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70.始めの村③


「なあ、ひとつ言ってもいいか?」


「どうぞ」


 フーヤの素っ気ない言葉を受けて、カザヤが口元をひきつらせつつも叫ぶ。


「五日間もかかるなら、最初にそう言ってくれ!!!」


 フーヤたち三人の目の前に広がるのは、海。

 急な崖を見下ろした先にあるのは、集落。

 目的地であったタラッタ王国の最初の村にようやくたどり着いたのである。

 なお、崖の下なので厳密に言えばまだたどり着いてすらいない。


「高いな」


 レクスルがしゃがみこんで崖の下を覗き込む。

 家が色とりどりの豆粒のように見えるのを、レクスルは感心したように見る。

 その呑気な反応を横目で見つつも、カザヤはフーヤを睨む。


「地図の縮尺も分からなかったし、僕らの移動速度も分からなかった。それに、この地図だと高低差がよく分からなかったから崖になってるとは思わなかったし、直線距離で行こうと道をそれようと言い出したのはカザヤ自身」


 フーヤの言葉にカザヤはたじろいだように、右足を僅かに下げる。


「・・・それは、なんというか。直ぐ着くと思ってたら着かないし、直線距離の方が速いと思ったから。食事のレパートリーも少ないし、魚食べたくて」


 カザヤの視線が彷徨うのを見て、フーヤは盛大にため息をつく。


「・・・・・・魚食べたいに全ての理由が収束されているな。あと、食事の種類はむしろ多い方」


「うん、それは、分かってるって、だから、そんな目で見なくても、ね?悪かったから。まあ、結局周り道しなくちゃならなくなってはいるけどさ」


 カザヤはフーヤの真っ直ぐな視線に身を縮こませる。

 フーヤはカザヤから視線をそらし、レクスルと同様にしゃがんで崖の下を覗き込む。

 レクスルが思わずフーヤの服を掴んでしまうほど身を乗り出している。

 フーヤは真下が一面森であることを確かめると、立ち上がる。


「よし、行くか」


「え、どこに?」


 首をかしげるカザヤとフーヤのこれからの行動を察して身体を強張らせるレクスル。


「下」


「え?」


 フーヤはレクスルとカザヤの手を問答無用でしっかり握ると、間伐入れずに崖下へと落ちていく。

 カザヤの悲鳴が響き渡った。


 ◇ ◇ ◇


「し、死ぬかと・・・・・・」


 カザヤが地面にしがみつきながら呻くようにつぶやく。

 心の準備も一切出来なかったせいか、目が焦点を結んでいない。


「フーヤ、いい加減この方法辞めないか?」


 レクスルは近くの木にもたれかかり、青ざめた顔でフーヤを見る。


「面倒臭い」


 フーヤは涼しい顔でそう言い放つ。

 満身創痍といった様子を見せるレクスルとカザヤの二人と対称的に何事もなかったかのように『万能感知』の地図を見ている。


「面倒だからとかいって、直線距離で降りるなよ。というか、レクスルの言い方的にこういうの初めてじゃないの?」


 少し回復したらしいカザヤが地面に転がったまま言うと、レクスルがゆっくりとうなずく。


「嗚呼」


「ええ・・・・・・」


 カザヤがじとりとした視線をフーヤに向ける。

 レクスルもカザヤと同じように真っ直ぐな視線をフーヤに向ける。


「死なないからいいだろ」


 決まりが悪くなったのか、フーヤが視線を逸らす。


「いや、そういう問題じゃない。というか、そんな生きるか死ぬかみたいな基準であれこれを決めるんじゃない。心臓に悪いし、純粋に辞めてくれ。死なないにしても、死ぬかと思ったし、なんか大事な部分がガリガリ削られた気がする。というか、百歩譲って飛び降りるとしても事前に言え」


「事前に言わなかったのは、飛び降りる前にカザヤが文句たれてたあれこれと相殺ということで」


 フーヤはそう言いながら、地面に伏せっているカザヤの肩にポンと手を置く。


「できるか、そんなことでチャラにされてたまるか!!!」


 カザヤの叫びを至近距離で聞き、思わず耳を塞ぐフーヤ。


「フーヤ、面倒であっても遠回りした方がいいことはある」


 ゆっくりと諭すように告げられたレクスルの言葉に拗ねたようにそっぽを向くフーヤ。


「それにしても、この高さから落ちて平気とか、さてはジェットコースターとか顔色ひとつ変えないタイプだな?」


 カザヤの淡々とした問いかけに首をかしげるフーヤ。


「分からない。乗ったことないし」


「えっ、乗ったことないの?そんなことありえる?あ、でも家族旅行とか学校行事で行く機会がなくて、一緒に行く友達とかも居なければありえるのか?」


 考え込むカザヤは、地面に横たわったままではあるが落下の精神的衝撃からはすっかり立ち直っているようである。


「じぇっとこーすたーとは何だ?」


「レクスルは知らないのか。まあ、そうだよな。ええと、高さとスピードを楽しむための乗り物というかなんというか、どう説明すればいいんだ?フーヤ、助けてくれ」


 レクスルも先程よりは顔色が良い。

 それを確認すると、フーヤは背伸びしつつカザヤの助けを求める声をさらりと無視して言う。


「行こう。最初の村へ」


こちらの都合で来週の投稿ができません。お詫びとして、幕間の短編の方を続けて投稿させていただきます。よろしくお願いします。

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