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62.集団発生⑥

投稿忘れてました。今投稿させていただきます。


 ゴブリンの大群。

 間違いなくそれは脅威であり、大抵の者は数に押し潰されるのが関の山だろう。

 しかし、丘の上に居るフーヤたちの目の前に広がっている光景は違った。


「大地よ、形を変えよ!」


 短縮詠唱と呼ばれる無詠唱や創作詠唱の次に高等な技術を用いる男。

 フーヤたちにとって見覚えのないその男は、燃え盛るような紅く逆立つ髪と焼けた石炭のような瞳を持ち、裾の擦り切れた白い道着のようなものを身に着け、腰に巻かれた長靴鮮やかな赤い帯が風に吹かれてたなびいていた。

 手には大柄な体格を加味しても大きすぎる、ほとんど身長と変わらぬ大剣を地面へと突き刺す。

 それを引き金として、地面が隆起したり、降下したりして地形が変わる。

 地形の変化によって、ゴブリンの大群は分断され強みである数の暴力の効果が弱まる。


「プロクス!危うく巻き込まれるところだったじゃないか!」


 そう叫びつつも、地形の変化によって出来た穴に飛び降りるユウレイル。

 普段身に着けている白いローブは既に土や返り血が付着している。

 右手には片手剣を持ち、左手に持っている複数の刃物を投擲する。

 刃物はそれぞれ別のゴブリンの眉間に深々と突き刺さり、命切れる。

 よく見ると、刃物は持ち手の部分に布が巻いてあるだけの単なる刃であり、持ち運ぶのにも危険が伴う殺意の高い代物である。

 投げた刃に倒れなかったゴブリンはユウレイル目掛けて殺到するが、右手に持つ片手剣により次々と切り捨てられる。

 後ろからくるゴブリンへは刃物を的確に眉間に向かって投げ、あっという間にその穴に居たゴブリンは全滅する。


「ユウレイルが仲間の攻撃に巻き込まれるところなど、想像も出来ん」


 その様子を隆起した地面に立ちながらつぶやくプロクスと呼ばれた男。

 ユウレイルは既に穴から軽業師のように素早く出て、穴の外に居たゴブリンを手当たり次第に斬りつけている。


「おーまたせ!」


「遅いぞ、ルーン。もう暴走が起こりかけてる」


 ルーンが丘からプロクスの居る隆起した地面に飛び移る。


「まあまあ、一応援軍も連れてきたことですし」


「援軍?」


 プロクスが丘の上をちらりと見る。


「今の剣先っていうやつ全然見えなかった。というか、すっごくカッコいい」


「流石師匠だな」


「え、レクスルの師匠なの?あんなに凄い技を使える人が!?」


「・・・何で魔法使わないんだ?」


「師匠、魔法を使うと直ぐに終わってつまらないらしい」


「・・・戦闘民族か何か?」


 ユウレイルの戦い方に目を輝かせるカザヤ、自身の師匠をカザヤに褒められて少々ご満悦のレクスル、魔法を使わないで殲滅したことに関して少し引き気味のフーヤを視界に捉えるとプロクスはつぶやく。


「大丈夫なのか?ユウレイルが戦闘民族かと疑うのは分かる。俺も戦いは好むがあそこまでじゃないからな」


「ユウレイルについては、いつものことだから置いておくとして、まあ、この戦場に放り込んでも死なない程度の実力はあるから」


 その言葉を聞いてプロクスは頭をかきつつも、大剣を地面から引き抜く。


「そう言うなら信じるけどよ。俺は地形変化に魔力をほとんど使った。だから、直接ぶちのめしてくる」


「うんうん、いってらっしゃい」


 ルーン=ルナティックが投げ槍気味に手をひらひらさせる。

 プロクスは地面に降り立つと大剣を薙ぎ払うように振り、近くにひしめいていたゴブリンを吹っ飛ばす。


「私からすると戦い方の違いだけで二人とも大差ないと思うんだけど」


 吹っ飛ばされたゴブリンは宙を舞い、別のゴブリンに当たったり、頭を勢いよく打ちつけたりしている。

 プロクスはそんなゴブリン一体一体を丁寧に大剣で叩き潰すようにとどめを刺しつつ、新たにゴブリンを吹っ飛ばしている。


「確かに、ルーン=ルナティック様の言う通りかもしれませんね」


 レクスルが同意を示すようにうなずく。


「というわけだから、適当に参戦しておいて。私はちょっと離れたところで新しく作ったこれの性能テストしてくるから」


 ルーン=ルナティックは『異空間収納』から取り出したらしい道具をいくつか手に持ちながら告げる。


「ええと、女神さん、それって適当過ぎるというか丸投げですか?」


 カザヤが呆然としたように言う中で、フーヤはルーン=ルナティックの持つ道具に目を留める。


「・・・それ、前世のおもちゃ売り場にあったような」


「ちゃんと、本当に使えるように改造してあるから」


「守備範囲、アニメだけでもないのか」


「そういうこと。まあ、普通に目茶苦茶面白いからな。馬鹿にするんじゃないよ。じゃあ行くからよろしく」


 ルーン=ルナティックは地面を蹴って飛び上がり、あっという間に視界から消えた。

 一気にかなり遠くへ移動したようである。


「とりあえず、下へ降りよう」


 レクスルが笑顔で告げる。


「フーヤ、レクスルは何で笑顔なんだ?」


「さあ?」


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