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54.先発隊①


「それにしても、改めて見るとかなり大きいよな」


 カザヤが目の前のドラゴンを見つめる。

 昨日、スープに使った分の肉を剥ぎ取った部分以外は倒した時のままの状態で放置してある。

 勿論、『異空間収納』に納めることも出来るが、ドラゴンを倒した証拠がないと意味がないというフーヤの一言でそのままにしてある。


「ヴェルト種のドラゴンはドラゴンの中でも大きい方だから」


「ドラゴンにも種類があるのか!?」


 フーヤの言葉にドラゴンに歩み寄っていたカザヤが目を輝かせてフーヤを見つめる。


「・・・ドラゴンの図鑑があるから、今度貸す。ちなみに、今確認されているのが三十種類で未確認の種類もいるとされている。個体数はどの種類も少ないが、長寿な上、頑丈なため絶滅の兆しはない。大抵が山奥や洞窟の深くとかの未開の地に住んでいるが、たまに人里にやって来る個体もおり、そういう個体だけが人に危害を与えるために討伐の対象になっている」


「本を貸してもらうまでもなくドラゴンについて知りたい情報半分くらい解説された。まあいいか」


 カザヤがそう言って、ドラゴンの方へと向き直る。

 フーヤは隣に立つレクスルに視線を向ける。


「確認だけど、レクスルとカザヤが倒したということでいい?」


「そのことなんだが、フーヤ。カザヤと話し合って俺が倒して、二人に少しだけ手伝ってもらったということにすることにした」


「・・・僕としては不都合はないからいいけど、カザヤはそれでいいの?」


 フーヤの疑問にカザヤは軽い調子で答える。


「自分の手柄でないことを手柄にするのはよくないだろ。こういう嘘って、必ずいつかボロが出るだろうし」


「カザヤにも、そんな考え方の引き出しってあったんだ」


「フーヤ、まさかとは思うがまだ俺のことを馬鹿にしてるのか?」


「事実を述べただけ」


「それが一番腹が立つな。レクスル、こんな態度のフーヤについてどう思う?」


「仲良く喧嘩してるなと思う。俺は頼むから巻き込まないでくれ」


 二人のやり取りを笑顔を貼り付けたまま見ていたレクスルはそれだけ告げると口を閉じる。


「それは、流石にないんじゃない?」


 カザヤが助けを乞うようにレクスルを見るが、レクスルは分かりやすく目を逸らす。


「茶番は置いておいて、そろそろ先発隊が来そう」


 フーヤの言葉にレクスルとカザヤの視線がフーヤを向く。


「このやり取りが茶番だとかいう認識はあったんだ。いや、それにしては発言にとげが多かったような気がしなくもないような・・・」


「何故、もうすぐだと分かった?」


 ぶつぶつとつぶやくカザヤと異なり真剣な表情でフーヤに問いかけるレクスル。


「まだ見えない距離だけど、『万能感知』で人の隊列が来てるのが分かる」


「え、そうなのか?全く分からないけど」


 フーヤの言葉にカザヤが困惑した声を返す。

 カザヤも『万能感知』の能力自体は使えるはずである。

 しかし、フーヤとは違い、人が近づいてきていることは一切分らなかった。


「・・・『万能感知』って、練習しないと上手く使えないんだよな」


「そうなんだ。ところで、今の熟練度までどのくらいの期間が必要だったか聞いてもいい?」


「熟練度って、ゲームみたいな・・・まあいい。期間は六年くらい」


 無表情で言い切ったフーヤに対して、目をこぼれんばかりに見開くカザヤ。


「六年は長すぎない?」


「まあ、そもそも女神がくれる能力は『異空間収納』ですら出し入れに少しコツが要るし、『魔力制御補助』とか本当に補助するだけだから魔力を制御するための特訓は能力の有る無し関係なくしなくてはならないから、実は微妙といえば微妙」


「まあ、言われてみれば確かにそうかもしれないけど、自動的に発動してくれるようなやつは問題ないし、何より女神に聞かれたらよくないんじゃ?」


「今更過ぎる」


「今更って、まさかとは思うけど」


 カザヤが視線をすいっとレクスルに向ける。

 これまで静観して二人のやり取りを見ていたレクスルは、うなずくと口を開く。


「フーヤはルーン=ルナティック様という女神に喧嘩を売るような真似をしている。俺としては、ルーン=ルナティック様という素晴らしき存在にそのような真似をするのは辞めるべきだと思う。第一、ルーン=ルナティック様のような器の大きく、慈悲深く、美しい存在に対等のように接しようということ自体がとてつもなく愚かな行動であると言える」


「ええと、急に語り出したけど・・・」


 突然フーヤに対して怒りに近い感情を向け始めたレクスルにカザヤが困惑した表情をする横で、フーヤがカザヤの耳元で囁くように告げる。


「レクスルはヲタ女神のファンだから」


「フーヤ、その呼称辞めて欲しいってルーン=ルナティックにやんわりと言われていたよな?何故、使い続けてるんだ?」


 一瞬、カザヤにはレクスルの貼り付けたような笑顔の裏に般若の面のようなものが見えた気がした。

 カザヤは険悪な雰囲気を押し退けようとするように小さく叫んだ。


「ええと、あ、ふ、フーヤの言っていた隊列が肉眼で見える距離に来てるよ」


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