59.集団発生③
「さて、話が大幅に脱線したが、話を戻そう。魔物の集団発生の話だったね」
ルーン=ルナティックが手を軽く叩いて、話を切り替える。
「まあ、簡潔に言おう。勇者パーティーの皆様の助力を請いたい」
「喜んで引き受けます」
食い気味に告げるレクスルをよそに、フーヤは考え込むそぶりを見せた後で口を開く。
「つまり、名をあげるために?」
「そうだね、まあ今回は英雄パーティー数名と勇者パーティーが合同でという名目にはなるけど」
ルーン=ルナティックがその白髪を指でもて遊びながらも、フーヤたちににっこりと笑いかける。
「・・・・・・今後のためには仕方ないか」
フーヤが大きくため息をつく。
「よく分からないけど、とりあえず集団発生した魔物をやっつければいいのか?」
カザヤの疑問にルーン=ルナティックは大きくうなずく。
「その通り。とりあえず、英雄パーティーからは私とユウレイルとあと二人くらい参戦出来ると思う。たぶんだけど」
「あと二人?」
フーヤの訝しげな声にルーン=ルナティックはうなずいてみせる。
「私とユウレイル以外とはまだ会ったことなかったと思うけど、その中から近場に居た二人ならなんとか引っ張ってこれるはずだから。そのうちの一人はこっちから頼むまでもなく参戦してくるだろうけど。ただ、もう一人は頼みこんでも参戦してくれるかまだ分からないかな。まあ、例え乗り気ではなかったとしても参戦させるけど」
ルーン=ルナティックはすっと立ち上がる。
「そろそろかな」
ルーン=ルナティックが紅い瞳を扉へと向けると、部屋の扉がゆっくりと開く。
「ルーン、いい加減にして下さい。どの道をすすんでも戻ってくるようになっているのですが」
そう言いながら部屋に入ってきたのは、明らかに疲弊しているゼロイ。
「え、さっきの人だよね?」
カザヤが小さな声でつぶやく。
「紹介しようか、英雄パーティーのひとり『流星の魔導師』ことロレ=ツァウバーだよ」
ルーン=ルナティックの満面の笑みの紹介を聞いて、当の本人であるゼロイは首元の水色のスカーフを剥ぎ取るようにとる。
その瞬間、ゼロイの姿が変わる。
つけていたはずの眼鏡が消え去り、短かった髪が一気に腰まで伸びる。
髪色も目立たない栗色から鮮やかな金髪へと変わり、瞳の色も目立たない灰色から目を引く水色へと変化している。
そして、何よりも大きな変化が胸。
誰が見ても一目瞭然なほどたわわな胸である。
「女性、だったんですね・・・?」
何処となく挙動不審なカザヤがつぶやく。
この変化には流石のフーヤも目を見開き、レクスルも驚きのあまり引きつった笑みで助けを求めるかのようにルーン=ルナティックを見つめる。
ルーン=ルナティック自身は、三人の反応を堪能するかのようにニヤついていた。
「男装は元々趣味みたいなものですし、女性の姿だと胸を見て寄ってくるアホ共をあしらうのが大変ですので」
そう言いながら、ゼロイことロレはルーン=ルナティックの隣にどかりと座る。
フーヤたち三人が立ちっぱなしなのと対照的である。
「私から簡単に紹介させてもらうと、ロレは魔法の才に関しては天才なのに、本人が男装にしか興味ないということで英雄パーティーで武勲打ち立てて早々にそれを理由に現役をしりぞいたんだよ」
ルーン=ルナティックが説明すると、レクスルがゆっくりと話し出す。
「思い出しました。ロレ=ツァウバーの名前なら聞いたことあります。攻撃魔法の腕もさることながら、日常生活に役立つ魔法をいくつも考案するという偉業を残しながらも、研究のため隠居してしまったという」
「嗚呼、あの無理矢理研究させられた魔法はそういう話になってたんですね。まあ、ルーンとの取り引きで研究三昧の地獄から抜け出せたのですが。今は叔母様に頼み込んで狩猟ギルドの受付で男たちを眺めてどうすればより完璧な男性の姿に見せかけられるのか日々研究中ですね」
ロレは早口でそう言い切るとため息をつく。
「魔法を使えば見た目は誤魔化せますが、仕草は魔法ではどうにもなりませんし、もっと観察して研究して技術を磨かねば」
「もしかして、英雄パーティーって変わり者しか居ない?」
フーヤが思わずという風に言う。
「それをお前が言うのか変わり者筆頭」
「それもそうだな」
カザヤがじとりとした目で言った言葉にレクスルも深くうなずきながら首肯する。
「・・・・・・否定はしないが、レクスルもカザヤもそこまで人のこと言えないと思う」
「俺はそもそもこの世界の常識とかまだよく分かってないから仕方ないところがある」
カザヤが自信満々という様子で語気を強めて言い切る。
「胸を張って言うことではない」
フーヤがそう言うとレクスルもうなずく。
「面白い子たちですね」
ロレが冷めた調子でつぶやき、ルーン=ルナティックがうなずく。
「だよね」




