66.プロクス②
「嗚呼、そういうことなら任せてくれ」
プロクスが腹をかばいつつも立ち上がる。
フーヤたちの視線が集まっていることに気づくと、にこりと笑って見せる。
「プロクス、頼んだ」
ルーン=ルナティックが少々投げやりにそう言うとプロクスは不敵な笑みを見せ、深呼吸をする。
「大地の精よ、我が望みに答えよ」
プロクスは背中に背負っていた大剣を地面に突き立てる。
すると、地面が波打ち、ゴブリンの死体は地面に飲み込まれ、隆起していたり、陥没していた地面も元のように平らへとなった。
地面に生えていた草花こそ元通りにならなかったものの、ここまで元通りになれば充分だろう。
「す、凄い・・・!」
周りを見渡し、目を輝かせるカザヤ。
フーヤもレクスルも同様に周りの様子を見渡している。
レクスルは本能的になのか、フーヤとカザヤに一歩近づく。
無論、巻き込まれるといったことはなかったが、ここまで大規模な魔法はそうそう見られるものではない。
「相変わらず、地形変化だけは得意だな」
ユウレイルがだけを強調して吐き捨てるように言う。
「師匠、地形変化だけとはどういうことでしょう?」
レクスルの質問に対して、ルーン=ルナティックが口を開く。
「プロクス、地形変化だけしか出来ないから。地形変化だけは変則的な詠唱でいくらでも出来るんだけど」
「・・・・・・そんな人初めて聞いた」
フーヤがぽつりとつぶやく。
地形変化自体、使える者が少ない魔法である。
制御しなくてはならない魔力量が膨大な上に詠唱を使っても地形を変化させるイメージをつけにくいのか成功する者は少数である。
地形変化などよりも発動が容易な魔法は多い。
しかし、それらは使えずに地形変化だけ出来るということは異様であると言える。
「まあ、だから魔法学校では落ちこぼれでな。代わりに体術を鍛えまくっていたもんで騎士の方が向いてるとか言われてたんだがルーンに才能を買われた結果こんなことに」
プロクスは笑顔でそう言うと、ユウレイルに目を向ける。
ユウレイルはプロクスに背を向けつつも、言葉を紡ぐ。
「お前のことが気に入らないのは僕個人の感情というだけだ。お前の力は認めているし、大切にしていることも知ってる。感謝を忘れるなよ」
そう言うと、ユウレイルは歩き出す。
「ユウレイル、何処に行くんだ?」
「ルーンに呼び出されたから来たけど、元々の用事すっぽかして来たから戻る」
プロクスの質問にユウレイルは手をひらひらさせながら答える。
「そういえば、そうだったね。わざわざ来てくれてありがとう」
「ルーンのためだからな」
ルーン=ルナティックの微笑みを横目で見納め、ユウレイルは強い口調で言い切ると振り返ることなく、立ち去っていった。
「そういえば、戦ってる時に着いてた返り血とか汚れとかないね」
カザヤのつぶやきに真横に居たフーヤが口を挟む。
「そのくらいなら、魔法で一瞬で取り除ける。それ以前に僕がカザヤの分も綺麗にしておいたんだが、真逆気づいてなかったのか?」
「え、気づかなかった」
しみじみとそう言うカザヤにフーヤはため息をつく。
「何だか、さっきより仲良くなったか?フーヤがカザヤにかなり甘くなってるな」
「レクスル、そんなことはない」
「いや、でもさっき、楽しいのが分からないとかいう深刻そうな相談されたし」
カザヤの言葉に僅かに目を見開くレクスル。
「もうそんなに親しくなったのか、俺もフーヤと仲良くなってから定期的にされる相談だな」
「あんな、お前だけ特別だって感じ出しておいて定期的にしてる相談なの!?あ、もしかして割と長期間解決してない感じだったりする?」
「嗚呼、まあ俺がフーヤに迂闊なことを聞けないというのも原因ではあるが・・・」
レクスルはそっと目を伏せる。
「あ、踏み込めてないって予想は合ってた。でもさ、感情がよく分からないって話なんだよね?見たところ、感情自体はありそうだけど」
「なんというか、感情を感じとるのが苦手というかよく分からない」
先程からコロコロと変わるカザヤの表情を眺めつつ、フーヤは口を開く。
「まあ、楽しそうだと言われたのが初めてというのは嘘だ」
「いやいやいや、ちょっと待て。その嘘をつく必要性がどこにある?」
途端に声を荒げたカザヤにフーヤは淡々と告げる。
「習慣」
「そんな習慣があってたまるか。というか、習慣づけるな。直ぐに辞めろ」
「習慣は直ぐ辞められるものでもない」
「完全におちょくってるだろ!表出ろ!!!」
「ここ、外だよ」
完全に傍観の姿勢に入っているレクスル。
「なあ、もしかして忘れられてる?」
「だろうね、完全に蚊帳の外だし」
プロクスの言葉にルーン=ルナティックは深々とうなずいた。




