48.情報交換③
「ごちそうさま。いっぱいあったのに案外すぐなくなったな」
カザヤは腹が満たされて気持ちが落ち着いたのか、穏やかに口火を切る。
「そうだな。ドラゴンの肉も最初は不安に思ったが、美味しかったな」
レクスルが笑顔でそう言いながらフーヤを見る。
「なら、良かった」
フーヤはぼんやりと空を眺めたかと思うと、頭をくしゃくしゃとかきまわしながら口を開く。
「カザヤ、すまなかった。僕自身、初めて知った感情相手に興奮して暴走してしまったみたいだ」
「まあ、いいよ。俺は心が広いからな」
「それ、自分で言うのか?」
「別にいいだろ」
軽口自体は叩き合っているものの、先程のような殺伐とした空気感はない。
そのことに、レクスルはそっと胸を撫で下ろす。
「今更な質問だが、カザヤはこの世界に来てどのくらいなんだ?」
「どのくらいと言われても・・・・・・カレンダーとかないからなぁ」
「体感でいい」
「1ヶ月とかそんなもんかな、たぶん」
「赤ん坊からじゃないとそのまま能力だけ貰って放り出される感じなのか?」
「そうだな。人の居ない草原に放置されたからどうしようかと思った」
「・・・適当だな、その辺り」
表情がコロコロ変わるカザヤに対してフーヤは完全に無表情のまま話をしている。
レクスルはそんな様子を見ながらも二人の会話に口を挟む。
「そういえば、フーヤ。フーヤの能力とカザヤの能力は一部が違うだけでほとんど同じなんだよな?」
「そうみたいだけど、それが何?」
「いや、さっきのドラゴンとの戦いを思い出して、フーヤとカザヤに結構実力の差がありそうだったからな。少しそれが気になった」
「確かに俺、さっきの戦いでほとんど役立たずだったな」
カザヤが苦いものを飲み込んだような表情で遠くを見つめる。
「一応、一撃は入れられてたから落ち込まなくても・・・」
「まあ、魔力制御とか考えずに力技で押し切ってる感じだったから、精度とかよくなかったし、むしろ僕の魔法に変に関与したせいで僕の魔法の威力と相殺されてたところもあるし、駄目駄目だったね」
レクスルの励ます言葉を切り捨てるようにフーヤはそう告げる。
「そこまで言わなくてもいいじゃん!」
「でも、独学であれなら仕方ない。実戦経験とかもなさそうだし、僕は独学も多少あるけどこの世界にある理論を学んでるし、実戦経験もある。違いが出るのが当たり前。むしろ、独学であれなら強い方なんじゃないか?」
「へ?そ、そうか?」
カザヤは照れ臭そうに頬をかく。
「まあ、魔法使うのってセンスとか才能とかも関わってくるから単純に才能ないだけの可能性もあるけど。理論とか学んで実戦経験積んでもそこまで変わらないかもしれないし」
「上げて落とすな」
「事実を言っただけだけど」
「お前、本当に前世人間だった?感情とか情緒とか分かる?」
「一応、前世はちゃんと日本人だった。感情は楽しいとか辛いとか面倒とか痛いとか分かるからたぶん分かる」
たぶん分かると言いつつも首をかしげるフーヤ。
本人が意識して首をかしげたわけではなく完全なる無意識である。
「俺から一言言っておくと、これでも最近は感情豊かになってきた方だぞ。出会った時は人形みたいだったからな」
レクスルがそう言ってフーヤを真っ直ぐに見つめる。
フーヤは居心地が悪そうにもぞりと身体を震わせると、目をそらす。
「そうなのか?まあ、人形みたいなフーヤはなんとなく想像出来るような気もするけど。なんか、人の感情が分からない人外ムーブみたいな感じ」
「いや、なんだそれ」
フーヤが眉をひそめる。
「あ、今のは凄い人間っぽかった」
「人間だよ」
「フハッ、それもそうだな」
カザヤが笑い出す。
それにつられるようにレクスルも笑い出し、フーヤも口元を緩ませる。
「そうだ、フーヤ、魔法の理論とかいうの教えてくれよ。そしたら俺も凄い魔法使えるようになるんだろ?」
「まあ、教えるくらいならいいけど。凄い魔法が使えるかは才能と努力次第かな」
「別にそれでいいよ。それにしても、魔法に理論があるなんて思わなかったな。なんか、適当にちちんぷいぷいで使えるイメージだったのに」
カザヤは指で宙に円を描くように動かす。
「ちちんぷいぷいって、子供騙し過ぎないか?」
「フーヤ、ちちんぷいぷいって何だ?」
「僕もよく知らないけど、前世で有名な呪文っぽい何か」
「あ、そういえば、治癒の効果があるって前世の近所のお姉さんに聞いたことがある。陳腐な印象を受けるけどアブラカタブラと同じように力を持つ呪文なんだって」
「何者だよ、その近所のお姉さん」
「分からないけど、魔術とかに詳しいみたいだった」
「本当に何者?」
「流石に今になって知る術はないな。あ、忘れてた。ついでに、さっき話してた魔王とか勇者とかについて教えてくれよ」




