53.情報交換⑧
「出会った頃か?どうと言われてもな・・・」
レクスルは言葉を探すように視線を彷徨わせる。
「フーヤは変わり者であったことには違いないな。別に変な噂とかを立てられたりもしてないのに孤立していた。他の人を寄せ付けないという様子だった。ただ、不思議なことに対人関係が苦手というわけでもないようなんだ。偶にどうするべきか悩むように動きが止まることはあるが」
「待て、対人関係が苦手とかでないなら俺に対する態度はおかしいだろ」
カザヤの強い口調に表情を変えることなくレクスルは言葉を続ける。
「嗚呼、だからフーヤにしては珍しいと思った。わざわざ突き放すような言動だったからな。いや、偶に突き放すような言動をすることはあったか、カザヤほど執拗ではなかったが。まあ、噂とかに態度が左右されることもないし、いい奴ではあるんだがな。何処かひねくれているというか」
「なんか、よく分かるような分からないような。とりあえず、理解のあるレクスルみたいな友人が出来たことがフーヤにとっての幸運だったのは分かる」
カザヤは神妙な顔つきでそう言うが、レクスルは真剣な表情で口を開く。
「いや、むしろフーヤに救われたのは俺の方だ。そういえば、ドラゴンを倒した手柄をフーヤは俺たち二人に押し付ける気満々みたいだが、カザヤはそれでいいのか?」
「あーそのことなんだけどさ、やっぱり俺はほとんど何もしてないわけだし、レクスルが倒して俺とフーヤがそれを手伝ったの方がいいんじゃないかと」
カザヤのへにゃりとした笑みにレクスルは目を瞬く。
「目立ちたいみたいなことを言っていたよな?」
「嘘はいけないというか、こういうのって案外直ぐにぼろが出てバレるものだし・・・その方がいいかなと」
頬をかきつつも、カザヤはそう言い切る。
「なるほどな。素直で真面目なのは美点だと思うぞ」
「そう言われたのは初めてだけど、褒められるっていうのは気分がいいものだな」
カザヤはそう言いながら立ち上がって身体を伸ばす。
「そうだな。カザヤさえよければ、これからも俺たちに着いてくるか?」
カザヤはレクスルのその言葉に驚き混じりの苦笑を返す。
「・・・とっくにそのつもりだった」
「そうか、まあフーヤは嫌な顔するかもしれないけどな」
「なんか、簡単に想像出来てしまってなんか負けた気がする」
カザヤが顔をしかめるのを見て、レクスルは苦笑いする。
「確認なんだけど、レクスルとフーヤは魔王を倒すための修行の旅の途中ってことだよね?」
レクスルはうなずくと軽くあくびをしつつ、話を続ける。
「そうだな、近いうちに現れるとされている魔王を倒すためだ。まあ、フーヤは目的が違うといえば違うけれどな」
「目的が違う?まあ、あの様子を見てるとフーヤが真面目に魔王を倒すことを目的にしてるという方が違和感はあるけども」
カザヤはそう言いつつも、先をうながすようにレクスルに目配せする。
「フーヤの目的は隠居生活だな」
「予想の斜め上なんだが!?」
「貴族の責務を果たしたくないとか言ってたな。誰にも干渉されずにのんびり過ごしたいらしい」
「ちょっと待て、貴族?聞いてないんだが・・・本当なのか?」
カザヤが急に恐る恐るというようにレクスルに尋ねる。
「そうだ。俺も一応王族だな。庶子だから、立場はどうしても低くなってしまうが」
「いや、待って、俺失礼な態度とりまくってたんだけど」
分かりやすく早口になるカザヤを見て、レクスルはいたずらを仕掛けた子供のようにニヤリと笑う。
「嗚呼、そうだな」
顔がみるみるうちに真っ青に変わるカザヤ。
その様子を見て、レクスルはクスリと笑うとカザヤを見つめる。
「冗談だ。大体、今更だろ。咎めるつもりなら、とっくのとうにしてるし、このままの態度で構わないよ」
「・・・・・・心臓に悪い冗談だった」
わざとらしく心臓の上あたりに手を当てるカザヤ。
レクスルはそれを見て、真剣な表情でつぶやく。
「フーヤの真似をしてみただけだったんだが、そうか。なら今後は辞めておこう」
「レクスルの中のフーヤのイメージがよく分からないな・・・まあ、いいか」
「何を話してるんだ?」
ビクリとカザヤの身体が跳ねる。
ゆっくりとカザヤが振り向くとフーヤが二人の後ろに立っていた。
なお、レクスルは驚いた様子もなく前を見つめ続けている。
「フーヤ、これからの旅にカザヤも同行することになった」
「え、嫌だ」
「予想していたとはいえ、酷いな!」
即答したフーヤにカザヤは声を上げる。
「・・・・・・でも、レクスルがそう決めたなら、いい」
レクスルはその言葉を聞いて立ち上がりつつ、フーヤに笑いかける。
フーヤは『異空間収納』に丸太小屋をしまうと、いいんだと小声でつぶやいているカザヤを横目につぶやく。
「さて、来るまで待つか」




