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58.集団発生②


「それで、質問なんですけど、女神なんですか?本当に?」


 誰かが質問してもいいと許可を出す前に既に質問を話し始めるカザヤ。


「ルーン=ルナティック様はその美貌に違わず、素晴らしい女神であらせられる。常であれば、我々と話すことすらない方であるのに実に親しげに接して下さるまさに女神」


 レクスルが息継ぎもほぼなしで語る。


「何故、その質問を?」


 フーヤが首をかしげつつ、話を遮ってまでしたい質問がそれであったのかと多少訝しむ様子でカザヤを見る。


「転生した時に会った女神と違うからというのもあるんだけど、髪と目の色変えたら前世の近所のお姉さんにそっくりだったから」


「そうか、君。ルルイエッティが担当した転生者か。一応、ルルイエッティに任せても問題無さそうだったからそっちの方には全く関わってなくて、他の手の開いてる神にちょっと見張り頼んだくらいだったから、顔も知らなかったよ。何か、ごめんね。ええと、それで前世のお姉さんの名前とか分かる?」


 ルーン=ルナティックがカザヤへと視線を向ける。


「フルネームじゃないけどルナって名乗ってた」


「嗚呼、なるほど、ちょっと待ってね」


 ルーン=ルナティックは自身の米神に指を当てると、くるくる回し始める。


「嗚呼、なるほどなるほど。少年、確かに前世で会ったお姉さんとやらは我だ」


 ルーン=ルナティックのまとう雰囲気が変化する。


「なんだか、急にお姉さんらしくなった」


 カザヤが目を丸くする。


「・・・どういうこと?」


 フーヤがつぶやくように尋ねる。

 ルーン=ルナティックが微笑むとまとう雰囲気は元に戻り、緑茶をすすると説明を始める。


「簡単に言ってしまえば、神っていうのは同じ存在が複数同時に存在してたりするんだよね。いわゆる遍在してるということなんだけど。少年、つまりカザヤくんが会ったのは地上で人間のふりをして暮らしている私のうち一人だったってこと。まあ、同じ存在ではあるけど、私自身神だけど人間に限りなく近いこともあって情報処理の限界もあるから、記憶の共有は必要最低限なんだよ。欲しい情報があったら引き出せないといけなくて」


「だいたい理解した」


「なるほど、流石ルーン=ルナティック様ですね。幅広くご活躍されていらっしゃるとは」


 フーヤが短く言葉を返し、レクスルが賛辞の言葉を送る。


「ええと、つまり、どういうこと?」


 カザヤが困惑したように言うと、フーヤは鼻で笑う。


「別に理解しなくていい。難しいから」


「おい、また馬鹿にしてるだろ。分かるからな。馬鹿にされていることくらいなら普通に分かるからな」


 カザヤに睨みつけられ、フーヤは軽くため息をついた後に説明する。


「・・・自分が何人も居るってこと。ただし、記憶は少しだけしか共有してない」


「だいぶ分かりやすくなった。でも、記憶を少ししか共有してないって、全部共有した方が便利なんじゃないか?」


「話、本当に理解してないんだな。分かりやすく説明すると、本を同時に何十冊読めるのかみたいな話」


 少し小馬鹿にしたような含みもあったが、カザヤはそこは気にせず素直に想像する。


「物理的に無理。読めたとしても頭パンクする。つまり、頭パンクするから無理ってこと?」


「そういうことか、なんとなく分かった」


「ようやくか」


「ところで、さっきは何気なくスルーしちゃったけどヲタ女神ってどういうこと?」


 カザヤとフーヤのやり取りをにこやかに見守っていたルーン=ルナティックが飲んでいた緑茶でむせる。


「文字通り、ヲタクの女神だから」


「フーヤくん、そろそろその呼び方やめてくれないかな。大体、ヲタクと呼べるほど造詣が深い訳でもない。というか、それを言うならフーヤくんもラノベの読み込み具合半端ないから人のこと言えないと思う」


 フーヤが御詫びとしてルーン=ルナティックに要求していた本の大半がライトノベルであった。


「僕はラノベは読むけど、アニメとかは見ないからな」


「え、アニメは普通に俺も見てたけど」


 カザヤがそう言ってあげたタイトルは有名なものもあったが、転生モノや知られざる名作みたいなものもあり、意外にもアニメ好きであることがうかがえた。


「カザヤこそ、アニヲタを名乗っていいんじゃないか?」


「いやいや、好きで見てただけでオタクを名乗れるほどじゃないよ」


「そうだよね、そうだよね、というわけだからヲタ女神とかいう呼び方辞めてね」


 ルーン=ルナティックがわざとらしくうなずきつつ言う。


「分かった、ヲタ女神」


「おい」


「分かっただけで辞めるとは言ってない」


「そういえば、レクスルはさっきから喋ってないみたいだけど」


「ルーン=ルナティック様の美しさを感じていただけだ」


「なんだか、レクスルの方がよっぽど限界オタクみたいなこと言ってる」


「・・・確かに」


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