64.集団発生⑧
「まあ、魔法使えばそんなに抵抗ないだろうから」
「それもそれでどうなんだとは思うけど・・・」
フーヤがカザヤを空気の層の中から無理矢理引っ張るようにして連れ出す。
ちなみに嘔吐物があるため異臭遮断のための空気の層はそのままにしている。
「大体、ドラゴンには意気揚々と攻撃しかけてた」
「それは、ドラゴンに興奮してたから。それに、ドラゴンだけを相手するのとゴブリンの死体が転がりまくるのは違うというか、ドラゴンは巨大すぎて死体って感覚も薄かったし・・・・・・」
カザヤがしどろもどろになりつつも弁明する。
「・・・なるほど」
「納得してないな?」
「よく分からない」
フーヤは首をかしげ、やってくるゴブリンにまた風の刃を放つ。
カザヤはゴブリンを極力視界に入れないようにとフーヤを真っ直ぐ見つめていた。
「というか、フーヤ、その、だな・・・・・・最初に、その、殺した時とか、何も思わなかったのか」
「最初?」
フーヤの動きが止まる。
「フーヤ?」
カザヤがフーヤのまとう雰囲気が変わったことに戸惑うようにして名前を呼ぶ。
「・・・覚えてない」
フーヤは吐き捨てるようにそう言うとゴブリンに対して攻撃を加え続ける。
既にゴブリンの死体が円を描くようにして積み上がりつつあり、腐臭が積み重なりカザヤは鼻を押さえる。
「・・・・・・火葬って、意味あったんだな」
「火葬する?どうぞ」
フーヤが淡々とカザヤを促す。
カザヤは逡巡するようなこわばった表情をした後、炎を放つ。
炎はゴブリンを焼き、燃え上がった。
炎に触れたゴブリンは死体だろうが生きていようが等しく燃え上り、僅かな灰を残して消えていった。
「なんか、生きてるのも燃えたんだけど」
「・・・あの勢いなら燃えるだろうね。でも抵抗、あんまりなかったよね?」
「そのニヤリとしたわざとらしい笑顔が無茶苦茶気に触るんだが・・・・・・まあ、なんか実感ないんだけど」
カザヤが口に手を当てる。
「吐くならさっきのところでやってよね」
「・・・・・・ねえ、本当に何も思わないの?」
「さて、どうでしょう。というか、さっきから無茶苦茶呑気におしゃべりしてるわけですけど、殺るか殺られるかみたいな状況だからね、これ。戦場みたいなものだからね、ここ」
炎に怯えたのかゴブリンの攻撃が一旦止む。
しかし、また攻撃が始まるのも時間の問題だろう。
フーヤは先制攻撃と言わんばかりに風の刃を遠くに居るゴブリンに向かって放ち続けている。
「・・・・・・フーヤって、レクスルと話してる時はなんていうか言葉を短く済ませようとするけど俺と話をしてる時はよく長文話すよな」
「お前は言わないと伝わらないことが多すぎる」
フーヤはそう言いつつも攻撃の手を緩めることはない。
既に単なる作業化している。
わざわざこちらに向かってゴブリンも少しずつ増え始めたが、近づくことも許されずフーヤに瞬殺されている。
「酷いな、でも、話してる時のお前楽しそうなんだよな」
「たの、しそう?」
フーヤの動きが止まる。
「そう、楽しそう。レクスルと話してる時の方が分かりやすいけど、なんかやり取り楽しんでるのが伝わってくるんだよなって、危ない!」
ゴブリンがフーヤの直ぐ近くまで迫っていた。
カザヤが咄嗟に魔法でゴブリンを吹き飛ばす。
なお、咄嗟だったため加減が一切出来ておらず、吹き飛ばした方向のゴブリン全てをことくごとく吹き飛ばし、ついでに地面も表面が少し削られている。
「急にどうしたんだよ、フーヤ」
「悪い・・・・・・なあ、楽しいってどんな気持ちだ?」
「はあ?」
カザヤはふざけてるのかとフーヤの顔を見るが、思いの外真剣な顔をしているフーヤに口をつぐむ。
「・・・いや、初めて、言われたし、実は、よく分からないんだよ、言葉として理解はしているんだが」
「・・・・・・なるほどな。レクスルは不必要にずかずかと踏み込んでいかないタイプなのか。まあ、その反応を見るに踏み込んだ方が逆に良さそうだな。ゴブリンを片付けたらゆっくり話でもするか」
「・・・分かった」
◇ ◇ ◇
「ということで、ゴブリン約二万匹の討伐完了!お疲れ様」
ゴブリンも一掃され、フーヤたちはルーン=ルナティックに集められていた。
「え、そんなに居たの?」
「数なんてどうでもいい」
「いや、フーヤはそうかもしれないけどさ」
「途中から吹っ切れてガンガン攻撃してたし、精度悪いし力押しだったから修行した方がいいと思うけど」
「嗚呼、うん、それは分かってるから。そんなこと言わずにこれから教えてくれよ」
「しょうがないな、いいよ」
フーヤとカザヤのやり取りを見たルーン=ルナティックがつぶやく。
「なんか、いつの間にか無茶苦茶仲良くなってない?」
「そうですね」
レクスルが表情を変えずにうなずいた。




