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71.始めの村④

投稿忘れていたので、今投稿させていただきます。


「なんか、ボロい船がいっぱいだな」


 カザヤが言うと、フーヤが肘でカザヤをどつく。


「何するんだよ!」


「失礼だろ。それに、割と素朴ながらも立派な方だからな」


 森から町へはそこまで距離があるわけではなく、フーヤたちは直ぐにタラッタ王国の町にたどり着くことが出来ていた。

 町は海に沿うように細長い形をしており、フーヤたちはあっさりと海へと出ることが出来た。

 海とはいっても、どちらかというと港というのがしっくりくる感じで、砂浜に打たれたいくつもの杭から伸びるロープに船がくくりつけられていた。

 船は等間隔に並んでいたが、大きさはそれぞれ異なり、二人ほどしか乗れなさそうなものから十数人が乗れそうなものまであった。

 木製の年季の入ったものしかなく、大型の船は無かった。

 カザヤがどのような場所を想像していたのかはフーヤには分からないが、とりあえず追加で小突いておいた。


「・・・お、横暴」


 カザヤがうずくまっているうちに、フーヤは辺りを見渡す。

 昼過ぎという時間帯のせいか、人影はなく、静まり返っている。

 海岸沿いに木造の古びた家が連なっている。

 黒ずんだ家々が並ぶ様子は壮観であるとも言える。


「それで、フーヤ。どうするんだ?」


 苦笑いしつつもレクスルが口を開く。

 フーヤは無表情のまま歩き、海岸沿いに連なる家のうち一軒の前で足を止める。


「ここに入ろう」


 フーヤは家の扉にかけられている札を指差す。

 その札には食事処と書いてあった。


「え、ここ入るの?そもそもやってる?」


 実にあっさりと回復したカザヤが首をかしげつつも、フーヤの後ろへとまわる。


「こういう店は招待状無しでも入ることができるんだよな?」


 レクスルがフーヤの後ろのカザヤの隣に並ぶ。


「え、招待状が要る店なんてあるの?初耳」


「俺はフーヤに出会ってから招待状が要らない店の存在を知って驚いた」


「・・・・・・いいから入るぞ」


 フーヤがガラガラと引き戸を開ける。


「おや、お客さんかい?こんな時間に珍しいねぇ。そろそろ、閉めようかと考えてたところだよ」


 店は見た目に反することなく、狭く、机が数個あるだけのこじんまりとしたところで、床は木張りで踏むとギィと小さく音が鳴り、壁も木、机も木、椅子も木と古びた木で全てが構成されているかのようだった。

 店の奥で椅子に座ってぼおっと宙を見ていたおばあちゃんがひょこひょことフーヤたちの方へと歩いてくる。

 おばあちゃんは妙に間延びした声をしており、くたびれた薄い水色のワンピースに茶色のエプロンをつけていた。


「もう、お店終わりでしたか?」


 フーヤがよそ行きの笑顔を貼り付けて言う。

 そんなフーヤの様子に、フーヤの後ろに張り付いていたカザヤは愕然としたように口をぽかんと開ける。

 レクスルはフーヤの後ろで口元を押さえ、肩を小刻みに震わせている。


「むしろ、大歓迎だよ。今日は客も少なくて、食材余らしてたからありがたいねぇ」


「そうなんですね、では遠慮なく」


「席は適当に座っといてくれ、持ってくるからねぇ」


 おばあちゃんが店の奥へと消えると、カザヤが小声でつぶやく。


「ここまで見事な猫かぶり初めて見た」


 レクスルは息を切らせつつ言う。


「笑うの我慢するの大変だった」


「・・・レクスル、笑ってるの隠せてないから」


 フーヤはそう言いつつも、近くの椅子へ腰掛ける。

 カザヤは机を挟んだ向かいに座り、レクスルはフーヤの隣に座った。


「久しぶりに見たな、フーヤの外面」


 レクスルが口元に手を添えながら言う。


「・・・笑うことないだろ」


 フーヤが拗ねたようにレクスルから顔を背ける。


「悪い悪い」


 レクスルはニヤニヤしながらフーヤの横顔を見つめる。

 カザヤはそんな二人の様子を気にかけることなく、口を挟む。


「それにしても、注文取られなかったな」


「まあ、この時間帯だし、余り物が出てくると思う」


 レクスルから顔を背けつつも答えるフーヤ。


「そうだよな」


「時間帯で提供されるものが変わるのか?食事というものはいつでも同じものが提供されると思っていたが」


 レクスルが首をかしげると、フーヤが小さくため息をつく。


「それは王侯貴族の話。こんなところにある庶民の店だと品切れで提供出来ないなんて話はよくある」


「そうなのか」


 フーヤの説明に納得したのかレクスルがうなずく。


「この世界だと、フーヤも王侯貴族側では?」


 カザヤの言葉にフーヤはカザヤに視線を向ける。


「でも前世の記憶あるし、感覚としては庶民側」


「それもそっか。まあ、食べ物を多く用意しすぎちゃって余らせる方が問題だからな」


「驚いた、社会問題を把握しているとは」


 フーヤがせせら笑うように言うとカザヤの声が低くなる。


「馬鹿にしてる?」


「こんなところで喧嘩するのはよくないぞ」


 お店の中ということもあり、いつもは静観しているレクスルが止めに入る。


「待たせたねぇ」


 おばあちゃんが奥からひょこひょこと戻ってきた。


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