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63.集団発生⑦


「・・・すまん、吐く」


 カザヤの言葉を聞いて、フーヤは無言でカザヤを突き飛ばす。

 勢いよく吐瀉物を吐き散らすカザヤを見て、申し訳程度に空気の層でカザヤの周りを囲う。

 攻撃を防ぐと同時に臭いを完全に遮断しつつ、フーヤは尋ねる。


「何で急に?」


 カザヤが吐き散らしたのは少しビビりながらもフーヤと共にゆっくりと丘から降りてすぐである。

 ちなみに、レクスルはルーン=ルナティック様にいいところを見せたいという理由により突撃するように既に遠くに行っている。

 フーヤが遠目で見る限り、レクスルは聖剣でゴブリンの首を次々と刈り取り、炎でまとまっているゴブリンの群れを焼き尽くすという中々に容赦のない戦い方をしている。


「・・・・・・遠くから、見てる分には、よかったんだけど、グロ耐性ないの忘れてた」


 そう答えるカザヤの顔は青白いままである。


「それ、戦える戦えない以前の話だし、吐くとかよっぽどでは?」


「・・・逆に、なんで平気なのさ?というか、殺しまくる罪悪感とかその辺りないの?」


 カザヤの言葉に顔を背けるようにフーヤは答える。


「ない。そういう定めの元生まれたから」


「・・・なんか、カッコいいな。それはそうと色々とどうなんだそれ。どんな世界なんだよ」


 フーヤはそれには答えず、近づいてきた複数のゴブリンに風の刃を放つ。

 ゴブリンの首がいくつも地面に転がり、体が崩れ落ちる。

 地面は血に染まり、カザヤはその凄惨な状況に顔を背ける。


「・・・・・・嫌がらせ?」


 カザヤが口元を抑えながらつぶやく。


「・・・荒療治?」


「・・・いやいやいや、限度があるでしょ」


 そう言うのとほぼ同時に吐き戻すカザヤを見て、フーヤは小さくため息をつく。


「ならどうしろと?遅かれ早かれ慣れないとどうしようもない」


 近づいてくるゴブリンの頭を風の刃で刈り取りつつもフーヤはカザヤと会話を続ける。


「・・・・・・だって死体だぞ?」


 青白い顔のまま目を見開くカザヤ。


「・・・人間じゃないから、まだいいと思う」


「・・・待て、その発言から察するに既に人間やってるな?」


 顔を分かりやすく背けるフーヤから一歩後ずさるように足が動くカザヤ。

 目の前の血溜まりを見つめつつ、自身の服に返り血がないことを確認しながらフーヤはつぶやくように、それでいてカザヤに聞こえるように言う。


「まあ、そういうこともこれから先あるだろうから」


「あって欲しくないんだが?この世界に法とか人権とか・・・」


 フーヤは必死さを感じる勢いで早口になるカザヤをちらりと見ると、近づいてくるゴブリンの頭を風の刃で刈り取りつつも答える。


「法は一応あるけど、人権は概念自体がない」


「・・・そうか、でも一応法で人殺しは駄目ってなってるんじゃ?」


 首をかしげるカザヤ。

 相変わらず顔色は悪いが吐き戻す様子は見られないことを確認しつつ、フーヤはゴブリンへの攻撃を続ける。


「なってはいるけど、例外規定あるので罪に問われないことも多いよ?それに、場合によっては法がまともに機能してなかったり」


「・・・ええと、駄目じゃん」


「それで、体調の方は?」


「・・・最悪ではあるけど、もう出すものがないから吐き戻すことはないと思う」


 青白い顔のままではあるが、先程よりは落ち着いた様子を見せるカザヤ。

 なるべくゴブリンの死体を見るのを避けて心の平穏を保とうと努めているようである。


「なら良かった」


「良かったの意味を辞書で引き直してこい」


「あれ、何か語彙増えてる?」


「だとするならば、元凶はお前だからな」


「・・・・・・・・・そうか、それは良かった」


「良くないよ!というか、何でさっきからゴブリンこっちに迫ってくるんだよ!既に死体が山のようになってるじゃん!」


 カザヤが叫ぶ。

 そして、急に叫んだことによりゲホゲホと咳き込む。


「たぶんだけど、カザヤ弱そうだから寄ってきてる」


 フーヤはそう言いつつ、ゴブリンに向かって風の刃を放ち続ける。


「え?俺、狙われてるの?」


 カザヤの口元が引きつる。


「・・・たぶん」


「・・・じゃあ、この地獄みたいなゴブリンの死体だらけの状況ほとんど俺が生み出したようなもの?」


「さあ?まあ、僕としては楽出来てるし、囮役ご苦労さま」


 フーヤは茶化すように言いつつも、ゴブリンの頭を淡々と刈り取り続ける。


「もしかして、さっきから同じ技しか使ってないのも?」


「楽したいからだけど、それがどうかした?」


「・・・・・・ここまでくると、逆に凄いという感想しか出てこないな」


 カザヤの顔にうっすらと笑みが浮かぶ。


「それより、戦えそう?」


「・・・分からない」


 その言葉にフーヤがにんまりと笑う。


「よし、やってみようか」


「スパルタ?」


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