーズや気になっていたが結局見る機会の無かったシリーズのものなどである。
お気に入りのシリーズといっても、アニメ化されたものを見ただけのものがあるのは御愛嬌だ。
「なるほどね・・・・・・これとこれは私も読んだことあるけど、こっちはないな」
さっきから薄々思ってたけど、ヲタク気質だよな、などと考えつつも用意されていることを忘れかけていた紅茶を飲むフーヤ。
普通ならとっくに冷めているはずだが、何故か舌が火傷しないほどの熱さでつまり適温だった。
「比較的有名な方だと思うけど」
「まあ、そうなんだけど・・・戦争ものが苦手でさ。極力避けてるんだよ」
フーヤとしては、小声でつぶやいたつもりでもばっちり聞こえていたようで返事をしてくる。
なお、フーヤが示したシリーズはライトノベルの中でかなり有名な作品であるが案外硬派な戦争ものでもあったりするので、ルーン=ルナティックの反応も仕方ないのだろう。
「戦争にトラウマでもあるんですか?」
「罪なき人々が大勢死ぬし、救いようのない悲劇が繰り返される。本で読んだだけでも痛ましさが伝わってくるし、神格を得てから本物の戦争も見たけど・・・ねえ、友人や知り合いが何人死んだと思う?」
「軽率に聞いてしまい、すみませんでした」
「気にしてないから、大丈夫だよ。それに、最近見たのも戦争ものだったし・・・」
遠い目をしつつも、ルーン=ルナティックが立ち上がる。
「じゃあ、頼まれた分は次の時に持ってくるよ」
「・・・ところで、何で校長室に呼び出したんです?」
フーヤは今更ながらも気になっていた事を聞く。
「空いている部屋がここしかなくてね。次からはもっと目立たない方法で空き部屋にでも呼び出すから」
「例え天地がひっくり返ろうと世界が滅ぼうと、必ずそうして下さい。目立つの嫌なので」
◇ ◇ ◇
「フーヤがそんなにご機嫌なの珍しいな」
レクスルがそう言いつつも、フーヤに大事そうに抱えられている本を見る。
勿論、大半の本は量も多く重いので異空間収納に入れてあるのだが、何か手に入れたと言いつつ何も持ってないのは不自然なので一冊ほどこの世界によくある本と同じような外見の本を手に持っているのだ。
「ところで、どういう経緯でそれ手に入れたんだ?」
「色々あった。とりあえず、読みたいから寮に戻る」
それだけ告げるとフーヤは寮に向かって歩き出す。
ちなみにこの学校は全寮制であり、フーヤたちは一人一部屋与えられている。
この二人はちょうど部屋が隣同士のため、よくお互いの部屋を行き来している。
なお、この学校には王族も貴族も平民も身分による差別なく通っているが、寮の部屋は平民は四人の相部屋で一人一部屋なのは王族や貴族だけであったりする。
閑話休題。
「いや、色々あっただけだと何の説明にもなってないし」
そう言いつつも、手に入れた経緯についてこれ以上の詮索をせずにフーヤについていくレクスル。
「嗚呼、これだけは言っておいた方がいいかな」
「・・・改まって何だ?」
「この本はルーン=ルナティック様から貰った」
この後の事は、レクスルが固まってしまい、暫く動かなかったとだけ伝えておく。




