65.プロクス①
「ところで、ルーン。そろそろこいつらのこと紹介してくれよ。ユウレイルでもいいから」
「プロクス、君の頼みを聞きたいのは山々だが面倒臭いのでルーン頼んだ」
背中ノ大剣を背負い直しつつ、プロクスが発した質問はユウレイルにすぐさまたらい回しにされる。
「あんまりじゃないか、ユウレイル」
「僕はまだあのことを許したわけではない」
「・・・・・・過ぎたことだしいいじゃないか。大体、最初から勝ち目なんてなかったし」
プロクスは分かりやすくユウレイルから目をそらす。
「なんか、仲が悪い?」
カザヤが小さくつぶやきながら、首をかしげる。
フーヤがそれにうなずき、レクスルも同意の言葉を紡ぐ。
「みたいだな。事情までは分からないが」
「ユウレイル、気持ちが分からないわけではないけどさ、まあいいか。プロクス、右から順にフーヤ、カザヤ、レクスル。それでレクスルが神託にあった勇者だよ」
「なるほどな、凄まじい攻撃であったし納得だな」
ルーン=ルナティックの言葉にうなずくプロクス。
「まあ、レクスルくんに関してはユウレイルが師匠として手取り足取りやってたから」
「嗚呼、うん、それで強くならないわけがないな」
ルーン=ルナティックがフーヤたち三人に改めて向き直る。
「改めて紹介すると、英雄パーティーのひとり『地割り』のプロクスだよ。ちなみに、ユウレイルと仲が悪いのは私に告白したからですね」
「ルーン、いらないことまで言うな。プロクスだ。よろしくな」
プロクスはそう言って、フーヤたちに手を差し伸べる。
レクスルが手を取り、握手を交わす中でフーヤの視線は物言いたげにルーン=ルナティックに注がれていた。
「フーヤくん、言いたいことは分からないでもない。何故私がモテるのかについては私も分からないからな」
「ええと、フーヤ。何がなんだがよく分からないんだけど」
カザヤが首をかしげる。
カザヤにとっては、ユウレイルすら初めて会った相手であるため仕方ないことだろう。
「ユウレイルさんはルーン=ルナティックと付き合ってる。なお、レクスルは告白して恋人居るからと断られてる」
フーヤは早口で説明を終えるとため息をつく。
「あれ、フーヤ、呼び方──」
フーヤがカザヤの口を手早く塞ぐ。
「迂闊に神だとか言えるわけないだろ」
フーヤが声をひそめて淡々と言う。
「嗚呼、配慮してくれたんだね。まあ、言ってしまってもこっちの方で上手い具合に記憶書き換えるけども。まあ、私が女神だって知っているのユウレイルとフーヤくんとレクスルくんとカザヤくんだけってことになってるから、正しい判断ではある」
「あれ、ルーン。何か言ったか?」
「特に何も」
プロクスは首を捻りつつも、不機嫌なままのユウレイルに話しかける。
「そろそろ機嫌直せよ。それに、レクスルくんとやらも告白したらしいのに弟子にとったらしいじゃないか」
「酒で酔っ払って、ベッドに連れ込もうとした奴と同じ扱いをするわけがないだろ」
「だから、その節は大変申し訳ありませんでしたって謝ったじゃないか。大体、そんなんだからいつまで経ってもど──」
ユウレイルの拳がプロクスの腹に炸裂し、プロクスは地面に崩れ落ちた。
レクスルのプロクスに対する目も冷え切っており、そんな目も出来たのかと表情を変えることなく心の内でフーヤは驚く。
「そ、それにしても、ルーンさんってモテモテなんですね」
カザヤが女神さんという呼び方を改めつつ、話の流れを変えようとする。
「そうなんだよね、別に特別に美人であるとかいうわけでもないんだけど」
「それ、自分で言う?」
ルーン=ルナティックは余計なことを言ったフーヤを軽く睨む。
「まあ、ルーンは変な奴ばかりに好かれるから」
ユウレイルがしみじみとつぶやく。
「それだと、自分も変な奴になりませんか?」
「なんというか、自分が普通の枠に収まっていたのは遥か昔の話というか、なんというか」
フーヤの問いかけに遠い目をしながら答えるユウレイル。
プロクスが腹を押さえてうずくまりつつも、笑いながら首を縦に振って同意の意を伝えていたため、ユウレイルに背中を踏まれることとなった。
地面で呻いているプロクスを気にかけることもなく、ルーン=ルナティックはフーヤをじとりとした目で見る。
「ユウレイルに対しては改まった態度とるんだよね。どう思う?レクスルくん」
「よくないと思います。それと」
ルーン=ルナティックの言葉にいささか食い気味に答えつつ、何かをいいかけて止まるレクスル。
「それと?」
フーヤが先をうながす。
「場所、変えませんか?」
フーヤたち六人が集まっていたのは、戦っていた場所の中心辺り。
ゴブリンの死体が転がり、地面もえぐれたり、隆起していたり、焼け焦げていたりしている。
僅かに腐臭も漂っており、長居するのにふさわしい場所とは言えないだろう。
「そうだね」
ルーン=ルナティックが苦笑いしながら同意した。




