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47.情報交換②


「この紙に書かれている言葉を読み上げてくれ」


 フーヤは『異空間収納』から取り出した紙にさらさらと何かを書きつけるとカザヤに渡す。


「ええと、右から順に『草花』『夢』『心』『宝物』『大いなる』って書いてある」


「・・・この世界の公用語の文字だけでなく前世の言葉とか神代文字とか未解読の文字まで範囲に入ってるとは思わなかった」


 レクスルは口元を引きつらせているフーヤのその言葉を聞いて、するりと立ち上がってカザヤの持つ紙を覗き込む。

 紙にはこの世界で使われている公用語の文字に神代文字、さらにはフーヤの前世の世界で使われていたドイツ語とロシア語、そしてこの世界でロロ語と呼ばれる未解読の言語が書かれていた。

 なお、フーヤもロロ語は読めるわけではなく、単純に形を記憶していたため試しに書いてみたのである。

 そして、フーヤがドイツ語とロシア語を書いておいたのは英語を覚えるのが苦手と言っていたカザヤが読めるはずがないと思ったからである。

 

「確かに、俺の知識では読めない文字もあるな。そもそも、神代文字は誤読が多いことでも有名だし、自信を持って読めないぞ」


 レクスルの言葉にうなずきつつ、フーヤは米神を抑える。


「予想以上にオーバースペックなんだけど、これはよくない。文字でこれってことは話す言葉でもこうだろうし」


「よくないって、何でだよ?別に色々な言語が読めたり話せたりするだけじゃないか?」


 カザヤがこぼした素直な疑問に答えることなく、フーヤはまた別の紙にさらさらと何か書き込む。


「これ、読める?」


「ええと、『8番街倉庫、子の刻、月光の元で待つ』って何これ?」


「嘘、暗号文書も言語扱い?」


 フーヤは米神を抑えてふらりと座る。


「頭、痛くなってきた」


「フーヤのここまで驚愕した顔は初めて見たな」


 レクスルは珍しいものを見たと言わんばかりに笑みを見せつつも元の場所へ座り、スープをすする。

 一方でカザヤは空の器を横に置き、少しそわそわした様子でフーヤに尋ねる。


「な、なあ、この能力の何がよくないんだよ」


「・・・どう説明すれば伝わるのか分からない。カザヤ、結構馬鹿っぽいし」


「俺も流石にここまで馬鹿にされたら怒るぞ。全く、人をどこまで馬鹿にすれば気がすむんだ?」


「・・・既に怒ってない?」


 フーヤが首をかしげると、カザヤは苛立たしげに足元の石を踏みつぶすようにする。


「さっさと説明してくれ」


「例え話として、例えば二人だけの間でしか使っていない秘密の言語があったとしよう。もし、それを部外者であるカザヤが喋ったらどうなると思う?」


 真顔で話を切り出すフーヤに少しばかり押され気味になりつつもカザヤは頭を回す。


「ええと、何で知ってるんだってなる・・・?」


「まあ、話した言語が別に学がある者なら知っているくらいの言語ならまだいい。でも、例え話のように知っている人が完全に限られているような言語だと何で知っているのかと問い詰められることになる。それが、裏社会の暗号とかだったら危険な橋を渡るどころの話じゃない。しかも、カザヤ本人はどの言語を喋っているか自覚ないみたいだし」


「・・・言われてみれば、全部普通に日本語に見えて違う言語かなんて分からなかったな」


「気づいてなかったんだ。まあ、馬鹿っぽいから仕方ないな」


「お前は一体全体どこまで俺を馬鹿にすれば気がすむんだよ」


「フーヤがここまで気に入るの珍しいな」


 レクスルのその言葉にカザヤの苛立たしげな表情が呆気にとられたものに変わる。


「え、気に入られてるの?」


「違う」


「でも、フーヤがそこまで人に興味を見せるというか、同じことを何度もするというのは珍しいだろ?なら、気に入ったのと同じじゃないか?」


 レクスルがにこやかにそう言うとフーヤは一瞬眉をピクリと動かしつつも、ぶぜんとした表情を見せる。


「・・・・・・違う、どちらかというと人をおちょくるのがこんなに楽しいことだと初めて知った」


「やっぱり完全に喧嘩売ってるだろ!表出ろ!」


「わざわざ移動するまでもなくここは外だし、今、食事中」


 フーヤは置きっぱなしになっていた器を持ち上げ、スープを飲み干す。


「いや、さっきまで完全に手を止めてただろ!今、取ってつけたように食べるの再開したじゃないか!」


「フーヤ、カザヤ、スープのおかわり要るか?要るならよそうが」


「要る」


「・・・・・・あーもういい!お前には何も期待しないからな!おかわりは俺も欲しい」


 雰囲気はこれ以上ないくらい悪いままであるが、フーヤもカザヤも食欲というものには敵わないらしく、レクスルがそれぞれ差し出された器にスープをよそうと二人とも大人しく食べ始めた。

 レクスルはその様子を見て、心の中で俺が仲裁しないと駄目そうだなと思い、これからのことを思い遣って小さくため息をついた。


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