50.情報交換⑤
「それもそうだな」
レクスルがフーヤの言葉にうなずく一方で、カザヤは首をかしげる。
「ええと、それってどういうこと?」
「カザヤにも伝わるように説明すると、ドラゴンが出るとかいう異常事態が起きたから、ドラゴン退治のための先発隊が明日の朝くらいにやって来る」
フーヤの説明に対してカザヤがいまいちよく分からないといいたげに首をかしげるのを見て、レクスルが口を開く。
「ドラゴンが出たことを知っている人々がそのことを街に着いてから報告して、そのことを確かめに来る人たちが明日の朝くらいにやって来る」
「なるほど。考えてみれば、ドラゴンなんて確かに危険極まりないだろうし、退治しようって話になるのか」
カザヤがレクスルの言葉に納得したようにうなずく。
「普通は倒そうと思って倒せる相手じゃないから、最初にどの種類のドラゴンかとか、何処に居座っているかとか、被害はどの程度かとかを調査する先発隊が組まれる。先発隊は強さより逃げ足の速さを重宝されてる人物が集まったりしてる」
フーヤが無表情で澱みなく説明する。
「そ、そうなのか・・・?」
そんなフーヤを見て、カザヤはぎこちない笑みのまま固まり、レクスルは目を丸くした後で合点がいったのかニヤリと笑う。
「それで、先発隊の持ち帰った情報を元に作戦が組まれ、国軍が指揮される。まあ、今回はレクスルが倒したからそこまではいかないだろうけど」
「ええと、急に説明し始めてどうしたんだ?」
「・・・別にどうもしてないけど、他に聞きたいことある?」
目をカザヤからそらしながらフーヤは尋ねる。
「今、思いつく質問はないけども、本当にどうしたんだ?何か変なものでも食べたか?」
ぎこちない態度で尋ねるカザヤの表情は心配と言いたげである。
しかし、目をそらしているフーヤには見えていない。
「・・・食べてない」
不機嫌そうに貧乏揺すりをするフーヤを見て、レクスルは笑顔のまま口を開く。
「まさか、フーヤがやきもちを焼くなんてな」
「違う」
「でも、カザヤへの説明を俺に取られたのが不満なんだろ?そういうのをやきもちを焼くとか嫉妬とか言うんだよ」
「・・・このもやもやした感情は嫉妬なのか?」
「それを俺に聞かれてもとは思うがたぶんそうなんじゃないか?」
「そう、なのか・・・あまり気持ちのいい感情ではないな」
「まあ、感情なんていうものは案外そういうものだからな」
レクスルの言葉にうなずき、考え込むように顎に手を当てるフーヤを見て、カザヤはボソリとつぶやく。
「なんか、ロボットに感情教えるみたいな感じだな」
「聞こえてるけど、なんだそれ」
フーヤはすかさずそう答えると僅かに口角を上げた。
◇ ◇ ◇
「いや、うん。ええと、確かに『異空間収納』って量にも大きさにも制限はないし、出来れば野宿で野ざらしの状態で寝たくないという気持ちは分かるよ」
「カザヤ、言いたいことがあるならはっきり言え」
フーヤの視線を受け止めつつ、カザヤは目の前に現れたものを指差し、叫ぶ。
「だからと言って、家まるごとはないでしょ!!!」
「正確には丸太小屋。雨風は凌げるが、中にはベッドしかない」
「そういう問題じゃないんだよ。気にしてるのは家の定義とかではなくてだな」
声を荒げるカザヤの肩にレクスルが手を置く。
「まあ、フーヤだからな」
カザヤは思わずレクスルの顔を凝視するが、その平然とした顔を見てカザヤは空を仰ぎ見る。
「完全に毒されている」
「どういう意味?」
フーヤはそう言いつつも、たった今『異空間収納』から出した丸太小屋を見る。
一見、しっかりした構造の建築物のようにも見えるが持ち運ぶ都合上、基盤がしっかりしているはずもなく案外脆い設計になっている。
布張りの天幕よりはベッドで寝られたり雨風の心配をしなくてもいいというだけである。
見た目は質素で、丸太小屋と聞いてほとんどの人が想像するような感じである。
中はベッド二つがギリギリ置けるだけの空間しかない。
「ベッド二つしかないから、レクスルとカザヤが使って」
「フーヤはどうするんだ?」
レクスルが首をかしげる。
「見張りしてる。寝ないくらいなんともないから」
フーヤの言葉にレクスルとカザヤは顔色を変える。
「そういう問題じゃないし、普通は見張りは交代でするものだぞ」
「疲れは寝ないととれないしな。レクスルの言う通りだ」
「別に寝なくても問題はない。二週間程度なら起きていても問題ない」
「いや、それは問題ないのではなく気絶しているだけなんじゃ?」
カザヤがそうつぶやく横で、レクスルはフーヤの腕を掴む。
「なんとなくは知っていたが、これまでは立ち入らなかったからな。だが、これからは共に旅をする訳だから必要なことだ。フーヤ、最後に寝たのは何時だ?」




